29 妄想と実話に震える
メアリーは学校に入学する前に虐められていたって言ってた。
~でも、それを庇ってくれる幼馴染みの男の子が居た。その男の子はイケメンだから、メアリーはいじめっ子グループからよりひどい虐めにあう。それでも幼馴染みの男の子が庇ってくれるからメアリーは幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。男の子の親は商人で、お父さんの手伝いをするために王の都まで家族で買い出しに出る。メアリーの村は王の都から1日の距離だから、すぐ戻ってくるから心配するなって男の子と別れた。馬車に揺られる男の子を見送った。それが今生の別れになるとは知らず。
今日の虐めを堪えれば、またあの人に会える。そう思ってその日は堪え忍んだ。明くる日、今日はあの人が帰ってくる。また幸せな日々を過ごせるんだ。と思っている矢先に、訃報が飛び込んでくる。あの商人の一家が惨殺されて発見されたと。金品や仕入れた荷物は軒並みなくなっていた事から、盗賊の犯行と見られた。事件は犯人が捕まることなく、風化していった。そしてメアリーは、事件から、いじめから、逃げるように王の都の学校に入学した。卒業して兵士になった。何年経っても盗賊が憎くてたまらない。そうだ盗賊は根絶やしにしよう。彼女はそう心に誓うのだった。~
「学校に入学する前に、こんな感じのエピソードがあるんでしょ?メアリーエピソードゼロ的な?」
「違うわ!?よくそんな話をでっち上げられるな!?でも凄いな。マチルダの妄想は。才能だね。私は単純に盗賊の類が嫌いなの。私達はほら、殺される覚悟もしたでしょ?あいつらは金を奪う為に命を奪う、命乞いする人の命も奪うのに、奪われる覚悟をしないじゃん。気に入らないんだよ。あと臭いし、汚いし。あ、幼馴染みの男はいたな」
私たちは兵士だから、戦に行けば、敵兵を殺す。その逆もある。殺す覚悟も殺される覚悟もして戦場に立っていた。もちろん簡単に死のうとは思わないから、もがき続けた。だからいざ、自分が殺される側にきたときになんの工夫も小細工もなし、潔くもなく、命乞いで助かると思っている事が気に入らないらしい。わかる気がする。
それとメアリーには幼馴染みの男の子はいるけど、イケメンでもなかったし、なんなら虐めに加わってたそうだ。その子は15歳になる前、戦で村が消滅する前には王の都にすんでいて、レストランで働きながらお金を貯めて、20歳で自分の店をオープン、シェフとしてオーナーとして店を経営してたそうだ。オープンした頃に一回行って一番高い料理のコースを奢らせた上に、虫が入ってるって出てきたんだって。そしてあの店は虫が入った料理を平気で出すって保健所に連絡したそうな。経営してたってなぜ過去形なのかな?ちなみに保健所は勇者様が作った。衛生管理大切。
「風の噂だと潰れたそうね…頻繁にゴキブリなんて料理に入ってたら潰れるわね…今では借金で奴隷になったそうよ?鉱山で毎日遅くまで働いてるのはこの目で確認したわ。近衛の隊長に無理言って警備兵として見てきたから。うふふふふ」
ニヤリと笑ったメアリーが怖い。ここ数年の話かよ。逃げて、行方不明になってるいじめっ子だった女の子グループ。生きてたら逃げて!
「ま、ぼちぼちやりますよ?ふふふ…居場所…実は突き止めてたんだよね?」
ど、土下座して?地面に額をゴリゴリ擦り付けながら土下座して謝って?血の涙を流しながら謝ろう?一緒に謝ってあげるからさ!?
