スキル
魔力を消す?大魔導士はそんなことまで出来るのか。
母さんの魔力を霧散させるスキルを実際に見てるからそれ程驚きはしないけど、これはかなりピンチじゃね?
空間転移は使えないし、ドラゴンが飛ぶのも魔力を使っていたはず。
完全に退路は断たれたか?
俺の攻撃の主軸はほとんど魔法によるものなのに、それが使えない状態で闘わないといけないとは。
そういえば、魔力消したらお祖母ちゃんも魔法使えないのでは?と思った直後、俺の足下に赤いサークルが浮かび上がった。
『危険予知』が発動している!?
俺は即座にその場を飛び退くと、今迄俺がいた場所を炎の玉が襲い、地面を抉って間欠泉の様に炎の柱を立ち上らせた。
「あ、あぶね~」
炎が飛んで来た方を見ると、お祖母ちゃんが杖を此方に向けていた。
こっちは魔法使えないのに向こうは使えるのかよ!
しかし、『危険予知』が発動したって事は魔力を使わないスキルは使えるってことか。
とりあえず広範囲の魔法で無ければ避けれそうだが、他のスキルは使えるだろうか?
『空間転移』はMPを消費するから、魔力が無い状態では使えない。
自分の髪の毛を引っ張って見てみると、『偽装』は解けていなかった。
『空間収納』に入れてある道具を取り出してみたが、問題無く取り出せる。
あとは『魔眼』だけど、使用時にMP消費しないからストックしてある分はたぶん使えるだろう。
そこでふと気付いた。
お祖母ちゃんが使った魔法をストックして放てれば、辛うじて闘えるか。
勝てないとは思うけど、なんとか逃げるチャンスは作りたい。
先程からあの杖からの光が色々な事を引き起こしている――お祖母ちゃんの変身とかね。
なんとか近付いてあの杖を奪えれば。
俺は思いっきり地面を蹴って、お祖母ちゃんとの距離を詰める。
「肉弾戦なら勝てると踏んだか?甘いわ」
俺が掴もうとしたお祖母ちゃんの腕は素早く引かれ、左脇腹に蹴りを貰う気配を感じたので咄嗟に飛び退く。
俺のいた場所をお祖母ちゃんのマシュマロの様な白く煌めく足が通り過ぎ、その美しさに思わず息を呑むが、老女の足である事を思い出してげんなりする。
威風堂々と構える凜々しい美少女はとても俺好みだが、肉親だしBBAだし――何故か無性にハルナに会いたくなってきた。
相手はどうやってるか分からないが魔法を使える――ということは、当然魔力による身体強化も出来るってことか。
格闘ですら分が悪いとは……。
とりあえず、サウザンド・ピラーは最後の最後で使うかも知れないから、ウィンドスピアで隙を作って杖を奪おう。
しかし、現実はそううまく行かなかった。
お祖母ちゃんに気を取られすぎて、エスターテが俺の間合いに入っている事に気付かなかった。
エスターテが右の拳で俺を殴ろうとしているのが見えてるのに、魔力が消えたことで身体強化が解け、モロに食らってしまい後ろへ吹き飛ぶ。
「ぐうっ!」
格下扱いしてたけど強いじゃないかエスターテ。
身体強化でブーストしてたから圧倒出来てたんだな。
さすがに魔法が使えない状態で二対一は拙いと思い、妹達の方を見ると準備体操していた。
いやもういい加減回復しただろ?早く準備して~!!
俺が体を起こした処にすかさずエスターテが追撃を仕掛けて来て、一瞬で距離が詰まってしまう。
気配を読んでもっと早く対応出来ないと――その為には相手の動きに集中して――そう考えた瞬間、エスターテの姿がブレて『右腕を引いた姿』と『右拳が俺の腹を貫く姿』に分かれた。
「な、何だ!?」
俺は腹を貫かれたと思ってエスターテの右拳を掴もうとしたが、俺の手は空を彷徨っただけ。
そこに一拍置いてエスターテの拳が現れるが、偶然出した腕でガードすることが出来た。
今度は吹き飛ばされる事なく受け切れたので、体制を崩される事無く横へ飛び距離を取る。
しかし、今のは何だろう?残影……ってのは残ってる方の影だから、その逆で先影?何だそりゃ?
相手の動きに集中した瞬間、未来の映像が見えたような……ひょっとして。
さらに追撃してくるエスターテに集中すると、先程と同じように忍者の分身の術の様にエスターテの姿がブレて、『俺に向かってくる姿』と『俺の目の前で右の蹴りを繰り出す姿』に分かれる。
やっぱりか。
これたぶん『危険予知』のスキルが発動してるんだ。
自分で意識して危険を察知しようとすると、相手の未来の攻撃している姿まで見えるのか。
ここに来て超チート発動した!
身体強化していなくても1秒以上先の動きが見えてれば、俺の拙い合気道でも充分対応できる。
エスターテが右足を上げた瞬間、俺はエスターテの左足を刈って体を崩し左腕を引きつつ投げる。
「なっ!?」
エスターテが目を見開きながらゴロゴロと転がっていくのを確認して、俺はそのままお祖母ちゃんに向かっていった。
エスターテに負ける事は無いと思うが、いくらダメージを与えてもお祖母ちゃんが回復してたら堂々巡りだ。
杖を前に構えて迎撃する気満々のお祖母ちゃんに向かって、俺は魔眼にストックしてあったウィンドスピアを発動する。
風の塊が一本の槍と成ってお祖母ちゃんを襲う。
「魔法だと!?」
一瞬驚いた風だったが、お祖母ちゃんは杖から迸った光でウィンドスピアを難無く掻き消した。
だが、俺はそこに出来た一瞬の隙を見逃さない。
右手を伸ばし杖を掴みにいく――が、後1cmという処で横からエスターテが体当たりして来て、俺は吹き飛ばされてしまう。
「くっ、もう少しだったのに」
相手を意識していないと『危険予知』が発動しないようで、エスターテが飛んでくるのに気付かなかった。
ストックしていた魔法はあとサウザンド・ピラーだけか。
これだけで何とか出来るのか?
拙いなと思っていると、お祖母ちゃんが俺の方に杖を向ける。
「魔力が無くても魔法が使えるとは、侮っていた。そのスキル邪魔だな」
俺は避ける間もなく、杖から出たカメラのフラッシュの様な光を浴びてしまう。
「やべぇ!何されたんだ!?」
慌てて自分の体を確認してみるが、何も変化は無いようだ。
俺の狼狽えようを笑うかのように目を細めたお祖母ちゃんが応える。
「お前のスキルを消した。これで魔法は使えまい」
「なっ!?」
俺は急ぎ右手前のアイコンに触れてステータスを開いてみると、スキル欄から『魔眼』が消えていた。




