先輩のアジテーション2
#2「ポッキモン達はどう生きるか」
ある日、先輩はコイチと2人で庭球をしていた。
コイチは先輩の後輩にあたる男で、何かしらの創作を仕事にして食べていきたいと思っている。コイチは本名ではない(イントネーションはライチと同じ)。マイナーな苗字を親から継いでいる。
「先輩、昨日渡した僕が書いた小説もう読みましたか?」
「読んだ。ここ数年の産業アニメ(注:アートとしてではなく商品として量産される毒にも薬にもならないアニメーションの事)のような良くできたシナリオだ」
フィフティーンラヴ。
「だが地の文の状況描写に魅力を感じないな。本気で小説家になろうマンなら、まず競馬実況やプロレス実況でもして鍛えるべきだ」
サーティラヴ。
「なるほど。自分の頭の中で思い浮かべているあれやこれやを100%文章にするというのは難しいものですね。あ、先輩見て下さいメタグロスですよ」
バスキンロビンス。
テニスコートの外をやせいのメタグロスが闊歩している。厳選という人間のエゴで野生化した最終進化が溢れ近年問題になっているのだ。カイリューもいるぞ。
「コイチよ。ポケモン程の影響力のあるコンテンツならば、ポケモン愛護団体なんかが存在してもおかしくない。もし存在するなら、彼らは人間に飼育され戦わされるポケモンたちの現状を良く思わないだろう(自分たちも人間なのにね)。膨れ上がった彼らの主張はついに任天堂を動かし、ポケモン達はゲットもバトルもさせられなくなる。暴力的な描写は一切規制され不思議のダンジョンも廃止。『人間がポケモン達の生息域に侵し、撮影するのはポケモン達の生活の妨げになる』としてポケモンスナップも糾弾される。そうした連鎖でついにはポケモンシリーズは消滅し、ポケモン愛護団体は自らの愛ゆえにコンテンツを滅ぼした罪を背負い続け、居場所を失ったトレーナー達はモンハンの世界へと移住していくのだ」
「世も末ですね」
「その通り。この世は世も末で溢れている。終末時計のように世界は末の中を彷徨い続けているのではないだろうか」
やがて、どこかの世界の昔々の遠い未来で先輩の言う「愛護団体」とその顛末は現実となった。愛護団体の創始者は赤色の猫と半目の白い犬の二匹だったそうな。ゲームは悪い文明だニャン!
以上