14.攻略対象者VS私 5
「なんで喧嘩になるの?」
「お前はまじで馬鹿だな。俺達悪魔が天使の家に行って歓迎されるわけないだろ」
「ああ、なるへそおへそ」
私にとったら好都合。これでギルトが私の家に来ることを諦めたら私は若干廃人生活を送れるかもしれない。まぁ、母がいる限りその可能性はだいぶ低いが……。
「ユユっちはとってもギルトに気に入られたんだね」
ジョイルがニコッと笑顔を私に向けた。
……嬉しくねえよ。
「他の女なら悪魔天使問わず、喜ぶところなのにな。何お前この世の終わりみたいな顔してるんだ」
トマスが不思議そうに私を見る。
そやつら、頭おかしいんじゃねえの。
はぁ、こんな絶望感を入学早々味わうとは……。私これから先やっていけるのか?
「ユユっち! もっと今の状況を楽しもうよ!」
「どうやって」
「さぁ?」
首を傾げてニコッと笑う天使のような顔の悪魔に私は肩の力をガクッと落とした。
「俺は反対だな。他の天使ならともかくこいつは嫌いだ」
突然のロアールの言葉でその場の空気を一瞬で凍り付いた。
わーお、インドネシアからいきなり南極に飛ばされたような気分だ。一番怖いのってもしかしたら、ロアールなのでは……?
「へぇ、ロアが反対するなんて珍しいじゃん」
ニヤニヤしながらギルトは答えた。彼はこの冷たい雰囲気さえも楽しんでいるように見える。……悪魔すげえ。
「喰われるなよ」
ロアールの言葉にギルトの瞳が鮮やかに散瞳するのが分かった。
……私がギルトを喰う? いやいや、そんなこと絶対にあり得ん。天地がひっくり返ってもあり得ん。
「誰に言ってんだ」
キュッと口の端を上げてニヤッと笑うギルトにロアールは何も言わずその場から去って行った。
「私もそろそろ校舎に行くわ」
「連れてってやるよ」
「いや、いい。目立つし。てか、一人で行きたいし」
「道分かんねえだろ」
ごもっともです。そもそも私は迷子になってこの場所に辿り着いたんだった。……あっ、でも。
「空飛んだら大丈夫なんじゃない?」
私の言葉にギルトは盛大なため息をつく。
へ? なんでそんな反応なわけ? 別におかしいこと言っていないでしょうが。つか、周りの皆も馬鹿を見るような目で私を見るのやめろ。
「お前、なんも知らないの? 悪魔は羽を出していいけど、天使はむやみに羽を出すなって暗黙の了解だろ? まじで箱入り娘も良い所だぜ」
トマスが少し棘のある言い方で私に説明してくれた。
あ、そうなんだ。それは初知りだったな……。まだまだ私の知らないルールが沢山ありそうだな。素行には気を付けなければ。
「じゃあ、行くぞ」
ギルトは私をひょいと片手で抱き上げて、右肩に乗せた。そして大きくて立派な黒い羽をバサッと広げる。
「綺麗……」
心の闇を表すようなその黒さ、頑丈で鋭い羽……。あまりにも美しいその強そうな羽に暫く見惚れてしまった。




