36 ダンスダンスダンス
エレナさんが転げ落ちたのを見て、特設ステージに近寄る。少し高くなってるから大丈夫かな?
「エレナさん大丈夫?」
メアリーとキョーコと私でそっと近づいて、飲み物を渡す。エレナさん汗びっしょりだ。
「はぁ、はぁ、ありがとう。カッコ悪いところ見せてしまいましたね?まさかここまでのレベルのダンスとは思いませんでした」
息を荒げたエレナさんが色っぽい。所でメアリー?なぜ赤面しないの?色っぽいのに。
「私も学生の頃には地元でダンシングクイーンの名を欲しいままにしてたけど、上には上がいるのね。ふふ、ギルドのランキングのエリみたいにね。このダンスフロアではジュリア以下になってるけどね?ふふ?明日から特訓よ!」
ステージで踊る三人は、現在の曲調に合わせてスローなリズムで妖艶に踊る。そして上がり始めるリズム、刻むステップ。熱狂のオーディエンスに答えるよう白熱するダンスバトル。決着は明け方かな。
「エレナさん、私達帰りますね?」
「はぁ、はぁ、えぇ、お疲れ様、嘗めてたわ。侮れないな。イモ村!ふふふ楽しくなってきた!まだまだいくよ!」
光の明滅とビートに合わせ踊りながらステージになだれ込むエレナさん。歓声をあげるオーディエンスに答えるように激しいステップでキレッキレに踊る。白熱のダンスバトルには付き合いきれないから家へ帰ろう。
「キョーコはお爺さんの所に泊まる?」
「うーん、お義父様の所は泊まれる状態ではなかったからマチルダの所に泊めて?」
「了解。メアリーはギルドで横たわるオークと添い寝だっけ?」
「やめて?マチルダのベッドでマチルダに添い寝するよ?」
右手の梨は捨ててこようか。身の危険を感じるからさ。おい、顔を赤らめるんじゃない。笑ってないで助けてキョーコ?
実家に帰って来た。久しぶりの実家。
「ただいま?友達を連れてきたよ?」
「あらマチルダじゃない。あらあらいらっしゃい。ゆっくりしていってね?」
「お邪魔します。マチルダの友達のメアリーです」
「お邪魔します。同じくキョーコです」
「どうもご丁寧に。マチルダのお母さんです。よろしくね?」
「本当はもう一人連れてきたんだけど、ダンスバトルしてるから明日から泊まるからね。それと台所借りるね?」
私の部屋はあの時とは違って、ベッドが4つ並んでいた。どうして見抜かれた?友達三人連れてくることを。
「隣のおじさんと鍛冶のお爺さんから聞いてます。台所は勝手に使っていいよ?」
門番のおじさんと鍛冶のお爺さんか。皆で挨拶したからな。そうだ、ここにも挨拶しておかなきゃね。
「お父さんただいま。御先祖様帰った来ました」
仏壇に手を合わせた。二人も合わせてくれている。この村は勇者様の意向によって仏教が信仰されている。だからお盆があるんだよ。その時、突然肩を捕まれた。
「待て、俺は死んでないぞ?お父さんにも友達を紹介してよ?マチルダの父、レイモンドだよ?仲良くしてね?えへへ?お姉さんいくつ?」
「友達のメアリーとキョーコだよ?若い娘に鼻の下伸ばしてると殺されるよ?」
「メアリーです」
「キョーコです」
「マチルダのお母さんです。貴方ちょっと裏行こうか?」
二人は美人だからしょうがないけどね?裏に連れていかれた父が殴られる音が聞こえる。安らかに眠れ。
メアリーとキョーコを連れて台所へ。夕飯作ろう。と思ったら作ってある。添えられてる手紙をみると、母からだった。
"マチルダおかえりなさい。友達もようこそ。イモ村の田舎料理だけど、良かったら食べてね? マチルダのお母さん "
そこには肉じゃがとコロッケがあった。久しぶりだな。お母さんの料理。
「食べよっか?」
「うん!いただきます!」
「うわぁコロッケだ!肉じゃがだ!いただきます!」
染み込んだ肉じゃがが美味しい。メアリーもキョーコも夢中だ。コロッケもさくっとしてる。懐かしさが溢れる味だった。
外からはダンスミュージックが聞こえている。あと、父のうめき声。さらに殴られる音が響く。父よ震えて眠れ。
その日はベッドをくっつけて眠った。
勇者様何で死んじゃうの?私の問いかけに勇者様は答えてくれない。返事がない。ただのしかばねのようだ。いやぁぁぁぁ!と悲鳴をあげると勇者様の死体がモンスターへと変わった。しまった!罠だ!く、捕まってしまった。もはやこれまでか…くっこ…?
その刹那、光が走る。本物の勇者様だ。モンスターをやっつけてくれた。私の貞操は守られた。私の手を取った勇者様がその唇を手の甲に近づけて行ったところで、手錠がはめられた。その勇者様は屑の勇者様だった。ヒィィィ!?
さらわれそうな所に新たな勇者様が、あれ?これ無限にループしない?と思ったらキョーコが来てくれて、ミスリルの剣が、ミスリルの弓が、ミスリルの鎖鎌が、屑の勇者達を屠る。振りかえるとお供のメアリーとジュリアがいる。私もついてかなきゃ?白馬の王子サマを探す旅にでた。
三本立ての夢が始まっていた。




