24 夜食の甘い誘惑
緩やかなくだりの山道を馬車が行く。運が良かったのかオークには遭遇せず、そのまま王の都とは反対側の麓のキャンプ場に着いた。まだ日は高い。
ジュリアがたき火をおこしてくれたので、私とメアリーでテントを張った。テントを張り終えたメアリーが穴を堀始めた。その穴に私が細工してガバガバのゆるゆるになった苦悩の梨を埋めた。手を合わせている。
「私が少し無理をさせたせいで、梨さんは死んでしまった…ねえ?マチルダの村には鍛冶屋さんある?」
セーフ。ばれてない。でも罪悪感が。
「うん。あるよ?ドワーフがやってるお店だね。私が行けば売ってくれると思うよ?」
「そっか…」
「ごめんなさい…メアリーの梨をガバガバのゆるゆるにしたのは私なの…」
「え?あの梨はオークに突き刺したからだよ?下りの途中で出てきたの。流石にオーク用に作ってないからネジがバカになってたんだよ?マチルダが細工できるほど柔じゃないよ?」
メアリーはこっそりオークで試したそうな。馬を誘導するふりして下車して試してたのかな?
「頭に突き刺して拡げたから、元々の使い方とも違うからね?あとオークも回収したよ。村で売るからね?」
そりゃ壊れるわな。
「こっちこそ、ごめんなさい。虐めてごめんなさい。これじゃあのクソ女どもと同じだよね?だから、これからも仲良くしてね?」
「わかったよ。メアリー。私達友達だもん」
よし、許したる。メアリーのことは許してやる。だがジュリアお前はダメだ。貼り出す。
「おーい、マチルダ、メアリー、お茶いれたよ?あと、ご飯もうすぐだってー」
ジュリアがお茶を持って来てくれた。あれ?やっぱり良い娘だな?ま、許してやるか。ジュリアから渡されたお茶を飲みながらキョーコの方へ向かう。
魔道コンロを準備したキョーコは大きめのボウルで小麦粉を水で溶いた物に色々入れて混ぜていた。刻んだキャベツと紅いのは紅生姜かな?あとあの黄色いのは何かな?オークのバラ肉も用意してあるな?わからん。
「お、みんな来たね?今から焼いていくから熱々を食べてね?今日は遠州焼きだよ!」
キョーコの説明では、お好み焼きの亜種とのこと。本来はキャベツの代わりにさっきいれてた黄色い物、たくわんを刻んだものが入っているのが遠州焼きだって。今回のは色々入れて豪華にしてみたんだって。遠州はサイレントヒルの地方の名前と教えてくれた。これ何気に凄いこと教えてくれたな。私が読んできた文献には書いてなかった。
「はい。焼けたよー?カツオ節を掛けてソース掛けて召し上がれ!」
たくわんは私食べたことがない。売ってるのは見たことあるけど。カツオ節はわかる。いざ、箸に摘まんで口に運ぶ。
「美味しいー!ポリポリとした食感がイイね!」
たくわんの食感がポリポリとして、キャベツとの差別化ができていた。それにソースの甘辛さ、オークのバラ肉の脂が良い感じに合わさる。
「ポリポリでうまうま!」
「この食感は癖になりますね?そのままたくわんだけ食べても美味しいです。私の髪の色と似てますね?」
ジュリアの髪の色がたくわんににてますねって聞いてキョーコが吹き出した。
「ちょっ…エルフの髪の色はたくわん色…ブフォ!?げほ、げほ」
賑やかに夕食が終わった。今日の見張りは、私とキョーコが前半、メアリーとジュリアが後半を担当することになった。
「キョーコ夜食作っておいてね?おやすみ」
「甘いのが食べたいな?おやすみなさい」
メアリーとジュリアがテントに入った。キャッキャと聞こえるから恋ばなしてるのかな?後半は私もキョーコと恋ばなするぞ!
「よーし、作っちゃうね?」
キョーコがちゃちゃっとどろどろの物をフライパンで焼いていた。なにこれ?さっきのお好み焼き?
「これはホットケーキだよ?バターのせて、蜂蜜掛けて。はいどうぞ」
銀色のフォークを添えてキョーコが丸いふっくらした、甘い香りのホットケーキを渡してきた。これがホットケーキか。
「美味しい!コーヒーにも合うね。うん美味しい」
ホットケーキは過去の勇者様が粉から作成に関わって完成させたそうだ。兵隊暮らしが長かったから、知識としてはあっても経験したことのないことが多いんだなと改めて思う。出不精なだけかもしれないけど。
「いやー、ホットケーキミックス売ってたから。買っちゃったんだよね?」
次々とホットケーキを焼いたキョーコはストレージに焼きたてをいれていた。
夜は更けて交代の時間まで何事もなく過ぎた。さぁ、恋ばなの時間だよ?
「メアリー、ジュリア、交代だよ?」
「うーん、あと五時間~」
「うーん、私の胸が大きくなるまで~」
メアリーは朝になるね?ジュリアは来世か?
「交代しない娘には、夜食はお預けだぞ~?たき火の所にあるからね?」
メアリーとジュリアはたき火の前でホットケーキを食べ始めた。え!?今ここに寝てなかった?なにそのスキル?
「さぁ、マチルダの恋ばな聞かせてね?」
キャッキャウフフと夜は更けていった。




