22 リトルビッグウーマン
2~3時間位寝たのだろうか。優しい気持ちで目覚めたのは、小鳥の囀ずりと、漂っている美味しそうな香りによるものだろう。村に住んでいた子供の頃を思い出した。お母さんの朝ごはんを思い出させる香りだった。
シリアスな路線で行きたかったけど、隣でヨダレ滴ながら乙女にあるまじき寝相のメアリーを起こして、テントを出た。シリアスな路線は諦めた。
「おはよう!二人とも本当にありがとうね?豚汁暖め直してるから、座ってね?」
キョーコに進められるまま、穏やかに燃えている、たき火の前に二人で座る
「ゴブリンの魔石は私が綺麗にしておくから、ゆっくり食べて?」
昨夜から明け方までにやって来たゴブリンは全部で18体だった。一時間に2~4体ほどやって来るのを倒すを繰り返した。その魔石はジュリアが洗ってまとめてくれたようだ。お茶も淹れてくれてる。
「はい、食べやすいようにおにぎりにしておいたよ?具はお楽しみだから内緒ね?はい、豚汁もどうぞ」
暖かな豚汁が空腹の胃に染み込む。一緒に入れられている根野菜が美味しい。おにぎりも一口。あ、これは勇者様の好きなおにぎりの具 ランキング不動の1位 ツナマヨだ。もちろん過去の勇者様が作った。
昨日の朝市で置いてあった魚の中にツナがあったのかな?マヨネーズは朝市やギルドにはなかったけど、どうしたのだろうか。王の都だと商店街にはマヨネーズ置いてあったな。前に食べたマヨネーズと少し味が違う気がする。ツナマヨだからかな?
「キョーコ、ツナマヨどうしたの?魔法でだしたの?」
メアリーが同じように疑問に思ったらしく聞いてくれた。キョーコの魔法でも流石に無理じゃない?
「ツナは朝市に小振りなマグロがあったから水煮して見たの。で、マヨネーズは朝市で買った卵と油とお酢と塩で作ったよ?多めに作ったからね?」
勇者様まじパネェぜ!ツナの水煮手作り、マヨネーズも手作り。ツナマヨを作り上げてた。一つ目のツナマヨのおにぎりをぺろり。二つ目のおにぎりをぱくり。あう、梅干しだ。この酸っぱさが癖になるね。メアリーも酸っぱそうな顔してる。それを豚汁で流し込む。むふう。美味しい。ジュリアが淹れてくれたお茶も美味しいよ。
「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさま。キョーコ美味しかったよ!」
私とメアリーはおにぎりを完食。お椀によそわれた豚汁も完食。お鍋の豚汁の残りは、キョーコがインベントリにいれていた。そうか、時間経過なしって凄いな。
「お粗末様でした。豚汁はお昼にも出すね?」
美味しいから豚汁好き。お昼も楽しみだ。
テントを片付けて、たき火の始末をする。もちろんゴブリンを焼いた穴も埋め戻した。来た時よりも美しくの精神でキャンプ場を清掃した。さぁ、今日は山越えだ。そこまで高い山ではないから、山を越えた向こう側でキャンプの予定だ。途中途中適宜休憩、頂上付近の山小屋でお昼かな?
各種荷物をキョーコがインベントリに入れて出発。しばらくはメアリーが御者をしてくれるそうだ。私は荷台の座席に座る。あれ?私、あんまり荷台に座ってないな。
緩やかな山道を馬車で進む。この辺りには山賊は出ないらしい。この山にはオークが住んでいるから。山の向こう側には出るって聞いたな。
「おーい、第一オーク発見だよ。どうする?」
御者席からメアリーが叫んだ。うん、無理に戦う必要はないんじゃない?
「離れているなら無視でよくないかな?」
「えーと、道の真ん中にいるよ?無視はさせてくれなそう」
私の問いかけにメアリーは良くない答えを返した。相手しなきゃいけないじゃん。
「ねぇ、マチルダ。私がサポートするから、攻撃してくれない?」
キョーコがサポートをかって出てくれた。
「わかったよ。お願いね?」
メアリーに馬車を停めてもらい、荷台から降りた私とキョーコは、岩影からオークを観察する。オークは1体だけのようだ。それでも嘗めてかかるとくっころになっちゃうから注意しなければ。キョーコに「くっ…殺せ!」なんて言わせられない。オークに捕らえられた女性がはくっころをしなくてはならない、という法律を作ったロクデナシな勇者様を呪う。
ロクデナシ勇者を呪っていたら、オークに気付かれた。くそ、ロクデナシ勇者め!変態クソ野郎だな。
「ジュリア、なるべく私の後ろにいてね。あと、武器を落としたら予備の武器をよろしく!」
ここからはオークとの接近戦だ。なるべくなら離れているうちに攻撃したい。と思っていたらクロスボウが渡された。
「はい、マチルダ、引いておいたから、撃つだけだよ!やっちゃえ!」
ジュリアからクロスボウを受けとる。この感覚は覚えがある。そう、生き残った6人の最後の1人、控え目なアリサだ。クロスボウをオークに向かって放つ。右の膝にあたった。放ち終えたクロスボウをそのままキョーコに渡すと、次の武器、槍を渡された。そうそう、あの時もこんな感じだったよ。昨夜回想したあの戦、あの時のアリサは目立たなかったが、私達を精神的に支えてくれていた。
ミリーが大盾を構えて私達をまもってくれている時、アリサは真ん中にいた。メアリーも小柄だけど、アリサはさらに小柄だった。控え目な性格だったけど、胸は控え目ではなかった。むしろ自己主張していた。存在感をアピール。
アリサもアイテムボックス持ちで、シンシアのアイテムボックスより大きかったらしい。戦の前によく使わせて貰っていたシンシアのアイテムボックスが印象的で、あまりアリサのアイテムボックスは目立たなかった。が、戦場の真ん中では、私達の中央ではその存在は大きなものだった。
あの戦の時、武器が壊れると、壊れた武器を回収してくれて、次の武器を出してくれる。立てなくなるような大きな傷を負う前に、ポーションを振りかけてくれる。私達が攻撃にミリーが防御に集中できるように立ち回ってくれていた。私達の真ん中にいたから目立たなかった。だから控え目なアリサ。控え目だけど一番の功労者であることを私達は知っている。ミリーとアリサの回想が多いのは、私を含め四人はこの二人には勝てないからだ。
「私は英雄じゃないから名誉はいいよ。みんなが頑張ったんだよ」と言っていたアリサも魔法隊を指揮していた偉い人からプロポーズされてお嫁に行った。アリサの働きは上から全部見えていたそうだ。イケメンだったよ?
そんなことを思いながら槍を突き出し、刺さった槍はそのままに、次は装填されたクロスボウを渡された。放つボルトは左の膝を破壊し行動を止めた。狙った所にあたる、良いクロスボウだ。流石だよ、おじさん。
クロスボウを返すと、次は刀を渡された。攻撃的なサポートがありがたい。オークの胸を私が突き出した刀が貫く。大量の血を吹き出しながらオークが倒れた。慎重に接近する。
「はい、最後のとどめね?」
キョーコから渡されたメイスを持ち上げようとした瞬間、私の肘が破壊されメイスを落とした。そのまま落下したメイスがオークの頭を破壊した。これ、持っちゃダメな奴だよ?私には無理。
「あわわわ!ヒール!」
逆に曲がった肘がキョーコのヒールでもとに戻る。ポーションを掛けられたあの日を懐かしく思う。




