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廃人がヒロインなっちまった  作者: 大木戸 いずみ
18/34

18.学校へ向かう

「…………」

「お嬢様? どうかなされましたか?」

 ベラの心配する声が部屋に響く。

 ……そうだあああぁぁぁ!! この部屋にゲームはない!!

 私は思わず両手で頭を抱えた。 

 分かっていたはずなのに、どこかでその事を忘れていた。この世界で私を廃人にする要素が何もない。勿論ゲーム機を開発できるような技術は私にはない。

「大丈夫ですか?」

 ベラの声とともに私はガチャリと扉を開けた。ベラがギョッとした表情を浮かべる。

 失望と絶望に満ちた私の表情を見たら、誰でもそんなリアクションを浮かべてしまうだろうな。

 ふらふらとしたまま部屋を出て歩き始める。

「あの、ユユお嬢さ」

「そのまま学校に行く」

 ベラにそれだけ言って私は玄関の方へ向かった。


 馬車に揺られながら私は屋敷での自分の噂について考えた。

 様々な噂が飛び交っている。そのうちの九割は嘘の情報だけど……。どう聞き間違えればそんな噂になるのかと未だに不思議だ。

 私の脳みそは悪魔によって支配されてしまったとか、毒蛇に噛まれて人格が変わってしまったとか、ユユのマスクをかぶった別人だとか……。中二病かよ。どうせならもっと信憑性のある噂を流して欲しいわ!

 わざわざその噂を消していくつもりもない。放っておいたらどうせそのうち忘れ去られていくだろうし。むしろ、このまま素をさらけ出していたら昔の私なんて消えてしまうだろうし。

 ああ、本当に面倒くさいな、乙女ゲームって。なんとかして転生先を変えてもらうことは出来ないのだろうか。

 ……もう一度死ねばいいのかな? いや、命をそんな粗末にしてはいけんな。

 学校に行けばあの美形悪魔集団に虐められるのか。まぁ、不細工悪魔集団じゃなかっただけ良かったと思おう。

 私がそんなことを考えていると、突然馬車が停止した。咄嗟のことに反応が追い付かず、私はそのまま前のめりに倒れてしまった。

「いってえ」

 頭を押さえながら、そっと外の様子を窺う。それと同時に御者の声が響いた。

「申し訳ございません、お嬢様!」

「あ~、全然大丈夫だから何があったのか教えてちょ」

「いきなり悪魔が空から落ちてきたんです」

「は!?」

 嘘としか思えない彼の言葉に声が裏返ってしまった。

 悪魔が空からいきなり落ちてくるなんてどんな状況だよ。今日の天気予報は晴れ時々悪魔だったとか?

「とりあえず、確認いたしま」

「私がする」

 御者の言葉を遮るようにして私は馬車から勢いよく下りた。

「お嬢様、お待ちを! 危険でございます」

「君はそこで待ってて」

 困惑する御者にニコッと微笑み、悪魔の方へ足を進めた。

 ……うわ、本当に悪魔が落ちてきたんだ。

 砂利道に力なく倒れる一人の悪魔を見つめながら私は呑気にそんなことを思った。

 仮に彼が危険人物でも、もう何かをする力も残っていないだろうと思い私はどんどん近づく。顔は見えないが、長い髪と丸みを帯びた体から女だということは認識できた。

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