親友
申し訳ありません、1日空いてしまいました。
話の流れを見直したり、誤字脱字の校正したりしてると毎日は大変なので1日置きぐらいの更新になるかもしれません。
なるべく間が空かないように頑張ります。
マリアさんとハルナが部屋を出ていった後、俺は一旦元の世界に空間転移した。
転移した場所は学校の教室の中。
家には戻らずに学校へ転移したのは、異世界を何日か探索するために友達の家に泊まるという嘘の連絡を入れるためだ。
ホントの事言っても信じてもらえないだろうし、変な心配かけたくないからな。
電話口で妹達が「「私達を遊びに連れてけ~!!」」と騒いでいたが、無視しておこう。
電話を切って教室の窓から外を見ると、体操服を着た生徒達が部活をしていた。
人が居なそうなところを選んで転移したけど、休日でも部活やってる人がいるんだった。
迂闊だったな、見られてなければいいけど。
そう思った矢先に、教室の戸を開けて2人の生徒が入ってきた。
俺が驚いて目を見開いてしまったのは、訳あって距離を置いてる奴らだったからだ。
――俺の元親友、蘭 和馬と榊 隼人。
「あれ、ヤクモじゃん」
「どうした?部活入ったのか?」
2人も驚いたようで、それを隠そうともせずに話しかけてくる。
「……いや、ちょっと忘れ物しただけだ」
普段は他にも人がいるから俺が距離を置いても不自然じゃないが、3人だけの空間でそれをするのは気まずいな。
沈黙がその場を支配していたのは、ほんの数秒。
だが、気性がやや荒い和馬をイラつかせるには充分な時間だったようだ。
「また、そんな態度かよ!」
ビクリと反射的に俺は肩を揺らす。
二年前から距離を置くようになった俺に、ずっとイラついていることは良く知っている。
でも、親友であるが故に近づけなかった。
あの女の存在が俺達を遠ざける。
それを隼人と和馬に言う訳にはいかないのが歯痒い。
「ごめん……」
としか言えなかった。
「八雲。何があったか知らないが、いつか話してくれよ」
今にも俺に殴りかからんとしている和馬を止めつつ、優しく俺に言う隼人。
やっぱ、いい奴だな。
和馬も、俺を思って言ってくれてるのは分かってる。
だからこそ、二年前の事は絶対に言えないんだ。
「じゃあ俺、用があるから」
そう言って俺は教室を後にして、誰もいないことを確認すると空間転移で異世界に戻った。
教会の隠し部屋に戻った俺は、落ち込んだ気分を払拭するために毛布に包まって横になっていた。
こうしてると少しずつ落ち着いてくるんだ。
まだ日は完全に落ちきっていないので眠るには早かったが、このまま寝てしまうのもいいかと思った。
その時、扉を開けてハルナが夕食を持ってきてくれたので、俺は起き上がった。
「ああ、夕食持ってきてくれたんだ。ありがとう、ハルナ」
御礼を言った瞬間、ハルナの頬が少し赤くなり一言呟いた。
「呼び捨て……」
ああっ、やべぇ!?呼び捨てとか、俺なんかがダメだよね!
「ご、ごめんなさい。ハルナさんっ!」
「いいえっ!ハルナと呼び捨てにして下さいっ!!」
えええ!?意味が分からん!
いや、まぁ本人がそう言うのなら……何か企んでないよね?
