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星の下でトラック野郎

キキィーーーー!!!


ガシャん!!



都会の明かりに照らされながら1人の社畜が血に塗れる。周りでは野次馬がカメラのフラッシュを焚いている。余程疲れていたのか赤信号中に渡ってしまっていた。男の横には緑と赤の光を放つトラックが止まっていた。バンパーは異常に突き出し、荷台の左右には虎と般若の絵、後ろには龍の絵が描かれ、フロントガラスにはド派手な装飾が施されている。


頭に鉢巻き、赤いTシャツ、腹巻、角刈りの男がトラックから降り男の状態を確認する。


この運転手の名前は鬼伊達 星郎《きだて しょうろう 》  24歳


11年間もトラックを乗り回すベテランドライバーだ。

13歳から親父にしごかれトラックの道に走り今では地元で名を轟かすトラック野郎。

今日も愛車の酒豪丸と共に仕事を終えて帰路に着いていたが……




星郎「おい兄ちゃん……!!クソッタレが……!!

ボヤボヤしやがって!!」


苛つきながらケツポケットから今時は珍しいガラケーを取り出して119をする。


星郎「俺もな、ここで捕まるわけにゃいかねぇんだわ。悪いな兄ちゃん。」


そう言い残しトラックに乗り直すと思い切りアクセルを踏み込む。

タイヤからは砂埃がたち、巨体を揺らしながら猛スピードでその場を後にする。






数分後救急車とパトカーが到着する。


救急隊「……ダメだ……一歩遅かった……!!」




男「あれ?ここは…確か俺はトラックに跳ねられて……まさか……!!これって異世界転生!!!?」









その頃星郎は街外れを北極星に向かって走っていった。

酒豪丸の赤と緑の光が道を照らし、車線変更を繰り返しながらクラクションを鳴らし、車を追い抜き続ける。



星郎「クソが!!どうすりゃいいんだよ!!人引いちまったよ!もし捕まったらコイツともサヨナラだ…」


不安と怒りをごまかす様に外に聞こえるまでカーラジオの演歌の音量を上げてハンドルを荒くきる。


気が付けば道は三車線から一車線の峠道へ。


不安で目の焦点が合わず気づかぬ内に逆走をしていた。



星郎「しまった!!」


目の前にクラクションとヘッドライトの光がと思えば何処かの荒い道に出た。


ブレーキを踏み、外へ出てみれば峠でもなければアスファルトの道でさえない。更には目印にしていた北極星さえもなく見覚えの無い星空が広がる。

街灯さえ無い平原には酒豪丸の燈と演歌CDだけが延々と流れていた。


きっと酔っているのだろうと思い、運転席に戻り酒豪丸を脇道に寄せて、ドアポケットに入っているビール缶の残りを飲み干して眠りについた。



次の日の朝周りが騒がしいと思い周りを見ると見たことのない服を着た人が酒豪丸を囲んでいた。



半開きの目をなんとか開けながら酒豪丸から降りて怒鳴り散らす。


星郎「おい!テメェら!!こりゃあ、見せもんじゃねぇぞ!!コスプレ野郎どもが!!」


子供は泣き始め、その母親と思わしき人達はコソコソと話している。男達は騒いでいる。


星郎「なんだよ!!言いたいことがあんなら言えってんだよ!」


しかし状況は一向に変わらない。痺れを切らしドアを力任せに閉めてその場から逃げる様に走り去っていった。




星郎「畜生が……昨夜から全くついてねぇ!!」


草原のど真ん中にできた草を刈っただけの道を走りながらどこへ行くとも知らずただ走り続ける。

その時、黒髪でロングヘアの女が道のど真ん中に立っていた。

もう人は引くものかと急ブレーキをかけて窓から顔を出して怒鳴った。


星郎「馬鹿野郎!!死にてぇのか!!?」


女は目を丸くして腰を抜かしていた。

女の服装はさっき酒豪丸の周りにいた者たちと同じで、両手には腕人形を持っていた。


右手の腕人形が腹話術で喋り始めた。


右腕人形「ご、ごめんなさい!!こんな生き物はじめて見たもので!」


左の腕人形も喋り始めた。


左腕人形「おい!相棒!こんな奴に謝る必要なんて無いぜ!!」


右腕人形「で、でも……」


左腕人形「いいんだよ!俺達は早い所ダンテに行かないと!」


右腕人形「………」



星郎「なんだ。オメェ、行きてぇとこがあんのか?」


左腕人形「だったらどうしたい!?」


星郎「乗んなよ。オメェらが道案内してくれりゃあちょいとぶっ飛ばしてやるよ。」


右腕人形「あ、ありがとうございます!」


左腕人形「待てよ相棒!こんな簡単に信じて良いのかよ!」


右腕人形「大丈夫だってのはお互いに分かってるでしょ?」


左腕人形「そうだけど……分かった!乗るよ!」


右腕人形「え…と…どうやって乗るんですか?」


星郎「ああん!?オメェ乗ったことねぇのかい!」


右腕人形「何せ初めて見ましたから……」


星郎「はぁ……よっぽど田舎もんなんだなぁ……」


呆れた様に言いながら助手席のドアを開けてこっから

だと指で指し示す。


女は腕人形を器用に扱いながら酒豪丸へと乗った。

その顔はまるで免許合格通知を待つかの様な不安な表情だった。


左腕人形「酒臭っ!!」


星郎「うるせぇ!……んで何処に行きゃあいいんだ?」


右腕人形「この道を真っ直ぐです!」


星郎「なんだぁ?随分と楽だな。」


アクセルを踏み始める。

エンジン音に女は身体をビクンと跳ね上げ「……!」と声にならない様な声を上げた。

タイヤが回り始めると女は背もたれに全体重をのせ後へ流れていく景色に驚いていた。


星郎「そう緊張すんな。楽しんでこそのトラックだぞ?」


右腕人形「トラック?もしかして、あなたはライダーですか?」


左腕人形「トラックってのはこの猛獣の名前だな?」


星郎「俺はライダーじゃねぇぞ!ドライバーだ!ライダーってのはもっと貧弱な野郎が2輪車で粋るためになるもんだろ。」


右腕人形「はぁ……。あ、後何日で着きますか?」


星郎「日!?」


右腕人形「歩きだと3日くらいかかります。」


星郎「歩きで3日……宿泊の時間も入れると大体……

4時間程か……」


右腕人形「へえ……速いんですね……」


レダー「おっと、紹介が遅れたな!俺はレダー!コイツは相棒のシープ!」


シープ「はい、シープです。それから私達のご主人様のサネルです。」


女が軽くお辞儀するのが視界の端に見えた。


星郎「俺ぁ鬼伊達 星郎っちゅうんだ。まあ短い間だがよろしくな!」



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