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21 いい女の条件

 ジュリアとキョーコがテントの中に入って布団を敷いてくれた。キョーコがインベントリに入れてきてくれたみたい。良かった。寝袋すら忘れてたよ。計画時はメアリーと二人だったから、マントかけて寝るつもりだったからな。


「時間になったら私が先に寝るから、メアリーは起きてて?」


 たき火に枝をいれながらメアリーに告げた。おい、寝るなよ。たき火に向かって倒れるなよ。火に突っ込む前に襟元をつかんだ。


「…ふぁ?おう任せとけや?」


 任せられない。ほっとけないよ。死ぬよ?仕方ないからもう少し起きてるか。1日位なら徹夜も平気だし。


 あの夏の戦では寝られない夜が続いた。たき火の火を見ると思い出す。あの暑い夏の夜。…あぁもう。だから寝るなよ?たき火の中に顔を突っ込もうとするなって。ちょっと想い出を回想するシリアスなところだったのに台無しだよ。うつらうつらするメアリーの指と指の間に手頃な枝を挟んでおもいっきり握った。


「はう!?許して!許して!ごめんなさい。起きてるから!起きてるから!ギブ!ギブ!痛いいぃぃぃ!!」


 テントの中はキャッキャウフフなガールズトークがされてるんだろう黄色い声が聴こえる。たき火の前は軽めの拷問でギャーギャー喚いているよ。この差はなんなんだろう。と悲しい気持ちになっていたら、侵入者の気配。あれだけ騒いでいたメアリーが、スンッと大人しくなり鎖鎌を握る。私も右手に刀を握る。左手には投げナイフだ。


 侵入者はゴブリンだった。テントの中の二人にはゆっくりと休んで欲しいから、テントに近づく前に動く。私の左手とメアリーの右手がほぼ同時に動く。戦闘開始だ。


 メアリーが何度か回してアンダースロー気味に放った分銅が、先頭のゴブリンの眉間を破壊。声も出せずに膝をつき天を仰ぎ後ろに倒れた。そのゴブリンの脇を私のナイフが飛んで行き、すぐ後にいたゴブリンの喉に突き刺さる。裂けた喉からヒュー、ヒューと少し湿った音をさせながらくちをパクパクさせ血の泡を噴いていた。


 ゴブリンの侵入者は2体で止まった。斥候のゴブリンだろうか?一応倒れている2体の首をはねる。今日は寝られないかもね!メアリーの目もあの頃のようにギラついた目になっていた。そう、さっき回想しようとしてた、あの暑い夏の夜。寄せては引いていく、波のような敵兵の進行。私達の班の6人は凌ぎきった。班のリーダーは煤だらけのミリー。彼女がいなければ私達は死んでいただろう。


 周りの仲間達がバラバラになるなか、ミリーが城壁の間際まで私達に下がるように指示。その瞬間、城壁の上から魔法が炸裂する。もう敵も仲間も関係なく吹き飛んでいく。そんな中、アユが流血。ポーションを飲んだ上司の首がもげる頃、味方の炎の魔法が迫るけどミリーが厚手の革の鎧と金属大盾で防ぎながら堪えてくれた。味方の魔法があたりにくい城壁の際へ移動する。


 魔法が途切れると敵の攻勢が始まる。大盾の背後から私達は槍に投げナイフにとありったけの武器を使って敵を近づかせなかった。シンシアが腐った魚を取り出して敵兵に向かって放り投げた後、また魔法が炸裂する。吹き飛ぶ私達の鎧。放り出される乙女の胸とお尻。そんな時にもミリーは私達の為に大盾を構え続けた。


 敵方の魔法使いが時折放つ炎の魔法も耐え続けた。その炎の魔法で炙られ熱風と共に舞う煤を纏いながら、放り出した胸も気にせず私達を守ってくれた。煤だらけになった真っ黒のミリーを見て、近衛隊の隊長さんは「俺なんかより、ずっと男らしい」と言葉を送った。その言葉に「それが、いい女ってものよ」と、どこかの考古学者みたいな台詞を返していた。


 煤だらけの渾名は私の誇りよって笑った、あの笑顔は忘れないだろう。後年、ミリーは爵位が上がった近衛隊の隊長と結婚した。私とメアリーが除隊を申し出た隊長だ。


 テントは静かになっていた。そんなあの頃の事を思い出していた、その夜のゴブリンの侵攻は、小さな波で間隔が広かったけど東の空が焼け始めるまで続いた。オレンジ色に染まる空の下で、私とメアリーは穴を掘って、魔石を抜いたゴブリンを放り投げていた。その頃には、たき火も燠となっていた。


「ふあぁぁ。おはよう。マチルダ、メアリー、早いね?なにこの臭い?」


 朝日が昇る頃にジュリアが起きてきた。いつもこれくらいの時間に起きているのだろう。なかなか早起きだ。穴を焼いてもらおう。生臭いから。あと私達にクリーンを。切望するよ。ギブミー。


「ジュリア、えーと、あれ焼いてからクリーンお願いね?」


「私にもクリーンかけて?」


 私が指差す方向の穴のなかを見たジュリアが悲鳴をあげた。その声にキョーコも起き出してきた。やはり穴を覗いて悲鳴をあげた。


 キョーコは泣きながら、昨日見せてくれた炎の魔法を使って、短時間でゴブリンを灰にしてくれた。ジュリアも泣きながらクリーンを私とメアリーにかけてくれた。モヤシ終えたキョーコもクリーンをかけてくれた。すっきり。


「私達が恋ばなしてるときに、マチルダとメアリーは…ううう…ありがとう」


「朝ごはん、うんと頑張って作るから、それまで少しでも寝てて?」


 朝日が顔を完全に出す頃、私とメアリーは柔らかな布団に包まれて微睡みの中にいた。ジュリアとキョーコの残り香が凄く良い匂いだ。ところでメアリー?何故顔を赤らめて………Zzzz…


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