俺のハルナに対する疑惑が更に深まると共に、あまりの可愛さに全てを許そうとする自分との葛藤も増していく。
「私、呼び捨てで呼ばれるのに憧れてましたから」
益々分からん。
何を言っているのやらこの娘は。
すげえ可愛い。
「いや、ハルナがそれでいいのなら。じゃあ俺のことも呼び捨てでいいよ」
「はい、ヤクモ」
そう言ってにっこりと笑った美少女は、夕日に赤髪を淡く橙色に染め直し、神々しい女神のようだった。
俺は直視できなくなり顔を背けて、ハルナが持ってきてくれた夕食の方を見た。
夕食のメニューは、パンと野菜サラダとスープだ。
さっきの事もあるので、ハルナは夕食をテーブルに置いてくれた。
あの召喚した美少女とは別人だと分かってはいるが、また発作がでるかもしれないしな。
あ、そうだ。
「それから、ハルナ。俺の事は誰にも喋らないでほしいんだけど」
姉に話したりしたら、返還したはずの人間がいると騒ぎになっちゃうからな。
まだしばらくはこの異世界を堪能したいし。
できれば、この美少女だらけの世界で彼女をゲットしたい!
ってことで一応口止めしとかないと。
「はい、分かりました。変装してまで正体を隠そうとしていたのですから、余程の事情がおありなのでしょう。口外はしません」
左程の事情も無いんだけどね。
ハルナが出て行った後で夕食を取り、早めに就寝した。
一応照明みたいな魔導具があると説明は受けたんだけど、人の家だと電気代とか気になってあまり使えなかった。
翌早朝、マリアさんに御礼を言って早々に町を後にした。
ハルナには会えなかったのが残念だが、どうせまた来るし問題ないだろう。
早起きでテンションが上がっている俺は近くの森に向かい、自分の力を試してみることにした。
既に朝日が昇っているので、森の中はもう暗くはない。
しばらく歩いていると、俺よりちょっと背が低い、耳と鼻が尖った肌が青いモンスターがいた。
これ、ゴブリンだな。
俺の視界に入っているのは3匹。
俺はナイフを抜いて、ゆっくりとゴブリン達に近づいた。
「ギャギャッ!」
1匹が俺に気付いて声を上げたので、地面を蹴って一気に間合いを詰める。
ナイフにスキル『強化剣』を付与。
そのままナイフを真横に振り抜くと、ゴブリンの胴体が真っ二つになって崩れ落ちた。
一瞬で接近を許したゴブリン達は、慌てて臨戦態勢をとろうと武器を構えるが、俺が悠長に待ってやる理由もない。
次のゴブリンに向けてファイアボールを放ち、最後の1匹へ向けて跳躍する。
二匹目のゴブリンは炎に包まれてあっさり絶命した。
残ったゴブリンが棍棒のようなものを振り回したが、俺にはスローモーションに見えるので軽く躱す。
そしてスキル『強化拳』を発動し、アッパーぎみにちょっと本気で殴ってみた。
すると、ゴブリンに俺の拳が当たったと思った瞬間、ゴブリンの腹部がはじけ飛んで30cm強の穴が空いてしまった。
勿論ゴブリンは白目を向いて絶命していた。
「あぶねぇ。昨日本気で殴ってたら彼奴ら殺しちゃってたな。手加減してよかった」
町の近くにいるモンスターなんて大した経験値も入らないだろうと思ってステータスを見ると、レベルが上がっていた。
【名前】橘 八雲
【レベル】2
【HP】782/782
【MP】559/574
【腕力】586
【敏捷】429
【魔力】654
【職業】返還者×5
【スキル】
他言語理解 空間転移 空間収納 魔眼
偽装 危険予知 強化剣 強化拳
ファイアボールLV1 情報開示 ヒールLV1
あんまりステータス変わってない。
最後の召喚時のステータスがチート過ぎたからなぁ。
これじゃレベル上げ面白くないな。
クソゲーじゃん。
よしRPGじゃなく、美少女ゲーと割り切っていこう。
そうしよう。
それはいいとして、まずはやっておかなければならないことから片づけよう。
最後に召喚された場所で、正式に返還してもらう。
今後も自由気ままに異世界ライフを楽しむためにも重要なことだ。
そのためにはあの白髪の美少女に会って事情を説明しないとなんだが、さてどうしよう?
とりあえず、あそこ寒かったから家に戻って服とってくるか。