13.攻略対象者VS私 4
「で、ギル先輩は私を虐めて最終的にはどうしたいんっすか?」
出来ればこれ以上、彼らと関わりたくないのだ。出来るだけ隅っこで空気のように生活をしたい。彼らと関われば間違いなく目立つ。それだけは避けたい。
「どうって……」
私の言葉にギルトは言葉を詰まらせた。
「泣かせたいとか、奴隷にしたいとか、なんかないわけ?」
「本当に変わってるね~。そんなことを質問してきた子、今までにいなかったよ」
ハーヴィーが私の言葉を楽しそうに聞いている。
わお、これは最悪な展開になりかねないぞ。少し珍しい女の子だと思われて余計に関心持たれるのが一番困る。
早く、普通の台詞言わないと……。普通の台詞って……何!!!
「それを言ってどうするんだ?」
ギルトが疑わし気に私を見つめる。
「早くギル先輩が欲しがる結果を見せてあげるし、やってあげますよ」
「は?」
「そうしたら、もう私に用はなくなるでしょ?」
「……お前ってまじで馬鹿なんだな」
「馬鹿って言うたびにその顔がカバのようになっていくって知ってた? その美しい顔ともおさらばだね」
私が腕を組みながら低い声でそう言うと、ギルトは目を丸くして固まった。
フッ、今回の勝負、勝者は私じゃ。
ギャハハハと下品な笑い声が突然響いた。トマスとハーヴィーが腹を抱えながら大爆笑している。ジョイルも高く可愛らしい声を上げながら笑っている。
ロアールは相変わらず表情を崩さずに私の方を睨むようにしてじっと見ているけど……。
「ギルが……ギルが……カバだって……よ」
「カバギルドッ」
笑いながら話すから何を言っているのかあまり聞き取れない。
それにしても、こんなに馬鹿にされる仲間同士なのに容赦ないな。流石悪魔だ。敵に回したくないな……。
「見てみてえなぁ、カバギルッ……ド」
いい加減笑うのをやめんしゃい。過呼吸になるぞよ。
私が笑っている彼らの様子をじっと呆れた様子で見ていると、いきなりギルトに頭をガシッと片手で掴まれた。
「痛ッ、何するん」
「いいか、そのちっさい脳みそに俺が言うことをたたきこめ」
私が文句を言おうと、ギルトの方を見た瞬間、真っ赤な瞳が私を据えた。
うわ、すっげえ怖い。なにこれ、何プレイ? これ乙女ゲームじゃなくてホラーゲームだったの?
「う、うい、了解しやした……」
迫力に負けてそう言葉を発してしまった。
ここで否定しなかったことを私は後に後悔することになるのだろうか。まぁ、そんなことを思ってももう遅い。
「俺の標的になっただけでも有難く思え。他の雑魚悪魔達に餌食になるよりよっぽど光栄なことだ」
「え~、それはどうなんだろう。他の雑魚ならまだ私が叩きのめすことが……、はい、黙ります。続きをおっしゃってください」
うひょ~~。物凄い形相で睨まれた。いや、人の話の途中で口出しした私も悪かったけどさ、そんなに圧力で私を潰そうとしなくても良いじゃん。
「俺が飽きるまで俺から逃げられない。逃げたらどこまでも追いかけてやるからな」
俺様発言過ぎて逆に尊敬するわ。
「返事は?」
「そんな熱く語ってもらってるところ申し訳ないんだけど、私、毎日学校来るか分からないよ?」
なんたって元廃人だし。
学校に来なけりゃ会うこともない。勿論、行かないことがバレた場合の母を想像すると猛烈に怖いが、学校行くフリして部屋に戻ることは不可能な事ではない。
その時はベラに協力してもらおう。彼女と手を組んだのだ。何とかなるだろう。
「……お前、曲がりなりにも天使なんだろ?」
「いや、大分天使だし。つか、滅茶苦茶天使だし!」
「なら学校来いよ。つかぜってえ来い。家に行くぞ」
「天使だからって理由で学校行かなきゃならんのはおかしいし。家にきたけりゃどうぞ。居留守使うけど」
「お前本当に天使かよ。……つか、まず、家に行ったら絶対喧嘩になるだろ」
急に呆れたように軽くため息をつきながらギルトはそう言った。




