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廃人がヒロインなっちまった  作者: 大木戸 いずみ
27/34

27.個別指導3

「……早く出ていけば?」

 私が嫌そうな顔でそう言うと、イモコが頬を膨らます。

 どこぞのアイドルなんだい。これで何人の男が落ちるんだろうか。まさか本当に頬を膨らまして、機嫌を損ねた態度を表す人間がいるとは……。

「ぶりっ子」

「え? なにそれ? ぶりっ子?」

 およよ、この世界ではぶりっ子というワードがないのか。

「ぶりぶりおならしてる女の子のことだよ」

 ……うわぁ、自分で言っておいておいてなんだけど、品性疑うわ。私、汚いな。

「はああ? 私、おならしないわよ」

「嘘つけ、さては人間じゃないな」

「そうよ、人間じゃないわ。悪魔だもの」

「悪魔でもおならするだろ!」

「しないわよ! ユユがおならするんでしょッ!!」

「うん」

「ほら、やっぱり天使もおならしないじゃない、悪魔だけ陥れようなんて……、は? え? おならするの?」

 いや、逆にしない方が怖いっしょ。

 しかも、私、前世酷かったからな。部屋でずっとパジャマのまま漫画読んでおならとか普通にしてた。だって、誰も見てないし、誰もいないし、被害者ゼロだから何にも悪くない。

 人前じゃしないけど、生きてたら誰でもおならはするんだ!

「イケメンだっておならするじゃん。勿論私も」

「ユユ、貴方、それは言っちゃいけないわよ」

 この世の終わりかのような表情を浮かべながらイモコは口を開く。

「なにゆえ」

「夢を壊しちゃだめよ。貴方、中身は置いておいて、仮にも美少女なんだから……、中身は置いておいて」

 何故二回も言ったんだ。

「おい、お前らもっと品のある会話できねえのか?」

 ギルトが呆れた様子で私達にを見る。ジェイルはずっとニコニコしながら私達を見ていて、トマスとハーヴィーは笑いを堪えている。ロアールはため息をついて、今にも私を罵倒しそうだ。

 うむ、男性陣いたことをすっかり忘れていた。というか、何よりここは学園長室だ。

「ユユといたら私の品性が下がるわ」

「とかいいつつ、私のこと好きなくせに」

「な、調子に乗らないでよね!」

 今朝会ったばかりなのに、イモコは私の言葉に顔を赤くする。

 見た目は大人っぽいのに、からかうと面白いな。

 カタカタと何かが小刻みに震えている音が聞こえる。……地震か?

 一体何が揺れているのだろうと、音がする方に目を向ける。

「わお」

 更年期先生が怒りで全身揺れている。彼女の振動により棚に並べられているティーカップが小さく震えているのだ。

 こんなことある? まさか人間が地震を生み出すなんて。やっぱりゲームの世界は凄いな。

「八ッハッハ」

 おい、学園長笑ってる場合じゃねえよ。先生の怒りをしずめてくれい。

「学園長! この行儀の悪い生徒達に罰を与えるべきです! 教師に対する敬意を持つように指導しなければなりません!」

 SORENA☆

 顔を林檎のように真っ赤にして起こる彼女に同意だ。学園長を呑気に笑っている場合じゃない、彼らに罰を与えましょう!

「愉快で楽しいじゃないか」

「校舎の掃除とかいいんじゃないですか」

「ベーカー君、君はいつからこっち側なんだい? 勿論、君にも罰を受けてもらうよ」

「……は?」

 当たり前だろ、と皆のハモる声が聞こえた。こういう時だけ一致団結とかひでえよ。

「ちょ、ちょっと待ってください。彼らが勝手に盗み聞きしてたんですよ?」

「ええ。けど、こういうのは連帯責任でしょう」

「そうだ。元はといえばお前のせいで盗み聞きすることになったんだからな」

「土に埋めるぞ」

 トマスの言葉に反射的に私は答える。

「ということで、皆さん、放課後の校舎掃除頑張ってください」

「悪魔ですか?」

「いえ、私は天使です」

 そう言って、学園長はニコッと目尻をくしゃくしゃにして笑った。

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