32 それは祭りの合図
お花摘みにいったはずの三人は手ぶらで帰って来た。あれ?お花はどこなの?
「抜けてしまってすみませんでした。え?お花?えーと、その…あ、確かにギルドに大量の花が集まりはじめてましたね?何ですかあれ?イザベラさんはわかりますか?」
「エレナさん、今日はお祭りなんですよ?この後、この首を噴水に並べてお花で飾るんです。12首越えたら祭りの合図、これが村の掟です。だから査定を早くしてください!」
イーちゃんが祭りの概要を話し始めた。この祭りは、首供養のために始められた。年に数回、いや、毎月行われるのはざらにあったけど、最近は減った。数年ぶりとのこと。特設ステージでは、ダンシングクイーン決定戦も行われる。供養の舞だ。クイーンになり続けたイーちゃんは永世名人だ。ジュリアとキョーコはなんだか疲れてない?エレナさんは頭を抱えてしゃがみこんだ。スカートだから気をつけてね?パンちら狙われちゃう。ほら白く輝くものが見えてる。イカ臭い奴等がくるよ。
「え?え!?素敵なお祭りだね…?ところでこの村はすごいよ。売店にね?素敵な拷問器具がたくさん!アイアンヴァージンはじめてみたよ!」
「そうそう、武器も見てたんだけど、壷に剣がたくさん入れてあって、鑑定したら鍛造の鋼の剣だよ?そんなのが壷に無造作にお土産屋の木刀感覚だよ?一本メアリーに買って貰っちゃった!鑑定しまくったら1本すごいのあったんですよ?えへへ?」
メアリーは綺麗な装飾の水攻め用なのかな?じょうごと、凝った装飾の爪を剥ぐペンチみたいな道具を握って興奮していた。アイアンヴァージンね。使った所も見たな。なかなか口を割らない山賊が入ったっけ。鍛造の鋼の武器か、確かにすごいね。あれ?記憶だと見習いドワーフが大量に作ってたな?うん。記憶違いだよね?兵士の時に鍛造は高いって煤だらけのミリーが言ってた。ミリーの盾が鍛造だった。鋳造だとどうだったのかはわからないけど、鍛造だからって気持ちがあるからずっと盾を構え続けることができたのかもしれない。
「あれも本当はガラスケースに入れて綺麗に並べたいんですけど、ドワーフの親方があの並べ方しか認めてくれないんですよ。最初は売ってもくれません出したね。私赴任してから何度も何度も訪問して、3年ほど前にやっとです。他の街なら鍵付きのショーケース入ってますよ?不幸中の幸いというか皆さん、あの置き方見て”大したことない剣”ってとらえていて盗難はありませんね。えーと、先に盗賊と山賊査定しておきますね。討伐料はどうしますか?」
「チームの口座に入れてください。カード渡せば大丈夫ですか?」
「はい。それではお預かりしますね。では始めます」
エレナさんは首をみたり、体があるやつは身体的特徴も見たりして、手元の資料をみながら何かを書き出していた。
「盗賊等の査定が終わりました。手配書のある首は2つです。山賊の頭の物と、盗賊の頭ですね。それぞれ15万ギルでした。残りはまとめて10万ギルとなります。合計40万ギルになります。振り込んでおきます所持品についてはオークやゴブリンの物と混じってましたのでまとめて後になります。ご了承ください」
「エレナさん、今日は私は上がりだから首は持っていっても良いですか?」
「はい。大丈夫ですよ?そのような祭りがあるの知らなかったですし。このまま処分される所でしたよ。私がここに配属されてからは盗賊等って初かしら?」
エレナさんの許可が降りたので、イーちゃんと私は首を刈りはじめた。エレナさんが、あぁ…もうって顔を手で覆った。
エレナさんが祭り未経験なのは、盗賊等持ってこられたのが12首未満だったんだろう。昔なら11首では逆に怒られるよ。ドワーフ仕込みの豊富な拷問器具で死には至らない気分を味わうことになるんだ。くっころが、お願いします殺してください。お世話になりました。逝ってきます。にもなるよ。
「そうですよ。祭りは8年ぶりですね。小さい頃は月一でしたけど。襲撃が頻繁にありましたから。ね?マーちゃん?」
「そうだよね。毎月お祭りだったね。最近は襲撃無いんだ?」
「そんな頻繁に襲撃なんてあってたまりますか!」
エレナさんが怒った。エレナさんはこの村に赴任して6年とのこと。王の都で研修して直ぐに来たんだって。王の都~大きな街~イモ村の安全優先ルートを使って。約5日掛かる。都から街までが3~4日だ。大きな街からイモ村は例の鉄の箱に乗ったんだって。
エレナさんに怒られることが癖になりそうな自分が怖い。そうね、王の都も襲撃なんてなかったし、近衛隊のみんなからも襲撃イベントは聞いたことないし、ちらっと私が月一襲撃イベントを話したらなにそれ?どこの修羅の国の話?って顔された。
「ちょ、マチルダ…お前、あれ本当の話だったのかよ…少し早めのエイプリルフールだとばかり…」
メアリーが思い出したように戸惑っていた。確かに3月の末に言ったけれども。うちの村はお盆は新暦だけど、エイプリルフールは旧暦なんだよね。ごめんよ、ややこしくて。暦は勇者様が制定した。詳しいことは知らない。生まれたときにはこうだったから。
「それでは引き続き査定をしていきますね?ポーションはどうされます?」
「持ってきたのは全部売ります。エレナさん、お願いしますね?」
「かしこまりました。それではポーションは価格表の通りになります。ゴブリン、オーク、盗賊等の持ち物、ウルフの毛皮と牙、オーク本体、ゴブリンの魔石の査定をしますね?量がありますので、二時間ほどお時間をいただきます」
「エレナ、手伝うよ?オークは解体もお願いね?お肉はちょっと引き取りたいかな?」
「ありがとう、ジュリア。お言葉に甘えるね?お肉了解だよ。美味しいもんね」
エレナさんからしばらく自由にしててって言われた。なにする?
「マチルダ、ドワーフの武器屋さん連れてって?」
キョーコはドワーフのお爺さんのやってる武器屋を見たいのか。
「私もいくよ?何を見てもめずらしいよ。流石異世界!ふふ?まだ異世界きて一週間たってないんだよね!」
キョーコはどこでも良さそう。この世界を楽しむ勇者様で良かった。ん?キョーコの持ってる剣は鉄じゃないよね?それ鋼?違うよね?色が違うよ。でもあえての汚し加工してない?
「そうなの。ミスリルなのよ。汚れてるけどお買い得だよ!」
樽に入れられて売られていたという剣はまさかのミスリルだった。だけど、この剣の感じは、確かお父さんも使ってたような?お母さんも使ってたな。うちの包丁もこんなだったような?というか村の人はわりと普通に使ってたような?記憶違いだと思いたい。首はイーちゃんが全部運んでくれた。12首揃ったことを村中に告げて。




