夜中の茶番
慣れない羽毛ベットの上でいびきをかきながら眠っている星郎。眠りについているのは街中の誰も出会った。法理により一部の特例を除いて全ての人民は23:00から2:00まで仕事をしてはいけないとされているからだ。
街には特例として働いている兵士が見回りをしている。兵士達のもつ揺れる明かりは街に光と影を作っては消し進んでいく。丁度その明かりが星郎の家を過ぎた頃。
星郎「ゴッフッ…………!!ヴ〜〜……ア〜!!誰だ……」
ベットに詰められている羽毛を巻き上げ、星郎の腹に何かが直撃した。
ペア「起きろ……」
腹を押さえながら起き上がるとそこには銀の龍、ペアが立髪を青く光らせながら浮いていた。
星郎「あ…?龍が喋ってる……夢か…zzz」
ペア「起きろ……」
尻尾で腹を殴られ再び跳ね起きる。
星郎「ゔぇ……なんだってんだ……」
ペア「…………」
星郎「なんだよ?今度はだんまり比べか?」
ペア「…………」
首を横に振る。
星郎「じゃあ、早く用事言えよ。」
ペア「…………」
星郎「……ハァ……寝るぞ……」
ため息をつき、星郎が布団に包まろうとした時、ペアの長い体が巻きついた。ペアはそのまま体を浮かせ下の階に連れており、酒豪丸に乗せて、大きな扉を頭でこじ開けた。
星郎「……なんだよ?」
首を扉の外に振って星郎を睨みつける。
星郎「オメェ、まさか俺の酒豪丸ともういっぺん勝負しろって言いてぇのか?」
ペアは力強く首を縦に振る。
星郎「負けんのが悔しいのは分かるがよ、今は夜中だ。俺も眠いし……それに一度は着いた勝負だ。体休めて、修行し直してまた近いうちにやろうぜ。おやすみ……」
あくびをしながら酒豪丸を降りようとする星郎を頭で押し戻し、勢いよく首を横に振るペア。
星郎「オメェなぁ……」
頭を掻きながらエンジンをかける。部屋の中を酒豪丸の光が照らした。それを見てペアは体を空中で一回転させ、飛び始める準備をした。
クラッチを入れ、アクセルに足をかける。
星郎「いくぞ……用意……」
ペア「グルル……」
星郎「ドn「ここにいた!!」
アクセルを踏んでコンマ数秒でブレーキを踏み体が前のめりになる星郎。声を出したのはベアーテだった。
ベアーテ「まったくもう……探したのよ?」
ペア「ぐうぅぅ……」
体を地面につけて弱々しい唸り声を上げる。
ベアーテ「ほら、また明日も仕事があるでしょう?今は休まないと……何してたの?」
マフラーから水蒸気とガスの臭いを出す酒豪丸に目を向けて聞いた。
星郎「いやぁ……こいつがな、俺と……」
星郎は助手席に移動して答えようとすると
ペア「フゥン……!!」
ペアがベアーテの後ろから鼻息を強く出し、首を横に振っている。
星郎「酒豪丸ん中で俺と一緒に寝たいんだとよ。どうしてだろうなぁ?酒が好きなのかな?なんて……」
ベアーテ「…………」
当然ながら明らかに疑っている目をするベアーテ。星郎は思わず目を逸らす。
星郎「ほ、本当に……神にも仏にも誓って……」
ベアーテ「はぁ……ま、そういうことにしておくわ。それじゃあねまた……朝に。」
星郎「お、おう。」
ベアーテはペアにまたがり飛んでいった。ペアは一瞬星郎の方へ振り向きすぐに前を向き直した。
カーネリック「お前も大変だな。」
星郎「どわぁ!!どっから沸いてきやがった!!」
運転席にカーネリックが座っていた。
カーネリック「ベアーテと一緒に来てたぞ。」
星郎「オメェも訳わかんねぇよ。なんで付き纏ってくんだ。」
カーネリック「聞きたい?2時間はかかるぞ?」
星郎「じゃあ3分で話せ。」
カーネリック「じゃあ言わない。私もそろそろ帰るとしよう。その前に服をやろう。そんな服じゃチンピラに狙われるぞ。」
星郎は開拓地の服を着ていた。特に気にしてはいなかったが考えてみれば酒豪丸の印象とはまるで合わない。
カーネリック「ほら。」
渡されたのは灰色のチュニックに革ベルトと裾の長いズボン、黒いマントを渡された。
これも酒豪丸の印象とは合わない。
星郎「ありがとさん。」
早速着替え、寝室に戻っていった。