2 王様はクズ
へなちょこロビンの号令の元、勇者様の召喚が開始された。一組目、男女混合での召喚だった。男1、女2だな。このタイプはよくドラゴンに突撃するタイプだ。
「くそ、こいつらは使えないな。よし、そこのお前、こいつらを処刑、よろ。あ、女はかわいいな。殺さず、俺の部屋に閉じ込めておけ」
ふぁっ!?何いってるの?こいつは?ロビン王の左右に控えていた右側の兵士により勇者男は突き殺された。赤く染まる床に虚ろな目をした元勇者が倒れた。泣き叫ぶ勇者女達。ちなみに召喚された者は全員勇者だ。
「よし、次の召喚だ!急げ!」
召喚には犠牲が必要になるはず。年一回の召喚の時には王の寿命が一年削られていたはずだ。前王はもう少し削って、衰えてお隠れになった方が良かったかもしれない。尊敬はしてるよ?でも覗きかぁ…。
「よし、召喚の陣の上でこいつを殺せ!俺の寿命ではなく、こいつの寿命をくれてやるからな?」
どこからか連れてこられたのは、ロビン王が買った女奴隷の一人だった。ロビンはくずだからな。こいつくらいの年齢なら…あ、確か今年42歳のはず。こいつくらいの年齢なら普通は他国から姫がお嫁に来ていて普通なんだけど。キモデブハゲのへなちょこロビンの所にお嫁にくる女性はいなかった。私達の近衛隊の班は一応前の王様から守られていた。一応この国の英雄だよ?
お嫁さんがいないから、女奴隷を性奴隷にしていたらしい。ロビンの部屋からは毎晩悲鳴に似た声が聞こえていたそうな。ここに連れてこられたのはそのうちの一人のようだ。
左側の兵士が槍で女奴隷の胸を貫く。流れ出す血が召喚の陣に吸い込まれていく。
「よし、これで召喚出来なくなるまで呼び続けろ!」
次の召喚が開始された。次の召喚では30人ほどの男女が召喚される。おおよそ男女は半々。これは勇者様のいる世界の学生を召喚したようだ。男女共に制服を着ている。私達近衛隊の鎧と同じような役目だと思う。このタイプの召喚の場合は大抵、勇者様の中で分裂して争う。非常に面倒なことになる。仲良くしろとは言わないけど、こちらに迷惑かけるなと言いたい。まぁ、勝手に召喚していてなんだけど。
「こいつらも使えんなぁ。よし、近衛隊も協力して殺せ、殺し次第次の召喚な?もちろん女は殺さず、俺の部屋な?」
なんですと!?私も勇者様達を殺す?勇者様と言えども召喚したばかり、召喚ホヤホヤだと一般人とあんまり変わらない。勇者様が勇者様の力を発揮するのはステータスを確認してからだと言うことはわかっている。ちなみにステータスを確認するには、この国に保管されている石板、もしくは勇者様御自身のスキルによる確認でしか本来の勇者様としての力を発揮できない。石板は現在作成方法がわかっていない。
現実逃避している間にも、恐らく15歳から18歳くらいの男性が殺されていく。悲鳴をあげる女性達も縛られてロビンの部屋に連れていかれた。へなちょこロビンと言えども王命。逆らうわけにもいかず、私も勇者様を殺していった。あの頃の私にはもう戻れない。
何日も何日も召喚、殺害、部屋に送るを繰り返した。私達の班も目が死んでいた。こんなの近衛隊の仕事ではない。暗部の仕事じゃないのかな。当初の目的を忘れたへなちょこは自分好みの奴隷を増やすために召喚を続けていた。勇者様は美男美女が多い。
奴隷を殺して、勇者様を召喚すると、おおよそ30~40人ほどの男女が召喚できた。何度か実験しながらだったようでへなちょこロビンの後ろにいた学者っぽいキモオタメガネが脂ぎった顔でぶつぶつ言っていた。
勇者様をその場で殺すと召喚人数も増えるのでは?と思われていたが増えなかった。ロビンが性奴隷化した最初に召喚された女性は一人になっていた。途中で亡くなったそうだ。でもこの女性も遠い目をしてぶつぶつ呟いていた。
「こいつも飽きたし、殺しておけ。召喚できたらラッキーだな!よし、マチルダやれ」
召喚の陣に座らされた女性を私はなるべく苦しまないように槍を刺した。陣に血が吸い込まれていく。召喚したその場で殺しても駄目だが、何日間かこちらで暮らすとこの世界の住人扱いになるようだった。
「くくく、成功だ!よし、次の召喚だ!」
ロビンは飽きた召喚女勇者を殺害して召喚を続けた。くる日もくる日も。私達、勇者様に恨まれてる。だって去年だったら手厚く保護されてたから。今年は誰も勇者として保護されてない。
ある日、同僚のメアリーと一緒に昼食をとっていた。メアリーの顔色が悪い。もう何日も前からだけど。
「メアリー、酷い顔だよ?桃尻のメアリーが元気ないじゃない」
桃尻のという渾名はもちろんあの戦でつけられたものだ。ぷりんぷりんなお尻は、あの戦の後でもきれいだった。
「あはは?こんな毎日だもん。ボールクラッシャーマチルダも酷い顔だよ?」
「その渾名はやめて?恥ずかしい…淡い色のマチルダにしてよ?でもそうだよね。私…除隊しようかしら?」
ボールクラッシャーマチルダも、もちろんあの戦でつけられたものだ。敵兵の股間を蹴りあげ、文字通り潰した。両方とも。そして何人も何人も。隣国では悪魔の所業とも呼ばれていた。ちなみにメアリーのそっち系の渾名は刈り取る者。あ、いえ何にも言ってません。
淡い色のも戦だ。戦のあと鎧が吹き飛んで胸をさらけ出していたときにつけられた。淡い桜色の乳首だったからだよ。ちょっと自慢だ。他の娘達は煤で汚れてたけど、私の乳首とメアリーのお尻だけは汚れていなかった。
「いいね!私も抜けたいなぁ」
ちなみにあの時の生き残り6人で残っているのは私とメアリーだけだ。他の娘達はお嫁にいってしまった。はい、そこ!行き遅れたとか言わない!煤だらけのミリーも、流血のアユも、控えめなアリサも、重力に負けたシンシアも今は幸せに暮らしている。わりとみんな早い段階、前年までに抜けたから。この仕事をしてるのは私とメアリーだけだ。召喚の部屋の護衛には近衛隊から四人派遣されている。
「一緒に除隊しよう?」
「うん!ありがとうマチルダ!」
私達の班は近衛隊の中でも独立した班だったので、除隊の申し込みはどこにすればいいのだろうか。えらい人に聞いてみよう。