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 高速で飛来した赤い物体の叫びに、戦闘状態にあった勇者は剣を引き、その場から飛び退いた。

 しかし、勇者と相対していた八雲は、上空から迫るそれの気配を全く感じていないかの様に立ち尽くしていた。

『ご主人様!会いたかった~!!』

 隕石の様に突っ込んで来た赤い塊――レッドドラゴンは無防備な八雲に対して全体重を掛けて押し倒した。

「ぐっ!」

 黒いオーラに包まれている為に潰れる事はなかったが、それでも数メートルある巨体が上にのし掛かって来たので、八雲は身動きが取れずに苦しそうにもがいた。

 勇者の目にも止まらない攻撃にさえ反応していた八雲が、何故かレッドドラゴンの巨体を躱す事は出来なかった。

 原因は、無意識下でも八雲がスキルを発動したままだった事だ。

 『魔眼』と『危険予知』が発動していたため、自身に敵対的意志を表したものには自動的に攻撃を加えていた。

 四天王の三人や勇者は明確な敵意を示していたし、美紅と美緒も目を覚まさせる為とはいえ強めの攻撃を放とうとしていたので、八雲はこれらを攻撃対象と見なした。

 しかし従魔として契約し、絶対的な友好を示すレッドドラゴンは危険予知で緑に表示されている為、敵と認識されなかったのである。

 結果、八雲は反応出来ないまま押しつぶされてしまった。

「「チャンスが巡ってきた!」」

 美紅と美緒は文字通り天から降って来た幸運を逃すまいと、押しつぶされている八雲の元へ跳んだ。

「「師匠みたいに邪気を吹き飛ばす事はまだ出来ないから、これで勘弁してね、お兄ちゃん!!」」

 そしてその勢いのまま、思い切り気を込めた拳を八雲の顔面に向けて突き出した。

「ぶふっ!」

 左右から放たれた拳撃に乗っていた気は、八雲の体に纏わり付いていた黒いオーラを吹き飛ばし、そのまま拳は八雲の顔面に突き刺さった。

 邪悪な気配は消し飛んだが、そのまま白目をむいて動かなくなる八雲。

「やばい、やり過ぎた?」

「だ、大丈夫じゃないかな?」

 力の加減を誤った美紅と美緒はこめかみから一筋の汗を流していた。




―――――




「見知らぬ天井……が無い?空?って、重っ!!」

 目を覚ました俺の上に、何故か永遠に放置した筈のレッドドラゴンが乗っていた。

 ってか、重いから早くどけよ!

 俺が睨むと、レッドドラゴンは頬を染めてゆっくりと体を起こした。

 なんで皮膚が赤いのに頬が染まったって分かるのか不思議だ。

「「お兄ちゃん、大丈夫!?」」

 美紅と美緒が心配そうに俺の顔を覗き込む。

 何が起こったんだ?

 確か魔力を取り込んで、黒い感情が膨れ上がって……ハルナ!

 魔導兵器に捕らわれたハルナを見た気がする!

 俺は辺りを見回す。

 少し離れた所で剣を構える勇者。何で髪が金色に光ってるんだ?

 倒れている勇者のパーティ。そういえば、闘ってたはずの四天王の姿が無い。逃げたの?

 離れた所で瓦礫に埋もれているお祖父ちゃん。何か装備が変わってる?

 そして、ぎこちない動作で口に魔力を溜めている魔導兵器の頭部に、捕らわれたハルナの姿を見つけた。

 やっぱりあれは夢じゃなかった。

 俺が怒りを込めて勇者を睨むと、左右の腕を美紅と美緒に掴まれる。

「お兄ちゃん、怒りに呑まれちゃダメ!やられキャラになっちゃうよ!」

「お兄ちゃん、闇落ちしちゃダメ!お兄ちゃんじゃ無理があるよ!」

「何を言ってるか分からんが、何故か凄くムカつく」

「「何でもいいから、とにかく魔力を吸収しちゃダメ!」」

 なんで妹達が必死になって止めてるのか分からんが、何か理由があるんだろうし取りあえず聞き入れとくか。

 それにしても、お祖父ちゃんを倒せるって事は相当な実力を秘めてるんだな、勇者。

 そう思って倒れているお祖父ちゃんに視線を移すと、

「「お祖父ちゃんをやったのはお兄ちゃんだからね」」

「は?何で?」

 妹達から鋭いツッコミを受ける。

 無意識のうちに何かやらかしてしまったのか?

 疑問だらけの俺に向けて、勇者が嘆息した。

「なんだよ、つまらないな。もう正気に戻ったなんて。俺の暗示じゃ、やっぱりちょっと弱いのか。彼女の様には行かないな」

 ブツブツと独り言を呟く勇者。

 彼女って誰の事だ?

 暗示?

 氷の女王リリィやミーシャの所の騎士風のおっさんに掛けたのは、やはり催眠術か何かか。

 魔法の力を使わない方法でやったのなら、この世界の人達に原因を突き止める事は出来ないだろうな。

 魔導兵器が気功に対応していない様に、未知の技への対処は難しい。

 やっぱり賢者の石ぐらいのチート能力を使わないと解けないって事なのか?

 まぁそれは勇者を倒して聞き出す事にしよう。

「アランさんが倒れているから、俺が勇者と闘うしか無いか。美紅、美緒、魔導兵器の方は任せたぞ」

「「うん、分かった」」

 とは言ったものの、魔力を吸い込むのは妹達に止められてるから、正式な外気功を使わないとだ。

 行き成り勇者相手に本番って大丈夫かな?

 いや、考えてる暇は無い。


 俺が勇者に向かって身構えると、レッドドラゴンが俺の傍らに寄って来た。

『ご主人様、私をお使いください』

「うん、分かった。じゃあ盾になって攻撃全部受けろ」

『なんというご褒美!!……じゃなくて、盾ではなく鎧としてお使い下さい』

「は?言ってる意味が分からないんだが?」

『ご主人様からの放置プレイのご褒美の後、ノヴァ様から四天王が魔大陸の迷宮『コキュートス』で修行をしていると聞き、ご主人様の為に私もパワーアップする必要があると思い迷宮へ向かいました。そして私も迷宮を攻略し、コキュートス最下層の川の水を飲む事で新たな力を得たのです。それが『鎧化』です。私の体を頑強な鎧へと変化させる事が出来ますので、それを纏って闘って下さい』

「うん、やだ」

『何でですかー!?』

「いや、だってお前ドMの変態だし。なんか着たくないわ」

『ご主人様が何と言われようと、主の身を守るのが従魔の務めです。ご主人様の攻撃を私が肩代わりして受ける。ハァハァ、考えただけで興奮します!』

「……絶対着ないからな」

 俺の言葉に目を細めたレッドドラゴンは、口角を吊り上げて突然赤く光り出した。

 眩い閃光に俺は目を開けるのも困難だった。

 光は塊となって俺の体に纏わり付く。

 やがて光は収まり、赤い鎧が俺の体の各所を覆って具現化された。

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