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33 毎月恒例のイベント

 メアリーとキョーコを連れてギルドを出た。そのまま噴水を左に回って商店通りへ。さすがに王の都の商店街と比べると店数は少ない。魔道具屋はないしね。朝市はあったかな?私が知ってるのだと、イモが売ってて、ドワーフの駆け出し職人が自分の作ったものを売ってた。村の中はだんだんと祭りの気配が感じられ始めた。


「マチルダ、お腹すいた」


「私も空いてきたかな?そういえばお昼食べてなかったね?」


「メアリー、キョーコ、ドワーフのお爺さんの所で何かもらおうか。昔は焼き芋とかあったから多分大丈夫だよ?」


 最悪、キョーコのインベントリからパンを出してくれることになった。今回は玉子とマヨネーズを混ぜたものを挟んでくれるって。


 ドワーフのお爺さんのお店にきた。相変わらず武器が色々とおいてある。今の私の目から見ると異常。店先の壷に鋼の剣が入れられて叩き売りされている。私の中の価値観が壊れていく。あぁ、店の中だけど無造作にミスリルの剣が転がっている…あぁミスリルの全身鎧だよ。埃被ってるけど…。籠手かたっぽどこ行ったの?私が投げてる記憶は違っていて欲しいなー?


「マチルダ…私の中の価値観が壊れていくよ?」


「だよね?メアリー。私、ここであれ投げて遊んだ記憶があるよ…まさかミスリルだったのか…」


 ここに置いてある、ぞんざいに扱っていた物がとんでもないものだった。


「誰だ?ん?おー、マーちゃんか。色っぽくなったな。隣の嬢ちゃん達ははじめてだな?なんだ?黒髪の方は勇者様か…」


「うん、お爺さん久しぶり。えへへ?ありがとう。武器見せてね?そうそう友達連れてきたんだけど、何でキョーコが勇者様ってわかったの?」


 ドワーフのお爺さんにキョーコが勇者ってばれてる。何か違うのかな。キョーコもちょっと身構えた。


「たまに勇者様がくるんだが、雰囲気で勇者様とわかるようになったな。屑が多くてな、いやここに武器目当てで来るのは屑だけだな。だから警戒することにしてる。黒髪の嬢ちゃんは違いそうだがね?その剣は組合の売店にあった奴だろ?よく見つけたな。勇者様初の合格だ!そっちの小さな嬢ちゃんもな。そのじょうごを手にするとはな。それワシが作った水攻め用のじょうごだ。合格だ。マーちゃん、友達を誇って良いぞ?」


 ドワーフのお爺さんの話を聞くと、この村には勇者様が来ていた。村の記録に残っていないのは、お爺さんが半殺しで村の死体置き場に捨ててきたからだ。屑の言葉から想像する。おそらく、俺に一番の武具をよこせって言ったのかな。


「そうだ。そんなやつは鉄拳制裁だな、最近だと三年くらい前に来たぞ?召喚されたのは気の毒だが、魔王いないんだから自分で探せよって思う。ワシが仕えてるわけでもない屑にくれてやる義理もない。武器につながるヒントは隠してあるんだから。そこの嬢ちゃん達は探し当てた」


 ドワーフのお爺さんがここへ連れてこられてから、250年間に勇者様は来ていなかったわけではなかった。10年に一度ほど来てたらしい。しかも屑ばかり。真面目なキョーコみたいな勇者様は素直だから、王の都を出たら大きな街へ行く。王の都とか大きな街の次にここに一人でたどり着けるのはひねくれ者を通り越した奴だ。今わかった。そりゃ記録には残せないね。


「村の皆で半殺しにして、死体置き場に捨てても勇者様ってば頑丈だから、なかなか死なないんじゃよ。9割以上は生きとるな。生き残った勇者様が山賊団とか海賊団を率いて村に襲撃かけるんだ。勇者様が死ぬまでな」


 村の襲撃イベントが毎月恒例なの、この人達のおかげだった。お祭り楽しかったから、素敵な思いでだけど。綺麗に飾られた苦悶の表情の首。一番多いときは噴水の外周に隙間なく首が並んだな。


「マチルダ…イモ村って…修羅の国なの?」


「そ、そうすると、私一人で見に来てたら半殺し?」


「メアリー?普通の村だよ?私は修羅じゃないでしょ?キョーコなら多分一人できても大丈夫だよ?いきなり最強の武具をよこせなんて言わないでしょ?」


 ふたりとも頷く。


「改めまして、おじいちゃん、私はメアリーです。よろしく」


「この間召喚されたキョーコです。よろしくお願いいたします」


「よく来たな。ドワーフの鍛冶屋ジオウだ。まぁ爺さんでいい。ゆっくり見てくといい。お前ら腹減ってないか?ワシも今から昼飯だからイモでよければ蒸かすぞ?」


「わーい!おじいちゃん、ありがとう!店のモノ見せてね!」


「お爺様、手伝います。私のインベントリの中のも使いますよ?」


 メアリーはお店の中のものを見始めた。キョーコはお爺さんと台所へ向かった。私はメアリーと見てようかな?昔と今だと見方が変わった。


「キョーコ、これなに?」


「それはチャクラムだね。投げるんだよ?こうやってね?」


 人差し指にチャクラムの輪っかをかけて、くるんと回してとばす。カツンと音をたて的に当てた。


「これ、いいね?へー、ほー、なるほどねぇ!こっちは?」


「ウルミだったかな?これは私使えないよ?自分を削ぐから、前にやった」


「へー。面白そうね?えい。ギャァァァ!!肉が肉がぁぁぁ」


 ウルミは幾枚もの薄い刃がうねうねとしなる特殊な武器だ。メアリーはウルミを装備した手の肉が削れていた。何本かの刃が的を削ってた。私も手の肉が削げたよ?


「ヒール!」


 キョーコがお皿を手に戻ってきて、ヒールをかけてくれた。削れた肉がもりもりと戻る。


「ほう、それをはじめてで削ぐまで使えるのか。よし、メアリー嬢ちゃんには何でも売ってやる。もちろんキョーコもだ。マーちゃんは既に何でも買えるからな?ガハハ!旨い。ロビンからの書状などこうだ。ガハハハハ?」


 ドワーフのお爺さんはツナマヨを挟んだコッペパンをもりもりと食べながら笑っていた。ポイっと捨てられた書状には王家の紋章が封蝋に押されているのが見えた。あ、踏みつけた。


「お爺さん、それ見てもいい?」


「あぁ良いぞ?それよりこのじゃがバター食べなさい。旨いぞ?キョーコが作ってくれたからな。ツナマヨマジ旨い。ガハハハハ」


 書状にはお前の作る武具はすべて王家に、というか俺様によこせって書いてあった。文そのまま引用。鉄拳制裁案件だった。バカじゃない?いや、バカだ。そしてウンコ漏らしのへなちょこロビンだ。


 メアリーがもりもりとじゃがバター食べ始めた。なくなる前に私も食べよう。




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