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勝機

 マジか……、スキルが消された!?

 魔眼が消されるなんて、もう打つ手が無い……。

 何だよあの能力、チート過ぎるだろ。

 魔力だけじゃなくスキルまで消せるなんて。

 これは拙い、拙過ぎる。

 もし空間転移が消されたら元の世界に戻れなくなってしまうじゃないか。

 駄目だ、最早闘える状況じゃないし降伏しなければ。

 何とかお祖母ちゃんに血縁者である事を告げて情に訴えるしかない。

 だが、証拠が無いのにどうやって信用して貰う?

 降伏しても信じて貰えなければ殺されるだけだ。


 スキルが消されたショックであれこれ考過ぎて、またもやエスターテが攻撃して来ているのに反応が遅れてしまった。

「やべっ!!」

 ガッという鈍い音が響いたが、それは俺との接触によるものでは無く、美緒がエスターテの攻撃を防いでくれた音だった。

「お兄ちゃん、お待たせ。もう回復したから私達に任せて」

「おぉ、助かったわ。って、魔力無いから身体強化出来ないだろ。大丈夫か?」

 俺の問いに、美緒は水の流れのように華麗にエスターテの攻撃をいなしながら応える。

「魔力無くなった御陰で逆に体軽いよ。回復遅かったのは、魔力の代わりに気を取り込んでたから。気功による強化だけで充分いけると思うよ」

 そう言うと、子供と遊んでいるかの様に易々とエスターテを捕まえて投げてしまった。

「な、何っ!?」

 宙を舞うエスターテは驚愕に目を見開いていた。

 余りの美緒の強さに、俺も同様に目を見開く。

 魔力による身体強化無しでエスターテを圧倒しているって、素の方が強いってことか!?

 そういえばもう一人はと思って美紅の方を見ると、お祖母ちゃんと互角以上の闘いを繰り広げていた。

 お祖母ちゃんは身体強化して強引に美紅に攻撃を仕掛けるが、美紅は美緒と同様にそれらを流水の如く難無くいなす。

 俺との才能の差を感じてちょっとへこむわ。

 攻撃が当たらないことで苛ついたお祖母ちゃんは魔法を発動しようとするが、無詠唱の魔法すら出す隙を与えずに美紅は技を繰り出し続けた。

「くっ!この小娘が!!」

「へへん、お祖母ちゃんも結構やるじゃん」

「誰がおばあちゃんだぁっ!?」

 お祖母ちゃんの目がやたら怒りに燃えてる様に見えるのは気のせい?

 あんなに逆上してちゃ話は聞いて貰えそうもないな。


 魔力が消えた御陰で逆に妹達がチート状態になるとは、災い転じて福と成す。

 美紅と美緒が優位に闘ってる今のうちに、勝機を見出したい――と言っても魔眼を消された俺には何も出来ないけど。

 この闘いの急所を突くのが最善策かな。

「美紅、その杖を奪え!」

「え、杖?何か分からないけど、分かった!」

 だが、俺の声を聞いていたお祖母ちゃんも警戒するので当然簡単には奪えない。

 俺はエスターテの相手を交代する為に、美緒の方へ走った。

「美緒、俺がこの魔族の相手をするから、お前も美紅に加勢して杖を奪ってくれ」

「分かったよ、お兄ちゃん」

 美緒がお祖母ちゃんの方に向かったのを確認して、俺はエスターテに向かって構える。

 エスターテは暫くお祖母ちゃんの方を見ていたが、俺を睨むと共に襲いかかって来た。

「身体強化出来ない貴様に、私の相手が務まるはずないだろう!」

「それはやってみなくちゃ分からないぜ」

 俺は『危険予知』を意識して発動させ、エスターテの攻撃の軌跡を読む。

 先程同様エスターテが分身したように見え、俺に向かって右拳を突き出しつつ左脇腹に膝を入れようとしていた。

 フェイントは半透明になって見えるので、本命の攻撃と区別できとても便利だ。

 俺はエスターテのフェイントだと分かっている右拳を無視して、そのすぐ後に出されるはずの右膝に蹴りを入れて止める。

「な、何なんだお前らはっ!」

 不自然に攻撃を止められて焦ったエスターテは、一旦距離を取るために離れた。

 少し間が開いたことで俺は余裕が出来、お祖母ちゃんと妹達の方を見る。

 妹達は双子ならではのコンビネーションで徐々にお祖母ちゃんを追い詰めていた。

 お祖母ちゃんのフリフリのリボンが揺れて、魅惑的なダンスの様に妙に艶めかしい。

「ぐっ!くそぉ!大魔導士たるこの私が負けるはずがっ!」

 あと少しで杖を奪えそうだなと思ったところで、ふとあの諺が脳裏を過ぎる。

――窮鼠猫を噛む。

 達人たる妹達なら充分警戒してると思うが、お祖母ちゃんはスキルを消すという信じられない事をやってのける。

 美紅と美緒のチートを消すなんてこともあるいは……。

 一応注意しようと声を発しようとした瞬間お祖母ちゃんの杖が眩く輝き、その光が美紅と美緒を後ろへ吹き飛ばした。

「「きゃあっ!」」

「美紅!美緒!」

 俺は全力で妹達の所へ走った。

 まさかまた何か消されたのか!?

「何、あの杖?お祖母ちゃんの気配と無関係に攻撃してきた」

「うん、別の生き物みたいだったね」

 今のところ妹達に異常は無いようで普通に喋っているが、光をモロに浴びたのだから何かされた可能性はある。

 最早万事休すか――と思ってお祖母ちゃんを見ると、何故かお祖母ちゃんは目を見開いて杖に話しかけていた。

「今言った事は本当か、ワイジングハート?」

『ああ、お嬢。あいつらはお前の孫だ』


 杖の辺りから、何か声が聞こえた気がしたけど……杖が喋った?

 お祖母ちゃんが杖と喋ってる?しかも名前まで付けて。

 コスプレした老女が杖と会話……痛い……心が痛いよ……。

 すごく見てはいけない物を見てしまった気分だ。

 いや、今はそんな事を言ってる場合じゃない。

 杖が言った言葉――孫。

 その言葉にお祖母ちゃんが驚愕している。

 そして、ゆっくりと杖を下ろすとお祖母ちゃんは俺達に問う。

「お前達は私の孫なのか?」

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