やめて欲しいけどやめないで
私の名前は│月宮輝夜。とある高校に通う〝普通〟の高校生だ。
私は今、心から好きな人がいる。
「月宮先輩、急がないと次の授業に遅れますよ?」
この子が私の想い人である同じクラスの│星空ひかり。
年齢は私の一つ年下で長い黒髪が特徴の私より少し小柄な子だ。
彼女は中学の時からの後輩で、一目見た瞬間からその可愛過ぎる容姿に惚れてしまい、なんとか仲良くなろうと試みたのだが、部活、委員会などの接点が無く、話せないまま私が卒業してしまい、│儚くも断念せざるを得なかった。
だが、高校で訳あって私が留年し、たまたま同じ学校に彼女が入学し、こうして同じ学年になったので接点ができた。
「えぇ? ひかりちゃんと一緒にいれるなら欠席で良いよぉ! えへへ」
「気持ち悪い笑い声を出さないでください」
しかし、何度話しても彼女は私に冷たく対応する。
話すことはできても、それ以上の進展は中々踏み出せないままでいる。
「そんなぁ! 冷たいよぉ!」
「遅刻しても、知りませんからね」
そう言うと彼女は急いで教室を出ていった。
「なんで私の想いが伝わらないのかなぁ……」
これまで色々なアプローチはしてきた。
例えば、何度も何度も話しかけ、時には抱きついたり、手を│繋いだり、驚かしたり、ということを散々してきたが、全て無駄に終わっていた。
ただ、先輩としか思われていないのか?
それとも、彼女は私の事を嫌っているのか?
彼女を好きになってからのもの、何故かわからないが心臓を│抉る《えぐ》ような痛みを感じるようになった。
数ヶ月後、私はいつものように彼女に話しかけていた。
「ひーかりちゃん!」
「――いつもいつもしつこいですね。そんなに私に話しかけて何かメリットでもあるんですか?」
「私が楽しい!」
「それだけなら話かけないでください」
「それだけじゃないよぉ! ただ純粋に仲良くなりたいだけだよ!」
「――本当は?」
「叶うなら付き合えればなぁって……えへへ」
「はぁ……冗談は顔だけにしていただけないですか?」
「酷いよ!?」
「それに、何処が純粋ですか? 充分不純だと思いますけど」
「純粋だよ! 純粋に愛し合いたいの!」
「――そうやって私をからかうのはやめてください」
「からかってないよ!」
「からかってるじゃないですか!」
「!?」
彼女の唐突な怒号に私はビクッと背筋を震わした。
「――もう、話しかけないでください。それでは」
私は呆然と彼女が逃げていくのを見届けた。
嫌われた。絶対に嫌われた。今まで話してたと思っていたのは私の一方的なもので、彼女はそれを望んでいなかったのではないのか。次からはもう、話すことはできないのではないか。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
私はそう、重たい感情を抱きながら、目から溢れでる涙を拭うこともできず、ただ急いで、│帰路につく事しかできなかった。
それから│暫くの間、彼女と話すことができない過酷な生活を送った。
私は喋らない方が良い。そう、呪いにかかるように黙りながらずっと、ずっと彼女を想っていた。
――――
「ていう内容で作りたいんだけど、どうかな?」
「どうかな? じゃないですよ!」
「絶対面白いのに……」
あれから七年の時が経ち、私達は多少なりと成長し、それぞれ違う職業に就いた。
だが、幸いな事に一緒にいることができている。
「事実の内容書いてどうするんですか!」
「だってぇ……」
「だってじゃないです! そもそも話が進展してないじゃないですか!」
「それ以上書いたら面白みが消えるじゃんかぁ」
「それに! 文法も│口説いですし起承転結の転結は何処に行ったんですか!?」
「短編だし要らないんじゃない?」
「い! り! ま! す!」
「そうしたらひかりちゃん絶対ボロクソに言うじゃんかぁ……」
「当然でしょ!? もう! 月宮〝先生〟はいつもそうやって私をからかうんですから!」
昔は〝先輩〟と呼んでいた彼女は今となっては〝先生〟と呼んでくる。
「可愛いからつい……ね?」
「ね? じゃないですよ! いつも〝先生〟の作品は編集長に通すのに苦労するんですからね!?」
「つまり、それ程面白いってことかな?」
「違います! 実話だからです!」
「リアリティ欲しいじゃんかぁ……」
「ラノベにリアリティは邪道です!それでもライトノベル作家なんですか!?」
ライトノベル作家と編集者。
互いの職は違えど、関係は変わらない。
「リアリティ物のラノベだってちゃんとあるよぉ……」
「先生にはまだ早いです! それに、今まではまだ事実でも捻っていたから無理矢理通せましたけど、流石に今回はそういきません!」
「ひかりちゃんのケチぃ……」
「先生が何も捻りを加えずに実名まで使うからでしょ!?」
「えぇ……」
「兎に角! 全文書き直してください!」
「そこまで言う!?」
「当然でしょ!?」
「理由は?」
「さっき全部言いましたよね!?」
ん? と心中に疑問符を浮かべ、少しからかうように彼女に問う。
「本当は?」
「私が嫌だからです!」
やはりか、と。
優勢にたったことを確信し、白々しい笑みを浮かべる。
「なんで嫌なの?」
「そんな話出すわけには行かないでしょ!?」
「私は出したいけどなぁ……」
「なんでですか!? 可笑しいですよ!?」
「だって嬉しかったもん。嫌われてたと思ったら実は私の事がすきだったなんて……きゃっ」
「恥ずかしい事を言わないでください!」
「まさか同性愛が駄目な事と思っていたとは思わなかったよぉ」
「そんなこと言ってません!」
「告白してきた時とかもう……」
「していないです!」
「そんな……あの時の言葉は嘘だというの……?」
「嘘じゃないです! …………あっ」
「ほほう」
失言をし、慌てふためきまるで林檎のように真っ赤にした顔を見て、ニヤリとイヤらしい笑みを浮かべるのを隠しきれなかった。
「ち、ちが! 嘘です! 嘘! 全部嘘です!」
「そっか……それなら、もう終わりかn」
「やめてください!」
私の言葉を遮り、今にも泣きそうな顔をして訴えてくる。
「どうしたの?」
│悪戯心を抑えきれない表情で彼女に問う。
「ず、ずっと……一緒に……いてくだ……さい」
彼女を一生幸せにしよう。
そう、心に誓った。
初めまして!白米湊です!
初めて完成した文を投稿するのは良いのですが、なんか、こう、緊張するものがありますね()
お見苦しい点がございますが最後まで見ていただき幸いです。
今回は短編に挑戦してみましたが、次は長編に挑戦してみたいですね。
それまでにはスキルをあげて望みたいです!
それでは最初なのでここで締めさせていただきます。
ここまでお読みいただき誠にありがとうございました!