味方
援軍らしき三人の四天王。
三人とも魔族とは思えない容姿――魔王であるお祖父ちゃん同様、肌はベージュで普通に人間みたいだ。
右の人は赤髪に切れ長のちょっとキツめな赤眼をした美女。
レイン程では無いが、出るとこは出ていてスタイル抜群だ。
真ん中の人は細身で長身、青いサラサラヘアーのイケメン。
瞳も青で、シュッとした顔立ちが女受け良さそう。
左の人は三人の中で一番体が大きく、筋肉質で無骨そうな印象だ。
しかし黄色い短髪が妙に似合っていて、顔立ちはモテそうに見える。
側近が美男美女過ぎて、お祖父ちゃんは魔王なのに引き立て役みたいだ。
なんだか、いたたまれない気持ちになるな。
跪いてる四天王の一人、赤髪の美女が俺に視線を投げかける。
綺麗な瞳で見つめられてちょっとドキっとしてしまった。
「魔王様、此度の敵はあのブサイクな奴でありますか?」
あれれ~、おっかしいぞ~。
心が綺麗な人にはブサイクに見えないはずだよね~?
綺麗な顔してても魔王軍の四天王だから魂は汚れてるのかな?
「いや、彼は違うよ。君達の後ろにいる勇者一行が敵さ。それと、ブサイクは非道いんじゃないかな~?」
「申し訳ありません。私にとっては魔王様以外の者など、全てブサイクですので」
お祖父ちゃんがフォローしてくれたけど、この美女全然謝る気無いし。
しかも、俺達は敵じゃ無いってお祖父ちゃんが言ったのに、危険予知は相変わらず敵対的な赤を示してるし。
何なのかな、この人達。
この三人には寝首を掻かれない様に注意を払って置かないとだな。
でも、これで人数的には何とかなったか。
「僕と四天王で勇者一行の相手をするから、ヤクモ、ミク、ミオは三人であの金属のドラゴンをお願いするよ」
お祖父ちゃんは四天王と共に勇者に向かって駆け出した。
「分かったよ、アランさん」
俺が魔導兵器に向き直ると、龍の顎が大きく開き、口の奥で強大な魔力が渦を巻いた。
いきなりあんなヤバそうな攻撃繰り出すのかよ?
と思った瞬間、魔導兵器の顎を下から二つの影が蹴り上げた。
衝撃で上を向いた龍の口から、炎が天に向かって吹き出される。
「おぉ、さすが妹達。さすいもだな」
「「お兄ちゃん、それダサいからやめて」」
美紅と美緒はそのまま龍の首にもう一撃加えてその反動で此方に戻ってきた。
芋は確かにダサいイメージだから、やめてやるか。
取りあえず、妹達の攻撃が通じてるって事は耐気功加工なんかはされてないって事だよな。
不安要素は、俺がいまいち外気功をうまく使えないって事か。
内気功だけじゃ息切れしちゃうから、何とか外気功を使えるようにならないと。
しかし、何でエッセル共和国の魔導兵器みたいに周りの魔力を吸わないんだろう?
ひょっとしてアレアに魔法を使わせるために、その機能を停止してるのか?
それならこっちも魔法が使い放題だ。
俺は雷の魔法を魔導兵器に向かって放った。
「サンダーストーム!!」
雷が渦を巻く様に龍の喉元を直撃する。
しかし、魔法は魔導兵器に何のダメージも与える事無くかき消えた。
あ、そうか。
魔力は吸収しなくても、耐魔法加工で魔法によるダメージは通さないのか。
って事は、基本的に魔力は身体強化に充てるしか無いと。
魔導兵器はやっぱり物理攻撃で倒すしか無さそうだな。
再び口の中に魔力の渦を作り始めた龍型魔導兵器は、明らかに俺に向かって顎を広げる。
さっき攻撃した美紅と美緒には目もくれていないのは何故だ?
まさか、俺個人を攻撃目標に設定されてる?
まぁ、あの勇者ならやりかねないか。
「美紅、美緒。お前達はこいつの胴体を攻撃しろ。頭部は俺を狙って来てるから、こっちで引き付ける」
「「うん、分かった!」」
妹達が左右から掛けだして龍の胴体へ攻撃を始めた。
そして俺は身体強化で思い切り跳躍し、龍の攻撃が地上に向かない様に誘導する。
高周波の様な音を発して龍の口に魔力が集まって行き、今度は雷の様な電撃砲が俺に向かって放出された。
避けきれないと判断した俺は、無詠唱でサンダーストームを放ち魔法で相殺する。
俺と龍の間で稲妻がぶつかり合って弾け飛んだ。
「うぉっ!ちょっと圧され気味か?」
舞空で空中に留まりつつ、俺は次の攻撃を警戒する。
高速移動が可能な『舞空』だが、初速は地上で地面を蹴る程では無い。
空中で攻撃を避けるのは難しいが、地上に降りて攻撃を躱すとお祖父ちゃん達まで巻き込んでしまう可能性がある。
取りあえず的を絞らせない様に舞空で高速移動しつつ攻撃してみようか。
と思った瞬間、突然下方から炎の魔法が飛んで来たので、慌てて無詠唱の魔法で相殺する。
「ちょっ、危ねぇ!こっちに攻撃飛んで来たんだけど!?」
俺が攻撃された方を確認すると、射線上にはアレアと対峙している四天王の一人、青髪で長身のイケメンが。
「我が主様へ向けた攻撃で無いならば態々防ぐ意味も無い」
ご立派な忠誠心にむかっ腹が止まらないぜ。
やっぱりこいつら、味方だと思って安心出来ないな。
というか、こいつらにとって俺達は『敵』では無くなっただけで『味方』になった訳じゃないんだろうな。
そこら辺ちゃんと説明してくれよ、お祖父ちゃん。
他の二人、赤髪の美女は大剣を持つ剣士と、黄髪で大柄な男は白猫の獣人とそれぞれ闘っていた。
どう見てもミスマッチな対峙ばかりなんだが、それで勝てるの四天王?
一応お祖父ちゃんは予想以上に勇者と渡り合えていたので一安心だ。
あっちはあっちで頑張って貰おう。
問題なのはこっちだ。
美紅と美緒が攻撃をしている部分は、かなりダメージを与えてるようでボコボコに凹んでいる。
でもこの手の敵って頭を潰さないと倒せないよな。
妹達に頭部を攻撃させた方がいいのかも知れないが、それは兄の矜恃が許さない。
頑張って外気功使ってみるか。
初めは自然体で下腹に力を込め、体の気穴を解放して外との繋がりを感じる。
美紀叔母さんが言うにはこれで良いはずだけど、いまいち気を取り込めてる気がしないんだよな。
舞空で高速飛行して魔導兵器に的を絞らせない様にしながらだから、感覚が掴みづらいのかな?
初心者が闘いながら覚えるってのは無理があるか。
あ、そういえば妹達を異世界に連れて来た時に、外気功の要領で魔力を取り込んでたな。
魔力の流れなら魔眼で見えるからやり易いかも?
基本は一緒で魔力の流れを感じる様にっと……おお!何か魔力の方が感覚掴みやすいぞ。
これなら出来そうだ。
龍の頭の周りをグルグル回りながら体内に魔力を取り込んでいく。
よし、目一杯魔力を取り込んであの龍の頭吹き飛ばしてやる!
だが、意気込んで魔力を取り込み続けると、俺の中でドクンと何かが脈打った。




