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勇者のパーティ

 俺は直ぐさま魔導兵器に駆け寄る。

 中に捕らわれたハルナに危険が及ばないよう慎重に頭部を破壊しなければならないので、気を調節した拳を魔導兵器のガラスと金属の繋ぎ目に何度も叩き込んだ。

 美紅と美緒も同様に反対側から拳で殴る。

 何度かガンガンと殴っていると、繋ぎ目がバキッと音を立てて壊れた。

「ハルナ!」

「「ハルナちゃん!」」

 俺は龍型魔導兵器の頭部のガラス部分を慎重に外し、中でぐったりとして気を失っているハルナを妹達が引きずり出した。

 呼吸はしているが、意識が無い。

 俺は血の気が引くのも構わず、ハルナに近付いて回復魔法を使う。

 しかしハルナの顔色は青ざめたままで、回復魔法の効果は無い様だった。

 俺の魔法じゃダメだ。

「レーチェ!早く来てくれ!」

「分かってるよ~」

 俺の呼び掛けに応えて、下半身ずぶ濡れの妖精がフラフラと飛んでくる。

「レーチェ、お前まさかまた漏ら……」

「さぁ、回復魔法掛けるよ~!高度回復ハイヒールっ!」

 誤魔化しやがった。

 まぁ、今はそれどころじゃないし、どうでもいいわ。

 レーチェが回復魔法を発動すると、白い光りがハルナの全身を包み込む。

 頬に赤みが戻り、顔色は良くなっていく。

 意識まではまだ戻らないが、恐らく大丈夫だろう。


 安堵した次の瞬間、俺は突然後ろから迫る殺気を感じた。

 ハルナに気を取られて、振り返るのが一瞬遅れる。

 俺の背後に大剣が接近してくるのが見え、俺は体を捻って躱そうとした。

 しかし、即座にその判断が間違っている事を悟る。

 俺が避けたらハルナが危ない!

 体制を立て直している時間は無いし、先程の勇者の攻撃でダメージを負っている鎧が持つか分からないが、体で受け止めるしか無い。

 そう判断した俺は全身に気を込めるが、大剣は俺に届く前に突然割り込んで来た黒い影によって払い除けられた。

「無事か、ヤクモ!?」

 俺と大剣の間に割って入った大きな黒い毛皮がハードボイルドな声で俺に話しかける。

「危なかったけど、助かったよラルド」

 俺が礼を言うと、筋肉で盛り上がった体の上の渋い黒豹の顔が僅かに微笑んだ。

 笑顔を見せてくれたんだろうけど、近くで見ると捕食されそうで怖いわ。

 応援を呼んでから駆けつけてくれる迄が遅すぎるけど、助けて貰ったしチャラにしてやろう。


 先程俺に攻撃を仕掛けて来た大剣を持った女。

 ラルドに攻撃を弾かれて、体制を立て直す為に距離を取った様だが、何か様子がおかしい。

「き、貴様は……ラルド!」

 え?知り合いなの?

 そんな話はラルドから聞いて無かったけど。

 そう思ってラルドの方を見ると、ラルドも目を見開いて驚いている様だった。

「グラディア……なのか?」

 グラディアってあの大剣の女の名前かな?

「ラルド。この裏切り者が!」

「待て、グラディア!何を言っている!?」

「私は貴様を斬る為に技を磨いて来た。ここで剣の錆にしてくれる!」

 大剣を振りかぶったグラディアはラルドに向かって突進した。

 ラルドは籠手部分で剣を払いながら、なんとか大剣の女を止めようと試みる。

「グラディア、何があったんだ!?どういう事か説明してくれ!」

「問答無用!」

 この世界の人達ってどうして人の話聞かないんだろう?

 脳の細胞も筋肉繊維で出来てるんだろうな、きっと。

 この大剣を持つ女はラルドに任せる事にして、俺は勇者を捕縛しとくか。

 勇者――紅林雄人を自由にしてるのは、危険過ぎる気がするからな。


 俺が勇者に近付くと、また新たな殺気が俺に向かって来るのを感じた。

 白猫の獣人。

「にゃしゃああああ!!」

 先程の大剣を持つ女には不意を突かれたが、今回は気を張っていたし危険予知で完全に動きを捕らえている。

 そして、二人目の応援が来ている事も分かっている。

 白猫の爪を伸ばした手は、気功で強化された女性の拳で弾き飛ばされた。

「八雲、その鎧のセンスはどうかと思うわよ」

「いや、俺もこのダサい鎧は早く脱ぎたいんだけど、呪われてて外れないんだ」

『ふふふ、ご主人様と私の絆の如く、強く結び付いてますから』

 美紀叔母さんに言われる迄も無く、この鎧が恥ずかしい格好だって分かってるよ。

 それから、レッドドラゴンとの絆の如くであれば、簡単に外せる筈なんだが?

 そんな疑問を抱いている間に、美紀叔母さんは一瞬で白猫の獣人を無力化して腕を取り地面に押し付けた。

「は、放せ~!」

 あの白猫の獣人だって充分に達人なのに、美紀叔母さんの手に掛かれば借りてきた白猫。

 叔母さんなら勇者も簡単に倒せたんじゃないだろうか?

「この程度の相手に苦戦して、私達を応援に呼んだの?」

「いや、全員既に倒してたんだけど、時間が経って復活して来たんだよ」

 美紀叔母さんに応えていて、そういえばもう一人いた事を思い出し、其方に視線を向ける。

 案の定、大魔導士アレアも目を覚ましていて、詠唱を開始していた。

 しょうがない、アレアは俺がやっとくか……と思った処で俺は手を下ろした。

 アレアは詠唱を終えて、魔法を発動――出来なかった。

「え?ど、どうしてっ!?」

 焦燥に満ちた顔でアレアはもう一度詠唱する。

 しかし、何度やってもアレアの魔法が発動する事は無かった。

 俺が上空に浮いている金色の美少女(老女?)に視線を移すと、アレアもそれに気付き上を見上げる。

「ノ、ノヴァ!……くっ!」

「小娘の癖に、私を呼び捨てにするな」

 お祖母ちゃんが賢者の石を使ってこの辺一体の魔力を消したようだ。

 これで勇者達も無力化されるだろうから、もう安心だな。

 そう思った時、お祖母ちゃんが瓦礫に埋もれて倒れているお祖父ちゃんを発見して、眉間に皺を寄せた。

「アランをやった奴は誰だ?生きてこの場から出れると思うなよ」

 絶対零度の冷ややかな声で大魔導士ノヴァは呟いた。

 よし、逃げよう。

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