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従魔の契約

「凄いを通り越して呆れるわ、その生命力」

 レッドドラゴンは最早瀕死と思われたが、美紅と美緒の最大まで魔力(怒り?)を込めた止めの一撃を食らってもまだ生きていた。

 こいつ、多分中ボスクラスの強さはあるよな。

 ラスボスの強さとか知らんけど。

 まぁ、レベル2の俺の方が強かったわけだが、ふふふふ。

 ようやく無双できて、俺ご機嫌っすよ♪

『ぐうう……』

 呻き声しか出せない状態らしいので、ドラゴンに軽く回復呪文を掛けてやる。

『何のマネだ?』

「ちょっと聞きたい事があってな。お前が言ってた『あるお方』ってのは誰だ?」

 俺の問いに怪訝な顔をしたドラゴンは、目を合わせるのを嫌うようにそっぽを向く。

『高潔なる龍族である我が主を裏切るような事を話す訳無かろう』

「まぁ、なんかそう言うと思ったよ。お前がどの陣営側に付いてるかによって生かしておこうかとも思ったんだが。ここを通れないと向こうの国の人達が困るらしいから、やっぱ殺しとくか」

『ぐっ……』

 体はまだ動かせる状態では無いようで、ドラゴンは俺を睨むことしか出来なかった。

「お兄ちゃん、どの部位が一番美味しいかな?」

「お兄ちゃん、丸焼きだと多すぎるからちゃんと切り分けてね」

 お前らドラゴン食う気なの?

 まてよ?は虫類系って鶏肉みたいな食感らしいから、ひょっとしてドラゴンも美味いのか?

 ドラゴンの額から朝露のような脂汗が滲み出ていた。

 その脂汗をかいた頭の辺りをラルドが調べるように見ている。

「ヤクモ、ちょっと待て。このドラゴンは『従魔の契約』に縛られているかもしれん」

 ラルドがドラゴンの角に付いていたリングを指さす。

「『従魔の契約』?何だそれ?」

「自分に不利な事を発言したり裏切ったりしないように、魔導具を使って自分の配下に置く魔法だ」

「なるほど。で、それを解除するすべはあるのか?」

「このリングを外せばなんとかなると思うが」

『や、やめろ!痴れ者がっ!』

 動けないくせに態度でかいなドラゴン。

 角は先の方が二股に分かれているせいで、角の中腹にあるリングは取り外せそうにない。

 ってか、どうやってはめたのコレ?

 ん?美紅がツカツカとドラゴンに歩み寄っていく。

「こうすればいいじゃん」

――ボキッ!

『ぎゃあああああああああ!!』

 リングの付いてる角を折りやがった。容赦ねーな美紅。

 と、美緒もツカツカとドラゴンに歩み寄っていく。

「バランス悪いからこっちも」

――ボキッ!

『ぎゃおおおおおおあああ!!』

 反対側の角も折りやがった。容赦ねーな美緒。

 お前ら、貧相な体って言われたのまだ根に持ってんのか?

 まぁ、地雷を踏んだドラゴンが悪いので同情の余地無し。

 美紅が折った角に付いていたリングが外れてポロリと地面に落ちると、ドラゴンの頭部から何かの魔力が宙に昇り湯気のように消えた。

 レッドドラゴンの目が見開かれて、呆然としたような表情になったまま固まった。

 角折られてショックだったのかな?

 どうせ動けないだろうから暫くほっとこう。


 次に俺は、戦闘が終わってこちらをジッと見たまま立ち尽くしているピンク忍者の所へ向かう。

 よくよく考えてみれば、あれ程の巨乳なんて異世界では一度しか見ていなかった。

 俺が目の前まで来ると、レインは頭部を覆っていた頭巾を外して肩程まである黒髪を顕わにした。

「やっぱりあんただったのか」

「一度しか会っていないから気付かないのも無理は無い。私も髪の色や目の色が違うだけで分からなかった」

 艶やかな夜の帳のような黒髪黒眼の美女。俺を三度目に召喚してクーリング・オフした女性がレインの正体だった。

 俺は別に負い目がある訳じゃ無いんだけど、なんか気まずいな。

 しばらく向かい合って黙り込む俺達に、ラルドが近付いてきた。

「さっきレインが『勇者』と言っていたが、ヤクモ、お前はやはり召喚された勇者だったのか?」

「いや、レインに召喚されたのは事実だけど、返還されたんで勇者じゃないと思う」

 俺の職業『返還者×5』だしな。

 返還とうい単語に反応したレインが、申し訳なさそうに上目遣いになる。

「あの時は、色々と事情があって……」

 レインは言い分があるように話し始めるが、あの時『チェンジ』って言ってたし。

「その、召喚というのは初めてで……」

 初心者だったと言いたげだけど、あの時『チェンジ』って言ってたし。

「容姿が好みじゃなかったもので……」

「認めやがったなぁ!ちょっとそこに正座しろ!そしてその胸を揉ませ……ぐふっ!」

 美紅と美緒が脇腹に鉄拳を入れたことで俺の暴走が止まった。

 危ないところだった。

「お兄ちゃん、危うくまた犯罪犯すとこだったね」

「お兄ちゃん、証人がいたら言い逃れ出来ないよ」

「うむ、マジで犯罪犯すとこだったわ。ありがとうよ」

 でもまだ呼吸出来ないので、もうちょっと手加減しようね妹達。

 あと、美紅。何気に「また」って言ってるけど一度も犯罪犯してないわ!


 俺達のやり取りを冷静に見ていたラルドが疑問を口にする。

「どういうことだ?返還されたはずなのに何故この世界に居れる?」

「さっき見せただろ、転移魔法。あれのおかげで俺がいた世界と行き来出来るんだ。これはオフレコでたのむな」

「そうか、なるほどな。召喚された者は途轍もない能力スキルを得るというからな。一年前にクアトロ王国で召喚された勇者も相当強い能力を持っているらしい」

 ラルドの勇者という言葉に俺は思考を戻す。

「そうだった、その勇者について色々聞いて置きたかったんだよ。あと召喚についてもな。レインには実際に召喚をした時の事教えてもらうぞ」

「ああ、勿論だ。知っている事は全部教える」

「私も教える」

 言質を取ったところで、とりあえず余計な事を済ませておくか。


 さっき放置したレッドドラゴンの元に戻ると、まだフリーズしていた。

「これどうしようか?」

「「え?食べるんじゃないの?」」

「それも有りかと思うけど、かなり頑丈そうだし、『従魔の契約』とかいうのが出来たら便利だなと思ってさ」

 俺は地面に落ちていたリングを拾ってよく見てみる。

 奇妙な装飾が施された銀のリングは、怪しい光沢を放っていた。

「触媒になる魔導具があれば簡単だぞ。そのリングに自分の魔力を込めて指とかにはめてやればいいんだ」

 ラルドが『従魔の契約』について説明してくれた。

 こいつが色々詳しいのって組織とかの知識かな?

 組織に所属してるのって、意外と便利かもしれない。

 そんな事を考えながらリングに魔力を込めて、レッドドラゴンのほぼ根元しか残っていない角にはめてみる。

 するとリングは虹のような七色の輝きを放って、その光がレッドドラゴンの体を包み込んだ。

 光が収まると、ドラゴンの体の傷は癒えていた。

 ルビーのような赤い瞳にも光りが戻り、俺をじっと見つめる。

 ん?何故か頬のあたりが桜色になっているように見えるのは気のせいか?

『ご主人様、私はあなたの下僕です。メス豚とお呼び下さい』

 雌だったのか……。

 というか、ドラゴンの台詞に嫌な予感が止まらなかった。

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