41 メランコリーなマキシミリアン
私たちがカレーを食べ、恋ばなをして、ジュリアが白目を剥き、眠りについた頃の話。私たちは早寝なのだ。隊長、この回は頼んだ。
今日も城の一室では勇者様の召喚が行われていた。あ、きたきた。さてと槍の準備をしとこうか。はぁー。なるべく苦しまないようにするからな。おじさん頑張るよ。
「こ、ここは?この魔方陣は?異世界か!テンプレだな!よし、ならばステータスオープン!ふははは!勇者か!俺が勇者だ!」
召喚された直後に勇者語を叫ぶ青年。容姿がちょっとあれだ。へなちょこに似てる。ズルムケハゲ。その後、こっちの言葉で俺が勇者だの声に合わせるように、一斉に確認を始める魔方陣の中の異世界の者達。なんなのあんた達。ちょっとおじさん引いちゃうよ。
「あ、私も勇者だ」
「僕も…」
俺も私も僕もあたいも、あなたもわたしも皆が勇者だと口々に言う。何ですと?
「ふふふ、ははは?成功だ。やっと成功だ!」
いやいや、女勇者様が一人いるだろ?フルプレート着こんだ兵士を素手で殴ってたろ?お前垂れ流してたじゃん?そんな事を思っていたら、後ろに繋がれていた元異世界の勇者達、現性奴隷達が嘆いていた。
「なんで?私は奴隷ってなってるの…」
「私も奴隷だよ…」
なんだよこれ?この女達と魔方陣の上の奴等と何が違うってんだよ?まあ俺ごときが知ったところで変わらんか。偉い人がたぶん知ってるだろう。
説明しよう!ヒルデお姉さんの説明だよ!理由は鑑定の力、レベルが不足しているから。レベルが不足しているから一番上の部分しか見えない。例をあげると、ジュリアの称号。一番上はダンシングクイーンだ。その下はたくわん色のハーフエルフ。その下に金髪ハーフエルフの皮を被った変態。今鑑定をし、嘆いている奴隷達もその職業欄、奴隷の下が勇者となっている。この世界に召喚されるとすぐに勇者の称号がつくんだ。彼女等にはそれが見えなかった。これが悲劇かはわからない。おっと時間だ。お姉さんがここで解説したのはヒミツだよ?サラダバー!
「勇者達よ。今宵は宴を用意してある。存分に楽しむがよい。疲れているであろう。頼みたいことはあるが、今日はゆっくりと休んでくれ」
広間に移動したロビン王と召喚された勇者達。それに付き添う、俺たち近衛兵士や性奴隷達。豪華な料理がテーブルいっぱいに、ここにいる人数では食べきれないほど用意されていた。そして美男美女の執事とメイド。勇者達の好むであろう容姿の者が集められていた。この料理も美男美女もすべて勇者達に与えられた。
「よし、妹のカレンは隣国に嫁として送れ。邪魔物はこれで居なくなる。勇者達には悪い国の王に無理やり嫁として拐われたと言っておくか。ククククク!」
先を越された。と俺は思った。ロビンの対抗として担ぎ上げる準備を進め、計画をカレン姫に打ち明けようとした矢先だった。計画は練り直しだ。よしロビンの従兄弟のあの方に話そう。侯爵?公爵?どっちか忘れた。俺の嫁とロビンの従兄弟のイケメンの嫁は戦友だから話つけやすいだろう。
この国もそうだけど、この世界の国の爵位はわりと適当だ。偉さには順番あるけど。何故なら過去の勇者様が(適当に)着けたから。勇者様の知識で改変されたから。学校の教科書にも載ってる。
へなちょこは今回の勇者様の召喚が成功だと言った。俺から見れば屑勇者の集まりに見える。ちょろいもん。豪華な料理と魅力的な異性、厚待遇で丸め込まれたからだ。今回の召喚多いな。勇者様は男が5人、女が8人か。屑だが勇者様だ。明日の午前中、勇者様対要注意死刑囚のデスマッチが開催される運びとなった。国の武器庫から勇者様に合う武器を渡していた。何させるんだよ?こいつら勇者様だけどトーシロだぜ?
デスマッチに備えて、近衛隊が訓練することになった。何故近衛隊にやらせる?騎士達にってあいつらへなちょこの息のかかった連中だったな。戦いもしたことのないお飾り。お金で騎士を買ったばかども。普通は近衛がお飾りだろうに。ほんと、ため息と屁しかでねぇや。
「俺たちに訓練など不要だ!なんてったてチート。それは転移者のテンプレ!」
確かにトーシロが剣を持ったにしてはやるとは思うよ?でもそれくらいなら俺でも防げる。うちのカミさんなら、こいつらまとめてかかっても防ぎきると思う。
「だからこんな武器ではなく、最強のモノをよこせ?」
何か夢見てるのかな。そんなのねぇよ。例えドワーフが打ったミスリルの剣であろうと、刃渡り以上のモノなんて切断できる訳ねーだろ。弓にしたって岩をも貫通するなんてあり得ねぇからな?そんなの見たことも聞いたことも…おとぎ話のなかでならあるか。勇者様のお供のエルダードワーフが作る武具のお話があったな。おとぎ話だから存在してねぇよ?だれだ!フラグなどと言うやつは。
この国というか、周辺諸国において、最強の武器としてあげられるものは、ミスリルの武具だ。人間にはミスリルを扱うことのできる鍛治師がいない。近くのイモ村にドワーフはいるが、訪ねていっても相手にして貰えないだろう。鋼の剣で鍛造されたもの。これが、金積めば手に入る最強の武器だろう。鋳造の型抜きの剣を使ってる俺が言うのもあれだけどな。
そうそう鋳造の剣と言えば、過去の勇者様が鉄をドロドロに溶かす技術があるのはおかしいとか、西洋(西洋が何かはいまだに不明)の剣は型に入れて作らないとか、そんなのすがはいって実用に耐えないとか、グダグダ言った記録があったな。目の前で鉄を溶かして型抜いた剣を作って見せてもギャーギャー言ってたってなってたな。
これを聞いた同級生のドワーフは、ドロドロの方が色々混ぜ込めるじゃんって。錬金術師達の作った素材をそこに溶け込ませるのは溶けてる方が楽だってさ。知識だけを詰め込み頭でっかちになってるって、同級生は怒ってた。あいつ元気に鍛治してるかな。
俺、この剣で鋳造剣は三本目だけど、とりあえず戦闘は何とかなったな。ちなみにこの剣は戦の最後の方で拾った。近衛隊の支給剣なんて竹光だぜ?まぁ、この剣もなんの変哲もない剣だけどな。
世の中には斬ると燃える剣とか斬ると同時に毒を与える剣とか、斬れば斬るほど耐久力が回復する剣なんかもあるらしいぞ。剣にそういう属性を与える呪い師がいるんだってさ。耐久力が回復する剣か、やだな。剣が折れたから後退しますができねぇじゃん。
俺は近衛隊 隊長 マキシミリアン。世界一いい女をカミさんに持つ男。部下というか、カミさんの元同僚の残された英雄、問題児二人が近衛隊を辞めたがってるのが目下の悩みだ。俺が辞めたいよ…とほほ。




