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城塞都市

 エッセル共和国の中心都市付近に来た俺達は、都市の手前で木の影に隠れながら唖然としていた。

 城塞都市とも呼べるそれは周りを高い塀で囲まれていて、入口であろう門は日中であるにも関わらず固く閉ざされている。

 複数人の衛兵達が門の前で整列している様は、正に軍事国家の中枢と呼ぶに相応しい配備だろう。

「正面から行くにしても、あの門を何とかしないと入れないだろうな」

「お兄ちゃん、魔法で壊しちゃえば?」

「門に魔方陣みたいなものが埋め込まれているみたいだから、多分魔法は効かないんじゃないか?その程度の防備はしてるだろ」

「じゃあ壁を乗り越えるしかないね」

「壁の上の方にバリアが張ってあるから、乗り越えても弾き返されると思うぞ」

「侵入出来る隙は無いってこと?」

「そうなるな」

 俺と妹達が頭を捻って考えていると、美紀叔母さんは俺達を子供扱いするように嘆息する。

「あなた達、常識に捕らわれ過ぎよ。付いて来なさい」

 そう言ってスタスタと森の中へ歩いて行く叔母さん。

 エッセル共和国の都市に侵入する術が思い付かないので、取りあえず自信あり気な叔母さんに付いて行くことにした。

 10分程森の中を歩いて出た先は、先程の城塞都市の裏手に当たる場所。

 しかしこちら側に門は無く、都市の正面で見た壁よりも更に高い城壁が築かれていた。

 見張りらしき人影は無いので、侵入するには持って来いの場所だろうけど、壁は高すぎるし壁の上にはやはりバリアが張られている。

 叔母さんの破魔の法でもあれだけ大規模に張ってあるバリアを破るのは不可能なはず。

 魔法のバリアは一部だけ弾き飛ばしても直ぐに周りのバリアが伸びて修復してしまうので、破るためにはバリア全体を吹き飛ばさなけらばならない。

 どうする気かと美紀叔母さんに視線を向けると、叔母さんは自然体で大きく息を吐き出し、体内の気を高めていた。


 『気穴』を開放して貰ったせいか、魔眼で気の流れも見えるようになっている。

 もっとも、こちらの世界で気を扱う達人なんていないと思うので、叔母さんや妹達の気の使い方を見て覚える程度しか使い道が無いが。


 叔母さんの気が通常時の5倍程に膨れ上がると、今度はその気を右手に集中させた。

 そして、城壁に向かって構えをとる。

「道が無い時は作ればいいのよ」

「え!?」

 言うが早いか、叔母さんは流れる水の様な綺麗な動作で拳を突き出して壁を殴った。

 魔眼で気の流れを追うと、叔母さんの右手に集中していた気は城壁の中へ吸い込まれる様に消え、そして弾ける。

「うおっ!!」

 ドオォンッ!!という轟音と共に壁が崩れ落ち、半径3m程の円形の穴が出来てしまった。

 穴の向こうには居住区らしい家々が立ち並び、道行く人々が驚愕の眼差しで此方を見ていた。

 それとは対照的に笑顔満面で得意気に鼻を鳴らす美紀叔母さん。

「城壁を高く作って衛兵を前方に固めているのだから、裏側から工作して侵入すれば手薄な所に出られるでしょ。慌てて前方から兵を寄越しても、隊列を組む暇は無いから各個殲滅出来るという作戦よ」

 うん、一見頭使ってる様だけど完全に力業だね。

 殲滅って言っちゃってるし、この脳筋BBA。

 ほらほら、もの凄い数の衛兵が駆けつけて来ちゃってるじゃないか。

「で、こっからはどうするんですか?」

「倒すよ?」

 何言ってるのあなた?みたいな顔で言うなよ叔母さん。

 当たり前じゃんみたいな顔すんな妹達。

 マジで全部殲滅する気なの?

 まぁ、戦闘になった時の為に連れて来た脳筋ガールズだから、しょうが無いのか。

 本当はもっと中枢に潜り込んでから、頭を叩く時だけ闘おうと思ってたんだが、侵入の初っぱなから戦闘って先が思いやられる。


 前方からやって来る衛兵達は俺達の姿を見つけると警戒を顕わにする。

 というか、俺達が通ってきた城壁の穴を見て驚愕してる感じ?

 きっと魔法防御とか何重にも掛けられてて、この世界の通常の方法では突破不可能なぐらいの城壁だったんだろうな。

 もっとも、元の世界でもこんな化物じみた事は普通の人には出来ないけどね。

「貴様ら何者だ!?」

 問われて応える訳が無い。

「私は橘美紀、三十五歳独身よ。現在夫募集中!さぁ、私に愛されたい人は前に出なさい!」

 応えんのかよ!

 そして結婚願望が強すぎるっ!

 敵にまで求婚するのは勘弁して下さい!!

 そんな美紀叔母さんを妹達は憐憫の眼差しで見つめている。

「お前ら、美紀さんを止めろよ」

「だって、最近の師匠は憐れ過ぎて」

「うん、もう敵でもいいから貰ってあげてほしい」

 激しく同意する処だが、今はそんな事言ってる場合じゃ無い。

 俺は街並みの向こう側、都市の中心にそびえ立つ城の様な建物を見つけた。

 あそこが中枢でハルナ達がいる場所じゃないだろうか?

 城壁の内側に入ってしまえば、『舞空』で飛んで彼処まで行けるはず。

「美紅、美緒、俺に掴まれ!」

「「うん!」」

 美紅と美緒が俺の腰に抱き付いたのを確認し、俺は美紀叔母さんの腰を抱えて舞空の魔法を発動する。

「え、ええ?ちょっ、う、浮いてる!?」

 美紀叔母さんの驚きは無視して、衛兵の追撃を躱す為に全速力で飛び上がった。

 上空に張られたバリアに触れない程度に高度を上げ、街並みを見下ろしながら俺達は都市の中心にある城らしき場所へ向かう。

 途中、地上から魔法や弓で攻撃されたが、下向きにバリアを張っていたので一切ダメージを負う事は無かった。

 でも、舞空は発動すると体が光るから、完全に俺達の居場所を教えてしまってるな。

 見下ろしてみると、俺達が目指している城へ向かって蟻の行進の様にワラワラと衛兵達が集まって来ている。

 厄介だな。

 ざっと見ても数万人はいるのではないだろうか?

 さすが軍事国家、兵の数が半端じゃない。

 しかし、幸いな事に城の周りに堀が掘られていて、四方に橋が架かっていた。

 あの橋から衛兵達は城へ入るんだろうから、あれを壊しておけば舞空の魔法でも無い限り追ってこれないだろう。

 俺は偽装で赤髪になり、ファイアボールを眼下の橋目掛けて四回撃ち込んだ。

 強めに魔力を込めたので、橋は見事に砕け散って次々に堀へと落ちていく。

 赤髪になった俺を見て美紀叔母さんが「八雲がグレた……」とか言ってたけど放置。

 俺達はなるべく衛兵の居ない城の敷地内へと着陸して、戦闘態勢を整えることにした。

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