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 手から腕を覆う赤い籠手は炎を象り、肩から胸に掛けて動きを阻害しないように赤い胸当てが輝く。

 脛当ては重々しい厚みがあるがそれ程重量を感じない。

 鎧とは言っても、武闘家向けの軽鎧と言った感じか。

 そして何故か腰周り――特に股間が必要以上に守られている。

 人間の弱い部分を守るって言っても、股間部分が重厚すぎて恥ずかしいわ!

「おい、着ないっつったろ!早く離れろ……って、と、取れねぇ?何だこれ、呪われてんのか!?」

 赤い鎧を外そうと強めに引っ張ってみるが、体に食い込んでいるかの様にピクリとも動かない。

 俺の意志で脱げないとか、完全に呪いの防具じゃねーか!

『ふふふ、ご主人様と一心同体。もう離れません!』

「離れろー!!」

 俺の叫びは空しく木霊するだけだった。

「茶番は終わったか?」

 勇者が突然目の前に迫り、剣を振りかざしていた。

 振り下ろされる剣を無意識に手甲部分で受け止める。

「ぐっ!ん?」

 痛いと思ったのは錯覚で、勇者の剣は赤い籠手に阻まれて俺の皮膚にすら届いていなかった。

 元々がドラゴンだから相当硬い鎧みたいだ。

『ああんっ!気持ちいい!』

「変な声出すんじゃねぇ!」

 この変態ドラゴンじゃなければ、強い装備を拒む理由は無いんだが。

 いや、股間部分のデザインが悪いからやっぱ嫌だな。


 勇者は俺の鎧を驚異と見たのか、眼から余裕が消えた様に見える。

 相変わらず口元は下卑た笑いを作っているが。

 目にも止まらぬ速さで、勇者は次々に攻撃を繰り出す。

 俺は危険予知と気功による気配察知で何とか攻撃を躱していく。

 やはり外気功を使わないと、勝てそうにないな。

 俺は後方へ跳び勇者と距離を取ると、叔母さんに教えて貰った外気功を今一度試してみる事にした。

 自然体で下腹に力を込め、体の気穴を解放して外との繋がりを感じる。

 すると先程と違い、魔力を取り込んだ時の様に気を取り込むのに成功した。

 何故だ?さっきと何が違うんだろう?

 ……まさか、この鎧の御陰?

 解せぬ!というか、この変態ドラゴンの御陰かと思うと癪に障る。

 きっといつの間にか俺がパワーアップしてたんだ。

 そうに違いない。

 俺は外気功で拳を強化して勇者に向かって構える。

 地面を蹴って一瞬で間合いを詰め、勇者に向かって気を込めた拳を突き出した。

 思った以上に威力が出て少しバランスを崩してしまい、勇者の肩を掠めただけだったが、全く反応出来なかった勇者の顔が強ばる。

「ちっ、まだそんな力を残しているのか!」

 残してたって言うか、外から力を取り込んだんだけどね。

 敵に詳しく説明する必要も無いので、無視して次の攻撃を繰り出す。

 回し蹴り、正拳突き等々、連続して勇者に向けて放つと、勇者は剣を引いて盾で防御する体制に変える。

 かなり頑強な盾で俺の攻撃は尽く弾かれるが、衝撃は伝わっている様で少しずつ勇者は後ろへ下がっていった。

 でもこれじゃあ何時まで経っても倒せないな。

 態と隙を作って誘うか?

 いや、正統な武術の訓練を受けてない俺にそんな高度な駆け引きなんて出来ない。

 攻撃のバリエーションを増やして相手に隙を作らせる方が良いだろう。

 俺は横へ跳び、無詠唱で『千氷柱サウザンド・ピラー』を勇者に向けて放つ。

 無数の氷柱が牙の如く勇者に噛みつく。

 しかし、勇者は剣を回転させて氷柱を全て粉砕した。

 魔法を放ったと同時に勇者の背後に回っていた俺は、勇者の背中目掛けて正拳突きを繰り出す。

「とった!」

 しかし、咄嗟に反応した勇者は体を捻って躱し、振り向きざまに剣で斬り付けてきた。

 俺はそれを左にステップして躱す。

 仮にも勇者だけあって、中々やるな。

 と思ったが、よく見ると勇者は肩で息をしており、先程までの黄金の輝きが少し薄れて来ていた。

 俺と闘う前にお祖父ちゃんと闘って、かなり削られたんだろうな。

「限界が近い様だ。一気に決めさせて貰おう」

 そう言った勇者は魔力を増大させる。

 完全に俺の方が押してると思うんだが、ハルナの事もあるし一気に決めたいのは此方も同じだ。

 俺は外気功で目一杯体に気を取り込む。

 そして右拳にここぞとばかりに気を込める。

 次の一撃が最後になるだろう。

 俺と勇者の気と魔力の高まりに呼応して大地が震えた。

「うおおおおおっ!」

 勇者が叫び、剣に魔力を込めて俺に向かって斬りかかってきた。

 全身全霊を込めた一撃だろう。

 恐らく、如何に鎧が頑強であろうとも受け止めれば只では済まない。

 俺は剣が振り下ろされる瞬間を狙って、勇者の懐に踏み込む。


――一瞬の交錯。


 光りが俺達二人を包み込む様にして、弾けた。

 勇者の剣は赤い鎧を砕き、俺の左肩口を僅かに斬って止まっていた。

 そして俺の右拳は勇者の鳩尾に深々と突き刺さり、勇者の意識を刈り取っていた。

 白目を向いて気絶した勇者はその場にズルズルと崩れ落ちる様に倒れた。

「「やった!お兄ちゃん、凄い!!」」

 ふふん、もっと褒め称えてもいいんだぞ。

『さすがご主人様です。私の最も感じる部分で攻撃を受けて頂けるなんて。尻がヒートアップし過ぎて気絶しそうです!』

 黙れ変態。

 って言うか、左肩部分に尻が来てるのかよ!けっこう顔に近いな!

 最悪だ。早く脱ぎたい、これ。

 でも、これの御陰で外気功が使えてるんだとしたら、まだ脱ぐ訳にはいかない。

 俺は妹達の攻撃でボロボロになっている魔導兵器を睨む。


 性懲りも無く口に魔力を充填して俺を狙っているが、勇者の攻撃すらも防いだ鎧にそんな程度の攻撃効く訳ないだろ。

 俺は先程の要領で外の気を集めて右拳に集中させる。

 美紀叔母さんがやったみたいにすると中にいるハルナが危険だ。

 一点を貫くイメージで核を砕かなければならない。

 魔眼で魔力が集中している場所は見えていた。

 龍型の頭部の顎の下、逆鱗に当たる部分――あそこだけ魔力の流れが違う。

 俺が魔導兵器に向かって跳躍すると、魔導兵器は口に貯めた魔力を一気に放出する。

 だが遅い。

 俺の拳から放たれた凝縮された気の閃光が下顎から喉元までを打ち抜いた。

 轟音が響き、砕けた魔導兵器の破片が魔王城の中庭に飛び散る。

 魔導兵器の眼から光が失われ、沈黙した銀色の龍は眠りにつく様に地に伏した。

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