「うふふふ!さ、行こうか!」
「メアリー?私が何かしてたら謝るよ。やってたら許してとは言えないけど、ごめんね?」
「ん?そこはお互い様だよ?私も楽しんで、色々とやってるからさ?私達は親友だよ?戦友でもあるし、学友でもあるでしょ?だから、仲良くけんかしようよ!」
私の妄想話とメアリーの実話を聞いてた二人は穴に入れた首のない死体を魔法で焼きながらドン引きだ。さ、村はすぐそこだよ?穴を埋めたら出発だ!
うめき声が聞こえなくなる頃、村の入り口に到着。入り口の門番は近所のおじさんかな?
「こんにちは。おじさん、お久しぶりです。マチルダです。友達を連れて帰ってきたよ?」
「ん?おお、マーちゃんか!?大きくなったな。えーと7年ぶりいや、8年ぶりか。たしか学校を卒業する前に一度帰ってきたっきりだったな?で、それはいいんだけど、馬車に繋げてるそれ、なんだい?」
おじさんはボロボロになった元盗賊を指差して質問してきた。ごめんよ?臭いよね?
「これ?帰ってくる途中で盗賊に襲われたから教育してあげたの。来世に向けてのね?」
「そうだね。あいつら既に勝ったつもりでいたからね。こんにちは。マチルダの親友のメアリーです」
メアリーが御者席に出てきた。ニコって笑う仕草が可愛らしい。
「ほう。そうか、そうか。ならギルドに出しに行かないとなぁ。マーちゃん、ギルドの位置わかるか?ほら中央の噴水の側にあるから行けば分かると思うよ?」
「こんにちは。はじめまして。私はキョーコ。マチルダの友達です」
「私はジュリアです。おじさま、よろしくね?あ、私もマチルダの友達です。忘れてた、てへ?」
キョーコは美しく礼儀正しく、ジュリアはあざとく挨拶をしていた。てへ?で自分の頭にげんこつする仕草して舌をチョロッと出してたよ。
「じゃあ、ギルドに向かうね。ありがとう、おじさん!」
「ああ、気をつけてな。ゆっくりしてけよ?…あれがあざとい…か…確かにあざといな」
おじさんの言葉は後の方が聞こえなかったけど、あざといって聞こえた。なんだろう。ジュリアの仕草を見てたからしょうがないか。
村の中央にはドワーフが拵えた噴水がある。もう技術の限りを投入して作ったそうだ。王の都にもこんなのない。噴水の外周はラウンドアバウトになっていて左回りの一方通行。村の入り口から真っ直ぐ進むと突き当たる。ちょうど向かい側にギルドのクロスした剣と天秤のマークが見える。冒険者と商人の組合のマークを合体させたマークだ。
突き当たった噴水の外周を左に曲がって進むとギルドの前に誘導路があり、そこに入って行く。ギルドの職員に誘導されて駐車スペースに停める。
「こんにちは。今日はどのようなご用件で?あれ?マーちゃん?」
「あぁ!イーちゃんかぁ!ソバカスのイーちゃんがさらに美人になってたからわからなかったよ!そうそう、今日は買取をお願いしに来たんだよ?」
イーちゃんはイザベラ。私の幼馴染みで、私より2つ上の女性だ。子供の頃はソバカスの女の子だったな。でも人気だった。美人さんだもんね。
「うふふ?勇者様が作った化粧品と化粧水で私は変わったんだよ?マーちゃんは相変わらず綺麗だよね?お連れもみんな綺麗だったり可愛かったりで凄いなー。買取なら馬車をあそこの建物に着けて?荷物を入れる建物はあそこなの。でもまずはこっちの建物で受付してね?それじゃ仕事に戻るね!」
私が馬車を駐車スペースから指示された建物の側の駐車スペースにつけて、職員さんに荷物の個数を確認してもらう。預り証に幌馬車、ポーション10ケース、元盗賊4体(損傷大)と書いてくれた。しっかりしてるね。
みんなの所に向かう途中、ジュリアが掲示板の前で崩れ落ちるのが見えた。近くによると掲示板にあのランキング表が張り出されていたからだった。ドンマイジュリア。




