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空間収納

「「なっ、なんて凄い女子力だっ!!」」

 おい妹達バカども、お前ら分かってて言ってるだろ。

 叔母さんも胸張ってドヤ顔してないで、バカにされてるって気付けよ。


 魔導兵器が破壊された事でスキルが使えるようになり、魔導兵器が立っていた付近から魔力が流れ出しているのが見えた。

 内包していた魔力が解放されたのだろう。

 とりあえず魔法とスキルが使えるようになったので一安心といったところか。

 俺はハルナの居場所を聞き出すために、ハゲ男の方へ足を向ける。

 ハゲ男は、叔母さんの女子力(物理)によって破壊された魔導兵器の残骸を見ながら「バ、バカな……」とか言って震えていた。


 魔力とスキルを封じる上に強力な装甲まで持っている兵器。

 この世界の中だけで言えば、ほぼ最強の存在だっただろう。

 ヘタをするとお祖母ちゃんでも不覚を取っていたかもしれない程の。

 妹達と叔母さんを連れて来てなかったら、かなりヤバかったと思う。


 ハゲ男へ向けて歩いていく途中で、魔導兵器の残された脚に目が止まる。

 これ、なんか勿体ないから空間収納に入れておこう。

 俺が触れると残骸は跡形も無く消え去ったかの様に、空間収納内へ移動した。

 その光景を見たハゲ男はさらに驚愕の表情を浮かべる。

「き、貴様らいったい何者だ……!?」

 何者と問われて応える訳が無い。

 ……。

 あ、叔母さんも応えない。

 ハゲにはホント興味無いんだな。

 選り好みしてる場合じゃないだろ、アラサー。


 俺が一歩一歩近付くとハゲ男は警戒を顕わにし、眉根を寄せて懐から杖らしき物を取り出した。

 あの杖怪しいけど、またスキル消されるとかだったら面倒だな。

 俺は空間転移でハゲ男の後ろへ回り、手刀で杖をたたき落とした。

「っ!いつの間に!?」

 ハゲ男が驚いてる隙に、脚で落ちた杖を踏みつつ空間収納に入れてみる。

 すると何故か杖が収納出来てしまった。

 落とした時点で所有権がハゲ男から離れた?

 いや、ひょっとして物に触れている間しか、俺の空間収納に対して所有権を主張出来ないのか?

 そういえば、最初に召喚された場所で拾った杖も誰かの所有物であろうに、簡単に空間収納に入れられたっけ。

 これ、悪用したら他人が触れてない物は何でも盗み放題だな。

 あんまり使う事の無かった能力だけど、ある意味一番危険な能力かもしれない。

 誘惑に俺の良心が負けないようにしなければ。

 とりあえず、せっかく手に入れた杖を使って交渉だ。

「この杖を返して欲しければ、ハルナの居場所を教えろ」

 なんか悪役みたいな言い回しになっちゃったけど、イザヨイみたいに頑なに話さない可能性もあるから、多少きつめの言い方でもしょうが無いよな。

「お兄ちゃん、それ悪人の台詞」

「うるさい、分かってるよ」

 美紅に言われるまでもなく理解してます。

 まぁ確かに、脅すのはちょっとやり過ぎか?

 ちゃんと答えたら杖は返してあげよう。

 ハゲ男はぐぬぬと顔を顰めながらも、打つ手が無いと見えて渋々言葉を発する。

「あの女は、勇者様が連れていった。恐らくはクアトロ王国へ向かったのだろう」

 クアトロ王国って確か、勇者――紅林くればやし 雄人ゆうとが召喚された国。

 あの国も一枚噛んでるのか?

 いくら勇者でも人を攫って来て無罪放免とは行かないはずだ。

 しかもハルナはアイン王国の王女。

 国の重鎮が裏で手を回しているとか、国家ぐるみで手を染めていなければ他国の王女を誘拐なんて出来るものじゃない。

 エッセル共和国だけかと思っていれば、クアトロ王国までそんな犯罪国家なのかよ?

 もっとも俺が見た限りじゃ、この世界の国はどこも一癖あって安全そうじゃ無かったけど。

 まさかと思うが、お祖母ちゃんが目を光らせてる魔大陸が一番安全だったりして?

 この世界の国家事情なんて知ったことじゃ無いが、俺が関わってきた人達に危害が及ぶのは見過ごせない。

 まぁ、それはハルナを救出してから考える事にしよう。


「教えたぞっ!つ、杖を返せ!」

 明らかに劣勢の癖に態度でかいな、このハゲ。

 そうだ、空間収納についてちょっと試したい事があったんだ。

 俺は杖を空間収納から取り出す際、杖に埋め込まれた魔石以外の部分をイメージして取り出してみた。

「お、予想通り出来た。ほらよ」

 空間収納したものを部分的に取り出す事に成功して、魔石は空間収納の中に入ったまま杖だけを取り出せた。

 これが出来るって事は、複雑な構造の物もバラバラに分解出来るって事だ。

 さっきの闘いもスキルが消されていなければ、魔導兵器を空間収納に入れて中核の部分だけ取り出す事で簡単に勝てていたのか。

 次回無機物と闘う時にやってみよう。

 生命体は収納出来るかやってみた事ないけど、グロい事になりそうだから止めとこうかな。


 魔石が抜けている事に気付いていないハゲ男は、俺が放り投げた杖を掴むと勝ち誇った様な笑顔を浮かべる。

「バカめ!この杖にもアンチ・スキルの力が備わっているのだ!」

 ハゲ男は意気揚々と杖を天に翳した。

 ……翳しただけだった。

 そりゃ魔石抜いてあるもん、何も起こらないよね。

 というか、さっきの戦いでスキル消した程度じゃ勝てないって学習しろよ。

 アンチ・スキル発動したって魔導兵器すら無い今、俺一人でも勝てるわ。

「な、何故何も起こらない……?っ、魔石が無い!?き、貴様ぁ!!」

 顔を真っ赤にして怒ってるハゲ男は、頭まで真っ赤になって茹で蛸みたいになっていた。

「ああ、魔石もいるのか?じゃあ、勇者――ユウトの目的についても教えてくれよ」

 あれ?なんか俺、かなり悪い奴みたいになってるな。

 ハルナがここに居ないという事でイライラし過ぎたか。

 まぁ、ハルナを攫ったこいつらが悪いんだから絶対に謝らないけどね。


 ところが、勇者の目的という言葉を聞いた瞬間、ハゲ男は急に冷静になる。

「あの方の考えている事など知らぬ。取引はしていたが、私は魔導兵器の開発さえ出来れば良かったのだからな。必要な物が手に入れば、それ以外に興味など無い」

 仲間って訳じゃないのか?

 一向に勇者の目的も見えて来ないし、何か靄が掛かった中で翻弄されている気がする。

 あ、勇者って言えば、

「この国で召喚した勇者はどこだ?」

 あの女勇者も一応助けないといけないんだった。

 あいつに頼んで、賢者の石の代用品を作って貰わないといけないし。

「あいつも勇者様に連れて行かれた」

 なんとなくそんな気がしてたが、やはり女勇者も連れて行かれたか。


 クアトロ王国に関しては情報が全く無い。

 一旦組織に戻って、ティエンさんに色々聞いて来よう。

 ハゲ男にバリアを解除させて、俺達は空間転移で組織へ向かった。

 魔石は迷惑料として貰っておいた。

 だって、返すって言ったの杖だけだし。

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