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内定先は、転生課。

作者: ハルカ カズラ


「あーはいはい、じゃあ君の転生先は村の入口に立ってる人ね。はい、受領しましたー!」


「え? 気に入らない? じゃあ、次の企画会議で提案してみますので、それまでその辺を彷徨っててもらっていいですか? その代わり、一切の干渉と感情を変化させないで下さいよ。お願いしますね」


 ずっとずっと、憧れていた仕事に内定が決まったのは、昨年の冬頃。私はやりたいことが見つからない奴だった。周りの学友連中は、とりあえずどこかに内定すればいんじゃね? 的なことを言いまくっていた。やりたいことがなくても内定取っとけば、辞めたとしても自分を見つめ直せることが出来るらしい。


 だが私には、密かに憧れている仕事があった。それは転生を生業としている職業だった。かつて、この世を終えた方はイイ人と悪い人に振り分けられていた。それはとてつもなく偉い方が、事細かく下していた仕事だった。その偉い方が、自分の下してきたことを引き継ぎたくなったということで、職業としてこの世に与えてくれてしまった。


 ただし、この世に生のある誰もが内定をもらえるわけでは無くて、条件として決められているのは他人の転生先を一つ決めてあげる代わりに、寿命が減っちゃいますよ的な軽いノリだったこと。結局のところ、ただの人間には他人の転生先を決めるだけの命の力は備わっていないというのが、偉い人のお言葉。


 転生先を一つ決めてあげちゃうけど、その度に寿命が減り続けて最後には結局、自分も誰かに転生先を決められてしまうというのが、この仕事の欠点。それでも、みんなが勇者になりたいわけじゃないらしくそれなら、いっそのこと企画会議で転生先を決めてあげようじゃないか。という軽いノリのお仕事。


「えー、では次の議題に移ります。現在、村人Aを拒否している方の転生先についてですが、私はこの方の意思を尊重しまして、黒幕の片腕と呼ばれる異能力者Bにしてあげたいと思うのですが、いかがですか?」


「ふむ……それならば納得してくれるだろう。しかし、またすぐに転生課に申し込みをしてくるのではないかな?」


「何故でしょうか?」


「黒幕は簡単には姿を見せないし、やられはしないが……片腕は自分をアピールするのが仕事だ。故に、やられる確率も高いのだよ。たとえ、異能の力を持っていても、上には上がいるからね。もしかしたら黒幕そのものにもやられてしまうかもしれない。そうなっては、転生しても長くは持たない可能性が高いよ」


「そ、そうですか。ですが、とりあえず転生先が内定ということで先方にもお伝えしておきます。私の担当は以上です」


「ふむ。では、次回の企画では転生先の選択肢を広げるか否かを話し合うとしよう」


 そんな会議を終えて、担当の方に転生先を伝えるととりあえずは納得をして頂けました。でもなるべくなら、すぐにやられて欲しくないなと思うのが本音なのですけど。


 そして今日も、誰かが転生課に申し込みをして来ました。やりがいはありますけど、私の寿命がいつ尽きるのかは分からないんですよね。


「はい、こちらは転生課です! あなたの希望の転生先はどちらでしょうか?」

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