27 熱演のアクトレス
ジュリアの指導はこうだった、まずは横座り、ぺたんとする方じゃないお姉さん座りだ。お姉さん座りという呼び方は勇者様が伝えた。ぺたんとする方と横座りで、どちらをお姉さん座り、女の子座りとするかは、いまだに議論が別れる。その当時の勇者様ははっきりとこれと言わなかったから決着はつかないだろう。ここでは横座りをお姉さん座りとする。
そのお姉さん座りから足がないほうの地面に、地面に近い方の手で肘をつく。そして反対の手で胸を持ち上げる。こうすることでより強調されるんだって。研究してるなぁって思うけど、どこで役に立つの?だからあざといって言われるんじゃ?
キョーコはそれに付け加えて、肘をついた方の手の指を口に持っていって、怯えたように、上目遣いで台詞をいうことって指導が入った。私もやるか。
「や、やめて?それ以上近寄らないで!その反り返ったモノで、わ、私の事をどうするつもり?いや、助けて?イヤァァァァ!!」
近くにいるメアリーも…く、やるなお前って顔でちらっと見てくれた。恥ずかしい。
メアリーと私が台詞を言った後、ちょっと間があった。気配は多数ある。あれ?失敗したかな?普通の乳じゃ巨乳至上主義は騙せないか?と心配すると、勢いよくオークが落ち始めた。鈍い音が聞こえるから、たぶんどこか折れたかな?
次々と穴に落ちるオーク。あたりに気配が少なくなる。動かないから罠にかかった奴かな?だんだんと空が明るくなり始めた。あれくっころツアーとあんまり変わらなくない?いや、命と貞操を守るために必要だよ。自分に言い聞かせた。
一通りオークを見て回る。弓ゾーンにいたオークは両脛か両膝を粉砕されていた。残念ながらクロスボウは不発。かからなかった。回収回収。オークを見て回ったが、これなら動けないだろう。後回しでもいいね。落とし穴をみる。阿鼻叫喚だった。はじめの方に落ちた奴は、仲間によって踏み殺されていた。ラストに落ちたオークも足が変な方向いてた。ツルツルの壁面には血の跡がついていた。上がれないよね。これも後回しでもいいね。メアリーと二人でテントに戻る。
テントの中ではジュリアとキョーコが寝ていた。私達も倒れるように布団に入った。数時間寝られるだろう。夢の続きが見られると素敵だな。ふごー。
私はお姉さん座りで助けを乞うが、オークはそれを無視してやってくる。あぁ、ここでくっころ言わなきゃ?と思っていたら白馬に乗った勇者様が登場。さくっとオークをやっつけてくれた。うきゃあー勇者様ー!!白馬から降りた勇者様が近づくのが見えた。あぁ、今度こそ。今度こそ!と思っていると勇者様は穴に落ちて糞尿を漏らしながら苦悶の表情で息絶えた。ああああ!?
「マチルダ、メアリー、朝ごはんできたよー?」
ジュリアの声で起きた。あぁ私のせいで勇者様が死んじゃった。なんで穴に落ちるの勇者様。なんで穴空いてたの?
「おはよう。マチルダ?なんで泣いてるの?」
「ぐすん。メアリー、私のせいで白馬に乗った勇者様が穴に落ちて死んじゃったの…ううう…あれ?」
今度はもう少し早く起こしてほしかったかもしれない。あのイケメン勇者様があんな無惨な死に方をしなくてもよかったのに。
テントから出ると、キョーコがパンの背中を切って具を摘めていた。今日はパンか。ジュリアがコーヒーを淹れてくれている。
「ごめんよー?寝坊したから簡単なので許して?はい、これ。朝市で買ったコッペパンに具を挟んだからね?」
キョーコは具を摘めながら謝ってきた。寝坊位するよ?だって明け方までオークの相手してたんだもん。キョーコからパンを受けとる。コッペパンもたしか勇者様の発明品だったかな?たしか教科書に記述があった。それまでは固いパンが主流だったのが急速に柔らかいパンに変わった。その柔らかいパンの中にコッペパンがある。固いパンの黒パンとかバゲットとかも、今でも残ってるけどね。
「うわぁ、美味しいよ。これツナマヨだ!コーヒーにあうね!」
メアリーはお気に入りの甘いミルク入りのコーヒーを飲みながらパンを食べていた。今日は眠いからなのか立ち上がらなかった。よしよし。良い娘だね。何時もそうだともてるよ?私もひとくち。キョーコはツナマヨをたくさん作ってインベントリにしまってあるんだって。
「美味しい…柔らかいシンプルなパンにツナマヨのコクがイイね。ブラックコーヒーにもあうよ!」
ジュリアのコーヒーも美味しかったよ?ギルドにコーヒーの入れ方にうるさいマッチョがいるんだって。蒸らし方間違えるとため息つかれるんだって。それ答え言ってるよね。ギルドマスターだよね?
キョーコが食器類を片付け、私とメアリーでテントを畳む。ジュリアはたき火の始末をしてくれた。さぁ、オークを見に行こう。
まずは弓ゾーンのオークだ。ここには両膝か両脛を破壊されたオークが転がっている。サクサクと首を切る。そしてマジックバッグへ回収。全部で5体のオーク。次は落とし穴だ。こっちの方が多そうだ。
まずは、最初の穴。ここは、メアリーの居た穴の外側の穴だ。ここには3体のオークがみえる。2体は事切れている。ジュリアが頭に一発、矢をあてて命を奪った。メアリーが穴に降りて念のため首を跳ねてくれた。メアリーのマジックバッグに回収してもらい、メアリーを引き上げた。
次はメアリーが居た穴だ。さっきより多いな。5体のオークが苦悶の表情で死んでいた。どのオークも首が面白い角度になっていた。落ち方が不味かったか、先に落ちたオークが暴れて蹴られたりとかしたのかな。ここもメアリーに回収してもらった。
次は私が居た穴だ。ここは6体のオークがいる。全部生きていた。どのオークも足が変な方向を向いている。もがいている。キョーコが槍を投げて2体、メイスを落として2体仕留めた。残りの1体はジュリアの矢が眉間に命中。私が降りて回収している間に、隣の穴の2体をジュリアが仕留めてくれた。キョーコの槍とメイスもマジックバッグになんとか回収した。メイスは苦労した。上から被せるようにして回収できた。隣のはメアリーが回収してくれたようだ。下ろされたロープを昇る。
キャンプしたあとは、来たときよりも美しくの精神で片付け。魔法で穴を埋めて貰い、尖らせた木を装着したトラップを解体、回収。このキャンプ場に私達が残したものは足跡とオークの血でできた染み、あとは思い出だけだ。




