17.学校に行きたくない
はぁ、憂鬱だ。また、明日も学校に行かなければならないなんて……。
実は、あのギルドに暴言を浴びせていた一連をかなり多くの生徒に見られていたのだ。窓から私の叫び声が聞こえて、一気に注目を浴びてしまったようだ。
私のことを知る数人の天使がまさか私があんな物言いをするなんてと驚いて、完全に引いていた。すっかり私は変人扱いだ。
そりゃ、ヒロインは慈悲深く愛情に満ちた笑顔の素敵な女の子だったからね。
結局、昨日誰とも話せなかったし……。悪役令嬢も見つけられなかったし……。
「はああぁぁぁぁぁぁぁ」
私は魂を全部出す勢いで盛大にため息をついた。
友達が欲しい。……いや、別にいなくても生きていけるけどさ、一人ぐらい気の合う友達が欲しいのだ。
「学校に行きたくないな」
私はドレッサーに肘をついて、眉間に皺が寄ってかなり酷い顔をしている自分を鏡越しで睨んだ。
どうして私は乙女ゲームのヒロインなんかに転生してしまったんだああぁぁぁぁぁ!
姫を守る魔術師とか、剣を振り回す女戦士とか、超能力を使える女子高生とか、もっとカッコいいキャラあっただろう!
それに、昨日ギルドに靴を投げたことを私はまだ忘れていない。
記憶から消してしまいたかったが、あの驚いたギルドの顔が鮮明に脳裏に焼き付いている。
そんなことを考えていると、コンコンッと扉の叩く音が響き、ベラの声が聞こえた。
「ユユお嬢様、朝食の準備が出来」
「ごめん、今日はいらないや」
「え、でも」
「これからもいらない。暫く部屋にこもるから」
困っているベラを無視して、私はそう言った。
申し訳ないが、ここは協力してもらうしかない。まずプランAは朝からずっと引きこもってみるというものだ。
そもそもこれ以上ギルド達と接触しなければ私なんて忘れ去るだろう。そして、自然に恋愛対象は悪役令嬢と変わる。ゾンビゲームと一緒だ。自らゾンビの大群に突っ込んでいくより、皆が彼らを大体殺してくれるのを暫く待機する方が生き残る確率が上がる。
「奥様になんて説明をすれば……」
「体調不良とかなんとか言っとけば大丈夫じゃない?」
「お医者様をお呼びになられるかと」
否めん。母は絶対に医者を呼ぶ。私に意地でも元気になれと言ってきそうな人だ。スパルタ母様め~。
完全にラスボス的な存在だ。きっと、ギルド達を攻略するよりも母を攻略する方が、数千倍も難しい。
……でも、乙女ゲームでもヒロインは母に好かれていたな。まぁ、それは性格が女神みたいだったからか。
「じゃあ、ベラはどうやったら学校に行かなくて済むと思う?」
「え、えっと……、その前に一つ確認してもよろしいでしょうか?」
「もち」
「お嬢様はどうして学校に行きたがらないのですか?」
え? 今頃かい。その質問はもっと早くに来てもいいと思っていたけど……。
ベラも立場上私にガンガンと質問出来るわけじゃないのかな。
「それは勿論」
「だって、この部屋って特に面白いものないですよね」
私の言葉にかぶせるようにベラははっきりとした口調でそう言った。




