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叔母さん

「誰が『おばさん』だあぁ!?」

 この人切れるポイントがお祖母ちゃんと一緒だ!

 それに、誰かに話し方が似てると思ったら、父さんに似てるんだ。

 間とか天然な処とか。

 とりあず、怒髪天を衝いているこの黒髪の女性を宥めないと。

「違いますって!侮蔑の言葉じゃなくて、血縁の関係性の確認ですっ!」

「ん?あぁ、そうか。ならいい……」

 一先ず落ち着いて座布団の上に座り直す女性。

「えっと、おば……お姉さんのお名前は?」

 呼び方に注意するのは面倒なので、名前聞いておかないとね。

「ああ、私はティエンと言う。ご主人様でも女王様でも好きに呼んでくれ」

 何、その呼び方のチョイス?何に成りたいの、この人?

 無視して普通に名前で呼ぶことにしよう。

「それでティエンさん、いいかげん用件を言ってください」

 俺の苛立ちにキョトンとした表情を見せたティエンさん。

「だから言ったぞ。兄上は元気か?と」

「え?用件ってそれ?」

「そうだが?」

 なんだ、組織の首領としての用件かと思って緊張してたけど、身内の様子が気になってたのか。

 まぁ、父さんがこの異世界から俺達の世界に来て20年以上経っている訳だから、心配する気持ちも分かる。

「父さんは元気にやってますよ。元気過ぎて、世界中を飛び回ってます。娘に会えないから時々ホームシックになって周りを困らせてるようですが」

「そうか、あの本ばかり読んでいた兄上が。時が経てば変わるものだな。母上にも教えてやるとしよう」

 俺には、ティエンさんの言葉に少し引っかかるものがあった。 

「お祖……ノヴァさんは、あまり父さんの事を気にしてない風でしたけど?」

「いや、人前で見せないだけだ。何より孫である君には弱い姿を見せたく無いだろうしな。実際は誰より、あの人が一番心配していた」

「そうなんですか」

「ああ。心配しすぎて賢者の石で異世界の情報を得ようとしていた。その時、偶然『アニメ』と言うものの電波を受信する事に成功して、兄上の事を忘れて夢中になってしまったがな。自身が大魔導士なので、魔法を使う少女の『アニメ』が特にお気に入りだった」

 お祖母ちゃんェ……。

 それであのコスプレか、なるほどね。

 父さん、アニメに負けてるよ……。

「さて、私の用件はそれだけだ」

「え?マジでそれだけですか?」

 何だか凄く拍子抜けしてしまい、魚が餌を貰う時の様に口を開けたまま固まってしまった。

「寧ろ、君の方が私に聞きたい事があるんじゃないか?」

 言われてみれば、確かにそうだ。

 組織の首領であり、魔王の娘――この人なら俺が抱いている数々の疑問に答えられるんじゃないだろうか?

「そうですね。ラルドに聞こうとする度に邪魔が入って、中々真実を知る機会を得られずモヤモヤしてたんです」

「ほう。で、何を聞きたい?」

「勇者召喚につ「大変ですっ!」いて……」

 また邪魔が入った!?

 勢い良く後ろの扉を開けて、黒装束の男が焦りを隠しもせずに飛び込んできた。

「何事だ?」

 ティエンさんはただ事では無いと即時に判断した様で、眼を細め低い声で報告を促す。

「イザヨイ様が離反しましたっ!」

 以外にも、その言葉にティエンさんは眉を少し動かしただけだった。

 まるでそうなる事が想定内であったかの様に。

 そして俺も特に驚きはしなかった。

 同じ組織内の人間にあれだけの敵意を向ける様な人だし、人の輪の中にいるのは不向きそうだからね。

「あまり驚かれないんですね」

「ああ、私が魔王の娘という事で心良く思わない者もいるのでね。組織も一枚岩じゃ無いという事さ」

 俺の問いに、少し悲しそうに此方を一瞥したティエンさんは直ぐに黒装束の人へと視線を戻す。

「それで、状況は?」

「アレアを捕縛から解き放つと共にハルナ様とレーチェを連れ去り、転移魔方陣を使って勇者の下へ向かったと思われます!」

「なんだってえええぇぇl!?」

 ティエンさんと黒装束の人のやり取りを横で聞いていた俺は、その内容に我を失う。

「ハ、ハルナが連れ去られた!?」

「ヤクモ、落ち着け」

 動揺する俺をティエンさんが冷静に制するが、俺の頭の中は混乱が渦を巻き過ぎて平静を保てない。

 何故彼奴はハルナを!?

 まさか、密かにハルナに想いを寄せていて、あんな事やこんな事をしようと?

「ぶっ殺す!」

「だから、落ち着けと言うとるだろ!」

「ぶこっ!」

 首筋にティエンさんの手刀をモロに食らった俺は漸く我に返る――というか、意識が飛びかけた。

「ハルナを連れ去ったのは、アイン王国への牽制が目的だろう。ハルナは王女だからな」

「え!?ハルナって王女様だったの!?」

 飛びかけた意識がティエンさんの一言で、驚きの余り一気に覚醒する。

 まぁ、あの天使の如き美しさなら、王女様と言われても全然違和感無いけど。

「って言うか、王国への牽制ならお姉さんである第一王女を攫うべきでしょ?」

 俺をブサイクと言ったハルナの姉なら、別にどうなってもいいもんね。

「対外的には第一王女のイリナに王位継承権がある事になっているが、内々にはイリナは不甲斐なさ過ぎるのでハルナに王位継承権を与える事になっている。脅すならハルナを狙う方が効果的だ。いや、或いは今回の件、第一王女派の侯爵が一枚噛んでるかもしれん」


 ハルナが王女なのに教会とかをウロウロ出来たのは組織に守られてたからなんだろう。

 しかし、今回は組織の中にいた事が裏目に出て、獅子身中の虫に攫われる結果になってしまった。

 ハルナを此処に連れてきた俺にも責任の一端はあるな。

「勇者の居場所なら知ってる。俺がハルナを助け出す!」

「我々も勇者がエッセル共和国にいると報告は受けている。だが、どうやって助け出すつもりだ?」

「そんなもん、ハルナにちょっかい掛ける奴なんて全て叩き潰すに決まってる!」

 あのクソ勇者はやっぱり俺にとって敵なんだろうな。

 踵を返して部屋を出る俺をティエンさんは引き留めようと立ち上がる。

「待て、ヤクモ!いかに大魔導士アレアを倒せると言っても、相手は勇者だ。それにエッセル共和国は軍事国家で戦力も相当なものだぞ。一人で何とか出来る相手ではない」

 その言葉に俺は首を振って応える。

 勇者なんかより遙かにチートな化物を召喚すればいいだけだ。

「かつてその国を滅ぼした勇者の血を引くバカ×2を連れてきますよ。たぶんお釣りがくるんじゃないかな?」

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