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廃人がヒロインなっちまった  作者: 大木戸 いずみ
22/34

22.美少女悪魔との会話 4

「イモコ、その話はやめてくれ」

 私は彼女の肩を掴みながらそう言った。

 ……身長が私よりもかなり高いな。羨ましい。この乙女ゲーム、ヒロインは私だけど彼女がヒロインでも全然ありありじゃん。

「ちょっと、イモコって何? 私にはシャルロッテっていう可愛い名前があるんだけど!」

「ギルドの妹、妹子、イモコ。可愛いじゃん、イモコ」

「意味が分からないし、ちっとも可愛くないわよ」

「そうかな?」

「そうよ!」

 彼女は私に顔を近づけて声を上げる。紫色の瞳がグングンと私に近づいてくる。

「おうおう、まぁ、落ち着きたまえ」

「誰のせいでこうなっていると思ってるのよ!」

「私か」

「そうよ!」

 さっきと同じ流れがもう一度繰り返されたような気がする。母といい、イモコといい、このゲームの女性はすぐに怒るな。……いや、この二人が特別なのか?

 ヒロインの母に攻略対象者の妹となりゃ確かに強烈なキャラのイメージがあるのは否めん。 

「というか、貴女の名前は?」

「ユユ・ベーカー。あ、先に言っておくね、ちっともいじるところがなくて面白みにかける名前なのは重々承知だから、何か変なあだ名をつけてくれるなら私は大歓迎だからね!」

 急に饒舌に話す私にイモコは眉をひそめる。

 そんな風に見られると、まるで私が変なことを言っているみたいじゃんか。

「で、お兄様に何をしたのよ」

「あ~、靴をね、ちょっと頭にぶち投げたっていうか……、うん、投げた」

 私の言葉にイモコは口を大きく開ける。

 おお、良いリアクションだ。スマホがありゃ写真を撮ってたのに。なんだか今とても悔しい気分だ。文明の力って凄いんだな。

「あのお兄様に……、靴を、頭に、投げたの……?」

「夢かもしれない、うん、夢な気がしてきた」

「ユユってお馬鹿さんなのね」

 こうも直球に言うかね。……その事については何も言い返す言葉がない。理性を失い、本能に従って動いたのはまずかったなって反省している。

「そっちはどうして空から落下したの?」

「ちょっと落下とか言わないでよ。気力切れって言ってちょうだい」

 そんな変わらないだろう。……まぁ、彼女のプライドを傷つけたのならこれから気を付けよう。

「で、なんで気力切れになったの?」

「昨日、悪戯しすぎて体力消耗しているのに今日の朝、天気が良かったから空を飛んで学校に行こうと思ったら途中で気力不足になったわけ」

「イモコ、あんたも馬鹿なんだね」

 私は彼女の肩をポンポンと叩いてフッと微笑んだ。

「ちょっと! なによ、それ! てか、イモコじゃないし!」

「お嬢様、そろそろ出発した方が良いかと」

 御者の声が耳に響いた。もうこれは完全に遅刻だなと思いながらも私は馬車の方へと足を進めた。

「わたしゃもう行くなり」

「私も一緒に行くわ! 馬車に乗せなさい」

「え? もう飛べるなら飛びなよ」

 お互い早歩きをしながら馬車の方へ向かう。

「嫌よ。一緒に馬車に乗るわ」

「あいにくうちの馬車は馬鹿は乗れないっすよ」

「あら、じゃあ、貴女も乗れないわね」

「うわ、それが命の恩人に対する態度?」

「見返りをいらないって言ったのはそっちでしょ!」

 言い争いしながら結局私もイモコも馬車に乗り込んだ。

 結局、ギルドの妹ことシャルロッテと一緒に学校に行く羽目になったのだ。……今思えばこれはイベントというやつの一つだったのかもしれない。

 前世の母曰く、ギルドの妹はもっとヒロインに優しかったはずだ。どうしてこんな……。あ、助け方を間違えたのか。

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