表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/106

3人

 窓の外には桜が完全に散った枝が見えている。

 連休は終わり学校が始まったが、俺は全く授業に身が入らなかった。

 上の空で学校と家を行き来するだけの生活。

 ルルとミーシャには、学校がある日は異世界に行かない事を了承して貰っている。

 しかし、妹達は夜だけでも行くべきだと言って俺を責めたが、俺は色々理由を付けて週末まで異世界には行かないと宣言した。

 結果、妹達とは冷戦状態。


 美紀叔母さんが異世界に残った事を母さんに告げると、

「あら、嫁の貰い手があったの?良かったわ」

 と呑気な事を言っていた。

 合気道の道場の方は、妹達が叔母さんの代わりに生徒を指導していた。

 叔母さんがこのまま異世界に嫁いだら、道場は妹達が継ぐのだろうか?


 異世界での出来事が嘘の様に、何事も無い平穏な日々が過ぎていった。

 俺は、その違和感に気付かないまま週末の授業を受けていた。


 そして放課後、俺は何故か担任の先生に声を掛けられて生徒指導室に向かう事になった。

 俺、何かしたっけ?

 ルルとミーシャは同意の上で連れて来てるから、誘拐にはなってない筈。

 あとは身に覚えの無い事案でも発生したか?

 まったく、ブサイクには生き辛い世の中だぜ。

 ノックをして生徒指導室に入ると、担任の先生の他に髪の長い中年の女性も椅子に座って此方を見ていた。

 確か隣のクラスの担任だったか?

 受け持って貰ってる授業も無いから話した事も無いし、顔を知っている程度の先生だ。

 何故此処に居るんだろう?

「あの、俺は何で呼び出されたんでしょうか?」

 率直に疑問を投げかけると、二人の先生は真剣な眼差しを俺に向けた。

「橘君。既に知ってると思うけど、さかき 隼人はやと君とあららぎ 和馬かずま君とひいらぎ 六花りっかさんが行方不明になっている件で君を呼んだんだ。君は彼等と同じ中学校で交友関係も有ったらしいからね」

「え……!?」

 今何て言った?

 行方不明?

 ……そういえば何時もは彼奴らを避ける為に気を配っていたけど、今週はぼーっとしてたのに妙に平和だったもんな。

 薄い記憶を辿ると、確かにあの二人の席は空いてた気がする。

 六花は別クラスだから分からないけど。

「何か知っていたら、何でも良いから教えてくれない?」

 女の先生が縋る様に聞いてきた。

 そうか、この先生六花のクラスの担任か。

 そんな事言われても、俺はあいつらが行方不明だなんて初耳だし、最近では全くと言っていい程会話もしていない。

 いや、連休中に一度接触は有ったが、大した話はしてなかったと思う。

「すいません、何も聞いてないです」

「そうか……」

 先生は残念そうに俯いて視線を落とした。

 話さなくなったとは言っても、元親友だから何が起きたのか気にはなる。

「先生、三人が行方不明になった経緯を聞いてもいいですか?俺の方でも探してみますから」

 俺の言葉に、先生は困惑した様な表情を浮かべた。

「え?君は誰かから詳細を聞いていなかったのか?」

「はい……。最近は特に交流も無かったので」

「そうか……。正直私も信じられないんだがな。周りにいた生徒達が何人も目撃しているから事実なんだろうが」

 何とも奥歯に物が挟まる様な言い方に若干イラっとするが、先生の話の続きを黙って聞く事にする。

「連休の最終日、部活動の最中に突然消えたらしい」

「はい?」

「突然目の前から、フッと3人の姿が消えたと言うんだ。何かのトリックだとは思うんだが、警察も手がかりが掴めなくて、保護者にも説明しようがない。それでゴタゴタしていて生徒達に事情を聞くのが遅くなってしまったんだ」

 それじゃあ、消えてからもう5日も経ってるのか?

 食料とかの問題があったら、もう手遅れかも知れないじゃないか。

 空間転移で行った事のある場所をしらみつぶしに探してみるか?

 いや、俺だから分かる。この世界にいるとは限らないって事が。

 異世界が存在する以上、突然消えるという現象も起こりうる。

 っていうか、まさかと思うが異世界召喚とかされてないよな?

 俺が行き来してる異世界は、次に勇者召喚できるまで一年掛かるらしいから違うだろう。

 別の異世界が存在していて、そこに召喚されたとか。

 無いって言い切れないな。

 俺が行った事が無い世界じゃ空間転移出来ないから助けられない。

 もっとも、そうと決まった訳じゃないけど。

 そもそも手掛かりが全く無いんじゃ探しようが無いか。

「橘君、何か気付いた事があったら教えてね」

「分かりました。知人にも連絡を入れてみます」

 女の先生はとても疲れた顔で俺を見送った。

 中学校の時の仲間とかに聞いてみるか。


 家に帰って中学校の時の仲間に連絡を入れてみると、「今頃何言ってんだ?」と言われてしまった。

 皆とっくに知っていたらしい。

 ハルナの事でショックを受けてて無意識に生活してたから、そんな大事件が起こってるなんて知らなかったんだよ。

 結局誰に聞いても何も知らないという事だったので、俺は諦めて異世界に行く準備を始めた。

 お祖母ちゃんと賢者の石へのお土産の本と、お祖父ちゃんと妙に敵対的な四天王に賄賂として有名店のケーキを持って行く。

 組織の方に顔を出すとハルナに会ってしまいそうだし、今日は魔王城にだけ顔を出す事にしよう。

 美紅と美緒は行くって言うかな?

 まだ道場から帰ってないし、とりあえず俺一人で行こう。

 あ、レッドドラゴン――レドも連れて行くか。

 彼奴が鎧になって装着されないと、外気功使えないからな。

 だが、レドを連れて行くと言ったら、ルルとミーシャが涙目で無言の訴えをしてきたので置いていく事にした。

 そんなド変態を何故そこまで気に入ったんだ?


 しょうが無いので俺一人で空間転移する。

 一瞬で景色が変わり、魔王城の中庭に出た。

 一週間近く経つのに、先の戦闘で崩れた壁等はそのままになっていて廃墟の様だ。

 片付けろよ。

 そして、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは誰かと激しい攻防を繰り広げていた。

 ええ~、戦闘中の所に出ちゃった!?

 俺は直ぐに物陰に隠れて、魔法が飛び交っている戦闘の様子を覗う。

 もう勇者は居ないのに、誰が魔王城まで攻め込んで来たんだ?

 相手は3人。

 お祖父ちゃんとお祖母ちゃんは無勢なせいか、ちょっと押され気味だ。

 そういえば、賢者の石に蓄えてた魔力殆ど使っちゃったんだっけ?

 しょうが無いな、加勢してやるか。

 そう思って一歩踏み出した所で、俺は改めて敵対している3人を見た。

 一人は全身を青いフルプレートアーマーで覆っていて、ロールプレイングゲームに出て来る『ザ・勇者』って感じの男。

 一人は黄色いハーフプレートアーマーを纏い、魔法も織り交ぜながら剣を振り回す『魔法剣士』タイプの男。

 一人はピンク色のローブを纏った、若干痛い感じの『魔法使い』っぽい女。

 っていうか、あれって……。

「隼人と和馬と六花!?」

 行方不明になってたはずの3人だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