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魔大陸へ

 一年前に召喚された勇者の事をラルドに詳しく聞こうとした処で、遠くに豆粒のような討伐隊の先頭が視界に入り始めた。

 こちらの異変――ドラゴンのレーザーでえぐり取られた隕石が落下したような地形に気付いて、急いで向かっているようだ。

 余程、俺は勇者の情報と縁が無いんだろう。

 俺ががっくりと肩を落としたところで、ラルドとレインが二言三言会話をし俺達に向き直る。

「すまないが八雲、俺とレインは組織と連絡を取るために街に戻りたい」

「ああ、分かった。じゃあここで別れるとするか」

「は?何を言ってるんだ?」

 怪訝な表情でラルドが聞き返してきた。

 俺はその言葉を「俺達と別行動する」と取ったのだが、どうやら違ったようだ。 

「俺は一緒に街に戻ろうと言ったつもりだが?俺とレインが馬車で戻ったら、お前達の移動手段が無くなるだろう」

「いや、このドラゴンに乗って行けば良いだろ?乗り心地悪そうだけど」

『ご主人様の為ならば、我が身は如何様にされても構いません。どうぞ乗り心地が良くなるまで叩くなり蹴るなりお好きになさって下さい。いや、寧ろ叩いて下さいお願いします!』

 ドラゴンの言動については一切無視。

 ラルドが心配そうな顔をしているので、何を言いたいのか漸く分かった。

「俺達だけで魔王の城へ向かうのが心配だってことか?」

「そうだ」

 真剣な眼を向けられて俺は少し言葉に詰まってしまったが、討伐隊が近付いて来ていて余り時間も無いので、強引に話を進めることにした。

「大丈夫だよ。ヤバそうだったら俺の転移魔法で逃げるからさ。魔大陸から直接は転移出来なくても、門の付近に転移すれば良いだけだからな」

 俺の言葉に、ラルドは若干納得出来ないという素振りを見せるが、俺の意志が揺るがないと悟ったのか渋々承諾した。

「分かった。無理はするなよ」

「ああ。それより、馬車とかドラゴンとかレインとか、目立つ物が多いんだから早く移動するぞ」

 レインが何故私?という顔をしていたが、忍ぶ気ゼロのピンク装束が思いっきり目立ってんだろが!

 ラルドがレインを引っ張って馬車に乗り込み、ステルス機能をオンにしたのか直ぐに見えなくなった。

 俺と妹達はドラゴンに跨がって魔大陸へと続く門を潜った。

 門を潜る時に薄い膜の様な妙な魔力波動が見えたけど、これが転移魔法を阻害するんだろうな。

 魔法を使わずに通る分には普通に通れるので、門の近くまで来て通れば問題無いさそうだ。

 門番が居たらレッドドラゴンをけしかけて、驚いてる隙に通ることにしよう。


 魔大陸に入って直ぐに見えた景色は入る前とそれ程違いは無く、目の前には木々が鬱蒼と茂っているだけだった。

 果てしなく遠くまで森林が続いているようで、向こう側は暗くて何があるか分からない。

 レッドドラゴンに飛ぶように命じると、翼を開き重力など無いかのように巨躯を大空へ飛び立たせた。

「うぉわっ!予想以上に乗り心地悪いな」

「ゴツゴツしててお尻痛い」

「座り心地悪い~」

 俺達はドラゴンの胴体部分ではなく頭部に近い首に乗っている。

 俺が両腕でドラゴンの角に掴まり、俺に美紅が、美紅に美緒が抱き付く形だ。

「おい、もうちょっと首を水平に前に出せ。お前、落っこちたら只じゃ済まさないからな」

『ご主人様を落としてしまったらご褒美――もとい、罰が待っているのですね。どうしよう、落としたい……』

 何葛藤してんだよ、ふざけんな!

 まったく、従魔が主人に似るなんて嘘だよな?

 俺の性格がこんなに変態なわけがない。

 俺がやや遠い目になっていると、何かぐぅぐぅという音が後ろから聞こえた。

「お兄ちゃん、お腹減った~」

「お兄ちゃん、何か食べ物~」

 あぁ、そう言えば朝から色々あってまだ昼飯を食べていなかったな。

 でも一旦家に戻るにしても、ドラゴンを連れて帰る訳にはいかないし。

 空間収納に入っている食料を食べるか。

「ドラゴン、見通しがいい場所に降りてくれ」

『承知しました』


 上空から見ても延々と森林が続いていたが、俺達は漸く見つけた少しだけ開けた草原のような場所に降り立った。

 ドラゴンはまたもや重力を感じさせずに、フワリと着陸する。

 空中で殆ど羽ばたいて無かったし、どう考えても物理法則を無視した飛び方をしていたんだよな。

 魔眼で見たら何らかの魔法で宙に浮いている様だったが、何故かストックは出来なかった。

 魔力を使っていれば何でもストック出来ると思ってたけど、人間には使えないドラゴン固有のスキル等はストック出来ないのかもしれない。


 降りた場所は周囲が森に囲まれているが、魔物が飛び出して来ても対応できるぐらいの距離は取れていた。

 俺達は短い芝の様な草原に腰を下ろして、空間収納からおにぎりとパンと総菜を出して並べた。

「これだけあれば取りあえず大丈夫だろ。食おうぜ」

 一応一週間分ぐらいは収納してあるんで、美紅と美緒に分けても大丈夫だ。

 空間収納の中は時間が止まってるから、収納した時のまままだ温かい。

 ふと見ると、美紅と美緒はおにぎりを頬張りながら何故か俺をじっと見つめていた。

「ん?どうした?」

「お兄ちゃんばっかり、なんかズルい」

「は?何が?」

「だってすごく便利なスキル持ってるもん」

「そう言ってもなぁ。召喚で得たスキルは、俺もどうなってるのか分からないから教えられないし」

 あ、でも魔法は魔力で物理現象を操作するだけだから、物理の理屈が分かってれば使えるかも?

「じゃあ、後で魔法教えてやるよ」

「「ほんと!?やった~!」」

 しかし、このおバカな妹達に物理とか理解出来るのだろうか?いや出来る訳がない(反語)。

 オームの法則を勉強すると言って、ナ○シカ見ていたぐらいだからな。

 物理じゃなくて、芋虫の生態調べる事になってるやないかーい。

 こいつらに魔法教えるとか、レッドドラゴンと闘うより憂鬱かもな。


 でも、これから魔王城に乗り込むんだから戦力増強はしておきたいところだ。

 そういえば、妹達のステータスってどれ位なんだ?

 母さんが言うには俺より強いらしいけど、『情報開示』で一度見ておくか。   

 芋虫が葉を貪るようにモグモグと総菜を食べる妹達に、破魔の法で弾かないよう注意しとかないとな。

「お前達、今から俺が魔法使うから『破魔の法』を使うなよ」

「「何で?」」

 怪訝な顔で俺を見る妹達。

 そういえば情報開示について説明してなかったような気がするな。

「お前達のステータスを魔法で見るんだよ」

「「お兄ちゃんのエッチ!!」」

 何でやねん……。

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