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籠手

 その後も暫く俺とティエンさんは話を続け、現状の確認をしたが、それ程変わった所は無かった。

 ティエンさんの話では、お祖父ちゃんの武器や防具は四天王が武器化・鎧化した物らしい。

 今は修理の為に、魔大陸にある迷宮『コキュートス』の奥深くに潜っているという事だ。

 しかし魔王城を突破されては困るのでお祖父ちゃんとお祖母ちゃんには戻って貰わないといけない。

 お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも武器や鎧が無くてもそこそこ強いし、勇者以外の相手なら問題無いだろうから大丈夫だろう。


 それから勇者達に対抗する為に、真衣に魔導具を作ってもらう事にした。

 スキルを無効化出来る魔導具があった方がいいだろうという事になったからだ。

 隼人達のスキルはかなり厄介だし、時間制限がある事は分かっていても再使用までの時間――所謂リキャストタイム等が不明という問題が残っている。

 今までは再使用するまでも無く敵が一掃されていたせいで、リキャストタイムの情報を得られなかったらしい。

 一度耐えたから安全という訳では無いのだ。

 俺にとっては隼人と六花のスキルは今さら大した脅威にならないけどね。

 必ずしも俺が闘うとは限らないので、対策は万全にという事だ。


「あとクアトロ王国の宰相が前の勇者から催眠術の手解きを受けていた疑いがあります。そいつを幽閉するなりしないと、魔導具が有ってもまた同じ事が起きてしまうかもしれません」

 俺が深刻な顔で報告すると、ティエンさんも真っ直ぐな瞳で見つめ返して頷いた。

「そうか、たしかアストア宰相と言ったか。それは捕らえられたら組織の方で何とかしよう。世界の為には他にも何人か幽閉する必要がある人物がいる。きっと今回の進軍に参加していると思うので、ヤクモ、君の方で捕らえる事が出来たら連れて来て欲しい」

「良いですけど、勇者の相手が最優先ですよ」

「分かっている。因みにその人物とはアイン王国のウィリディス侯爵と、エッセル共和国のテスタ代表だ」

「名前聞いただけじゃ分からないですよ」

「君達が前線に出たら隠密の者を付けるから大丈夫だ」

 ティエンさんに頼まれてやる事が増えた俺は、一応メモに記述しておいた。


 一、勇者――隼人達を説得して元の世界に返す。催眠術に掛かってたら解いてやる。

 二、クアトロ王国の宰相、アイン王国の侯爵、エッセル共和国の代表を捕まえる。

 三、氷の女王等催眠術に掛かった人達を魔導具で元に戻す。


 大まかに分けるとこんな処か。

 いや、その前に真衣の所に行って魔導具を作って貰わないと。

 それからお祖父ちゃんとお祖母ちゃんを魔王城に送って、レーチェを連れて来て美紀叔母さん達と合流する。

 何か凄く忙しいな。

 あ、そうだ。

「ティエンさん、魔法石を幾つか分けて欲しいんだけど。魔導具を作るのに必要だから」

「分かった。倉庫に案内させよう」

 ティエンさんが両手を叩くと何処からともなく黒装束の男が現れる。

 さっきと同じ人かは分からなかったが、敵対的な反応は見せなかったので素直に倉庫まで案内して貰う事にした。


 土壁で造られた倉庫は日本風の蔵に近い造りで、中は乾燥している様で少し埃っぽくて薄暗かった。

 倉庫の奥に山積みされた木造の箱を、黒装束の男が確認する様に調べていく。

「此方です」

 両手で抱えるのがやっとという位の箱をズルズルと引きずり出して埃を払う。

 男が箱を開けると、そこには大小様々で色取り取りの魔法石が所狭しと詰まっていた。

「すげぇいっぱい有るけど、どれ位持って行ってもいいんですか?」

「首領からは、持てるだけ持たせて良いと言われています」

 黒装束さん、持てるだけって両手に持てる程度だと思ってます?

 そんな事言うと、空間収納あるから倉庫ごと貰っちゃうよ?

 取りあえず魔法石の入った箱をそのまま空間収納に入れてみる。

「えっ!?」

 突然目の前の箱が消えた事に黒装束の男は目を白黒させる。

 何かの魔法を使ったと理解した様で直ぐに冷静さを取り戻すが、丸ごと持って行く事に納得出来なさそうな微妙な表情を浮かべていた。

「いや、使わない分は後で戻しますから」

 どの魔法石が必要かは真衣に聞かないと分からないから、出来るだけ多くの種類を持ってく必要があるんだよ。

 黒装束の人は訝しんでるけど、無視しとこう。

 さて戻ろうかと思って振り返ると、美紅と美緒が倉庫の中をごそごそと漁っていた。

「何か色々あるね」

「これ何かな?」

「おい、お前ら勝手にあれこれ触るなよ」

 俺の注意も聞かずに妹達は積み上げられた箱の中から何かを取り出す。

 美紅と美緒が手にしたのは2対の白い籠手の様なもの。

「あぁっ!それは高価な物です!直ぐに戻してくださいっ!!」

 黒装束の男が叫んだのとほぼ同時に、その籠手が美紅と美緒それぞれの両腕に装着された。

「「何これ?勝手に腕に」」

 そして白い輝きを放った後、美紅の籠手は黄色に、美緒の籠手は青に変色した。

 その光景を見た黒装束の男は驚愕に眼を見開く。

「で、伝説の籠手が主を選んだ……」

 ええ~?そんなご都合主義漫画みたいな展開が、こんなどうでも良さそうな倉庫で起こるの~?

 黒装束さんが伝説のとか言ってるけど、なんでそんな大層な物が蔵の奥で眠ってるんだよ。

 そしてそれを引き当ててしまう妹達の強運。

 俺大分強くなった筈なのに、また妹達のチートの前で霞むのか……。

 いや、俺も新しい力を得ている。

 ドラゴンの鎧に魔力を通せば更なるパワーアップが可能になる筈なんだ!

 そう、ドラゴンの鎧……。

 ドラゴン……?

 あ、そういえばドラゴンも家に忘れて来てたわ。


「美紅、美緒。それ返しなさい」

 俺が言うより早く二人は腕を押さえて蹲る。

「「くっ!私の右(左)腕が力を解放しろと囁く……」」

「中二病っぽい事言っても駄目だからな」

「「え~!」」

 諦めない妹達は、茫然自失している黒装束の男に詰め寄る。

「「ねぇ忍者のお兄さん、これ持って行っても良いでしょ?私達を主と認めたんだから」」

「は……あ、いや。私には判断出来ませんので首領に聞いて頂かないと」

 頭巾を被ってても困り顔なのが分かる程目が泳いでいる黒装束の人。

 案内してくれただけなんだから、そんな許可を簡単に出せないよね。


 そして、ティエンさんに聞いてみた処、

「別に良いぞ。どうせ誰も使えなかった物だから、倉庫に置いててゴミになるより良いだろ」

 だそうだ。

 伝説の籠手の扱い非道ぇ……。

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