冒険のはじまり
感想ありがとうございます。
より良くなるよう精進します。
五度目の召喚(返還)を終えた俺はまたパワーアップしていた。
【名前】橘 八雲
【レベル】1
【HP】780/780
【MP】540/570
【腕力】585
【敏捷】428
【魔力】650
【職業】返還者×5
【スキル】他言語理解 空間転移 空間収納 魔眼 偽装 ★危険予知
何か異常な程ステータス上がってるけど、何で!?
新しいスキルは『危険予知』か、これまたチートな。
【危険予知】マップ上に危険度が高いものを表示する。また、直近の未来に危険が迫った時はアラートで知らせる。
これがあれば異世界でも安全だな。
いや、これが発動するようじゃ危険なのか?
それから一時間半待ってみたが、もう召喚はされなかった。
計五回召喚されるも、全て『クーリング・オフ』され、【職業】返還者×5。
いろんなラノベ呼んだけど、返還者なんて職業の奴いなかったぞ……。
最後のは自分で帰ってきたのに、歓迎されてなかったから×5になっちゃってんの?
まぁいいや。
明日から五連休だし異世界散策してみるか。
ちょっとだけ枕を涙で濡らし、明日に備えて就寝した。
翌日、俺はホームセンターで武器になりそうなものを探した。
バールの様な物は攻撃力高そうだけど異世界じゃ不自然だろうし、やっぱナイフあたりが妥当かな。
【武器】ナイフ(2,500円)
防具はスポーツショップで空手用のプロテクターを購入して、服の下に着込む。
ホントは防弾チョッキとかの方がいいんだけど高いから却下。
【防具】空手用プロテクター(4,000円)
装備はこんなもんでいいかな?
あとは食料を買い込んで、空間収納に突っ込んでいく。
なるべく調理する必要の無い総菜類と、おにぎりやパンを購入。
栄養バランスを考えて、果物も数種類買っておいた。
空間収納の中は時が止まってるから、腐らないし、温かいままだからいつでも日本の食が味わえるぜ。
あとは怪我に備えて傷薬や包帯なんかも買っておく。
よし準備万端、異世界に向かうぜ!
「『空間転移』!」
今覚えてるスキルは、別に無詠唱で発動できるから叫ばなくてもいいんだけど、気分の問題。
俺は、一番最初に召喚された赤髪の美少女のいた神殿に転移した。
どこでもよかったんだけど、とりあえず順番に回ってみることにする。
神殿内はシンと静まりかえっていて、誰もいなかった。
そういえば杖もらっちゃってるけど、これって犯罪になっちゃうかな?
日本では、落ちていたものを拾ったら交番に届けなければいけないけど、この異世界に交番があるかどうか分からんし。
そもそもこの世界にそんな法律があるかも分からんし。
まぁ、あの娘に会った時に返してって言われたら返せばいっか。
神殿に一つだけある扉を開けると、その先は一本の渡り廊下になっていた。
あたりに誰もいないことを確認して、廊下を歩いていく。
ふと吹き抜けになっている窓から外を見ると、驚愕するような絶景が広がっていた。
この廊下の外は両脇が断崖絶壁になっていて、はるか下方に町並みが見える。
中世ヨーロッパ風の作りだが、大きな3階建て以上の建物がいくつも見える。
けっこう発展してる都市のようだ。
町をぐるりと高い城壁が囲んでいて、巨大な人に襲われないために防衛しているかのようだ。
俺が出てきた神殿は山の頂上に作られていて、向こう側に見えるお城のような建物と繋ぐために、この渡り廊下がある構造だ。
魔法がある世界だからこんな無茶苦茶な建築ができるんだろうな。
と思っていると、廊下の向こうから何やら話し声が……。
「やべ、こっちに向かってきてるぞ!」
『危険予知』は動作していないが、俺にとっては都合が悪い。
返還したはずの者がうろついていたらまずいでしょ。
一応『偽装』はしてあるが、このスキルではほとんど外観は変わらない。
髪と目の色、あとは肌の色ぐらいしか偽装出来ないので、ここで誰かにあったら例え返還された者だとばれなくてもやり過ごせないだろう。
一旦家に戻るか?
そう思って窓の下の町並みを見ると、何故か町まで『空間転移』できそうな気がした。 話し声は段々と近づいてくる。
考えている時間は無い!
瞬時に『空間転移』を発動してみると、俺は先程見下ろしていた町まで転移できていた。
「一度行った場所って、見えてる範囲であれば行けるのか?これは便利!!」
ついさっきのピンチを忘れて、一人ではしゃいじゃった。
ちょっと試してみるために、遠くに見える山に『空間転移』を発動してみようとしたが、うまくいかなかった。
漠然と見えてる範囲じゃなくて、俺が焦点を合わせわれる範囲までが転移可能なのかな?
今度はちょっと離れた場所にある町外れの門まで転移してみる。
俺の視力は両目とも2.0だから、多少離れていてもくっきり見えるのだ。
今度はちゃんと転移できた。
一応人がいなそうなとこで試したけど、誰かに見られてないよな?
そう思ってキョロキョロと辺りを見回すと、なんともありがちな光景が目に入ってきた。
美人のシスターが男達に絡まれてる――。