rebellion
この作品はフィクションです。
自分が自分でなくなる。
生きながらの死。
それを受け容れる。
生きる本質よりも、穏やかな一生を。
「………つまらないですねぇ。」
揃いも揃って同じ顔をした警備兵の群れを前に、自然と口の端が上がっていることに気付く。
侮蔑か嘲笑か。
相手に対してのものか、それとも自分へのものか。
なんにせよ、
「つまらないものは破壊しなきゃ。ねぇ?」
両手に構えた連射式の改造ショットガンが、断続的に発射音を響かせた。
人間が、「理想」を手に入れた世界。
世界から銃声が消え、悲鳴や怒号が消え、差別も憎しみも消え。
世界は笑顔に包まれていた。
争いの無い、「理想」の世界。
「つまらない。」
そんな世界を、切って捨てる男。
「世界がそれを受け入れたとしても、自分は嫌ですねぇ。何も考えず、疑わず、気にも留めずに死んでいく人生なんて。」
国際指名手配犯。
「みんなみんな、作られた笑顔貼り付けて、上辺だけの会話して、かすり傷の1つも無く日々を過ごしていく。いやはや、綺麗な世の中だ。あまりに綺麗で虫酸が走る。」
世界各国にある、重要な施設を破壊して回っている。
「馬鹿に見えているんでしょうねぇ、自分は。けどね?自分から見りゃ、世界の方が余程愚かに見えるんですよ。機械の言いなりになって、人生全部決めてもらって、それに何の疑問も抱かない、抱けない、今の世界の方が。」
それは、人間を管理するための、重要な施設。
「ピエロですよ。人間を取り戻す、なんて、思ってもいない建前の仮面をかぶって、世界に刃向かう。それが、自分ですから。実際には、ただの私怨。大義や信念なんてありませんねぇ。」
後悔は、無い。
「迷いは全部捨ててきましたから。あと、愛情とかも。」
目の前に、血を流し横たわる、最愛の人。
彼女の笑顔を見たい。それだけだった。
それだけで、幸せだった。
けど、その幸せは、
世界に、奪われた。
「だから自分は、世界に反逆するんですよ。」
目の前に転がる警備兵たちの残骸を尻目に、男は施設の中へと入っていく。
10分後、
轟音と共に、施設内で爆発が起こった。
「まぁまぁ、でしたかねぇ。」
涼しい顔で出てくる男。
「これで、ここいらの人間は管理から解放されるでしょ。その後そいつらがどうなるかは、知ったこっちゃありませんけどね。」
自分はただ、
「自分が自分でいられる場所を奪った世界を、ぶっ壊したいだけですから。」
彼女の笑顔と共に生きていたかっただけ。
「さぁて、」
けど、それは最早叶わない。叶わないなら、自分に生きる意味は無い。意味が無いなら…、
「次、次。」
…けど。それをしてしまっては、今の無意味な世界と同じ。
ならば、欺いてやろう。自分自身を。生きる意味があると、目的があると。
「いきますか、ね。」
世界を破壊し尽くすか、自分が潰されるか。結末を迎える、最後の最後まで。
2017年7月
大好きだったバンドが解散しました。
COLOR COLOR CLOWN
そのバンドの楽曲の一つに、「rebellion」という曲があります。
自己満足、ではありますが、
COLOR COLOR CLOWNの生み出した楽曲が、確かに存在したことを遺すために、楽曲タイトルを小説タイトルにお借りして、小説を書きました。
自分の出来る形で、自分の出来ることを。そうしたいと、思いました。