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赤髪の美少女

ブクマありがとうございます。

 室内に入ってきた美少女と目が合う。

 今の俺は『偽装』のスキルを使って白髪碧眼になっているが顔立ちはそのままだ。

 元の姿を見たことがある人物なら「あれ?もしかして」と思う程度には分かってしまうだろう。

 しかし、赤髪の美少女は俺を見ても特におかしな反応を見せなかった。


『あんなブサイクを我が国の勇者だなんて、他国に宣言出来ないでしょ!』


 とまで言っていたのだから、今の俺が召喚された人物と同一だと気が付かなくても、拒絶するような反応をしてもいいはずだ。

 ん?でもよく見ると、なんか雰囲気が違う。

 目が少し垂れぎみで、前髪もちょっと短いような……。

「あの、どうかされましたか?」

 美少女が戸惑っているが、俺はじっと彼女を見つめる。

 容姿が俺の好みどストライクだからって、舐めるように見てたわけじゃないよ。

 いやホント……。

 それにしても似てるけど、違う人なのか?

 でも、かなり似てるし――どっちだ?

 俺が返還者だと気付いて何か仕掛けるつもりだとしたら厄介だ。

 こちらの情報を与えずに、なんとか相手の素性を探れれば。

「あ、食事を持ってきてくれたんですよね。ありがとうございます」

 不審がる美少女に、なるべく自然に礼を言っておく。

「はい。教会の食事なので質素で申し訳ありませんが。パンとチーズと果実です」

 美少女は、脇に抱えた籠からパンとチーズとりんごっぽい赤い果実を取り出した。

 危険予知は反応してないから、毒は入ってないみたいだな。

 栄養は空間収納に入ってる日本の食べ物があるから、別に気にしなくてえーよー。

 ……つっこみ不在だった。

 いつもなら俺の心のボケには妹達がつっこんでくれるんだが。

 いや、あいつらを連れてきたらもっと収拾がつかなくなるから、絶対に連れてきちゃダメだ。

「どうぞ」

 美少女がナプキンのような布に包んで食事を差し出したので、俺はそれを受け取るために手を出した。

 そして、わずかだが美少女の手に俺の手が触れてしまった。


 ――柔らかい――


 と思った瞬間、呼吸が止まる。  

 ……。

 ……いや……これ、過呼吸……っだ……!

「かはっ……!」

 ……意識すればするほど……呼吸が出来なくなるっ……!

「どうしましたっ!?」

 薄れゆく意識の中で、過去の忌まわしい言葉を思い出す。


『なんで私があんたなんかと?』


 そして俺は美少女が唱えた回復呪文の詠唱を聞きつつ、意識を失った。




 目を開けると、知らない天井……ではなく、さっき見た天井。

 俺は倒れたのか。

 感覚が戻り、ベッドの上で毛布が掛けられているのが分かった。

 とりあえず意識を失う前の記憶をたどる。

 ここ最近は出なかった発作がまた出てしまったんだな。

 昨日、今日と異性に近づきすぎた。

 迂闊だったなと思いながら体を起こした。

「気が付きましたか!?」

 俺は驚き、声のした方へ振り向くと、すぐ側で先程の美少女が椅子から立ち上がった。

「よかったです。突然倒れられたので、何かの呪いの類いかと」

 心配そうに詰め寄る美少女から身をよじって離れる。

「す、すいません。今はもう大丈夫ですからっ!」

 あまりの距離の近さに後ずさりながら応えた。


 確かにあれは呪いみたいなもんだ。

 時間が経てば、あるいは距離を置けば治ると思っていたけど、俺の心の奥底に未だに根付いている。

 昨日の拒絶ラッシュと、さっきの手が触れたことでフラッシュバックしてしまったのかもしれない。

 記憶は薄れても、心が忘れてくれないんだな。

 マリアさんとは手を繋いでも平気だったのに、拒絶された美少女に触れたのがトラウマを呼び起こす鍵になったのか。


 トントンとドアをノックする音がして、扉が開いた。

 入って来たのはマリアさんで、俺の方を驚いた表情で見ている。

「ど、どうしたんだ?大丈夫か?髪も目も黒くなっているぞ!」

 え?

 前髪を視界に入るように引っ張ってみる。

 俺の髪は偽装が解けて黒に戻っていた。

 やっべええええええええ!!

 意識を失ってスキルが解除された!?

 自分の魔力で掛けてるから、意識を失ったりすると解けちゃうのか!

「……あ、あうう……」

 元の姿に戻ったってことは、この美少女に返還者であることがバレているってことだ。

 どう誤魔化そうかと考えて美少女の方を向くと、何故か心配そうな顔でこちらを見ていた。

「先程倒れられた時に、髪の色が変わったんです。やはり何か呪いでも掛けられたのでは?」

 んん?何を言ってるんだ?

 とぼけているのだろうか?

 お互いに顔を知っているのに、何か企んでいるのか?

 いや、それならさっき二人きりの時に俺に追求してきていたはずだ。

 彼女の思惑が分からない以上、俺から下手な話は出来ない。

「何か事情があるなら話してくれないか?」

 マリアさんが心配そうに俺に話しかけてくれるが、この美少女の前で全て話していいものだろうか。

 そう思ってマリアさんから美少女の方に視線を移すと、マリアさんは笑って

「彼女のことは心配ないよ。人に秘密を漏らすような娘じゃない」

と俺に話すように促す。

 美少女は頷いているが、そういうことじゃないんだよね。

「訳あって変装していたんですが、俺のことを話す前にいくつか教えてほしいことがあります」

 俺は必死に頭を回転させて、この美少女に探りを入れつつ俺の能力を隠すように話を持って行くことにした。

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