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冒険者ギルド

 俺と美紅と美緒は今、俺が一番最初に召喚された国――マリアさんやハルナがいる国――に来ている。

 ルルとミーシャは、危険かもしれないので家で留守番だ。

 母さんの書いた地図によると、世界の主要七カ国は『魔大陸』と呼ばれる魔族の地を囲んでいて、どの国からでも魔大陸にある魔王城に向かうことが出来るらしい。

 ルルの国とミーシャの国では俺は警戒されているかもしれないし、二番目と三番目に召喚されたところはまだ未開の地なので、今回は『空間転移』で簡単に町中に出れるこの国に来たという訳だ。


 中世ヨーロッパ風の町並みで、街道には馬車が行き交っている。

 人口も割と多いようで、商店街は人の往来が激しく、賑わっていた。

 美紅と美緒は異世界に来れて嬉しいらしく、かなりはしゃいでいる。

 露天商をのぞき込んでみたり、元の世界にはいない人種の人をまじまじと見たり。

 前に来た時は気にしなかったけど、獣耳とか生えてる人もいるな。

 猿のしっぽだけ生えてる戦闘民族みたいのもいた。

 武器屋の店頭にならんでいる剣を見ながら美紅が俺に話しかける。

「ねぇお兄ちゃん、この国のお金は持ってるの?」

「ああ、そういえばお金無いんだった」

「え~!それじゃ装備とか買えないじゃん」

 妹達に責められるのも当然か。

 マリアさんにお金の稼ぎ方聞くの忘れてたよ。

 あの時は勇者に関する話が衝撃的すぎて……というか、ハルナの可愛さも衝撃的すぎて、他の事に気が回らなかったんだ。

 とりあえず教会に行ってマリアさんに聞いてみようか、と思ったところで美紅が『冒険者ギルド』と書かれた看板を指さして叫ぶ。

「あそこに行けば、クエスト受けられるんじゃない?」

「ああ、そうかもな。ちょっと覗いてみるか」

 確かに異世界ファンタジーと言えば冒険者登録からだしな。

 俺達は、三階建ての大きな木造の建物を目指して歩いた。


 『冒険者ギルド』の入口付近は、冒険者らしい鎧を着た人やローブを纏ったりした人達でごった返していた。

 この冒険者達、妙に高揚しているな。

 何か良いことでもあったのかい?

 こういったテンション上がった冒険者が屯してる場所ってのは、必ず例のフラグが立つよね。

「よう、ねーちゃん達可愛いな」

 ほ~ら、言ってる側から妹達が絡まれた。

 よし、ほっといて俺は先に行こう。

 何故助けないかって?だって、この見知らぬ冒険者を助ける義理なんてないもの。

 俺何か間違ってる?

 後方で美紅と美緒に声を掛けた冒険者が宙を舞う。

 一拍置いて、ぐしゃっという聞くに堪えない音の後に「ぎゃあああああっ!!」という叫びが上がる。

 生きていたってことは、ちゃんと手加減できてるな。よしよし。

 俺は振り返らずに……というより他人のふりをしてギルドの受付に向かった。


 受付のカウンターには冒険者が行列をつくっていた。

「冒険者ギルドってこんなに混んでるものなのか?」

 呟きつつも俺は列の最後尾に並んだ。

 並んでいる冒険者達は、口々に「ようやくランクが上がるぜ」とか「報奨金が入ったら何買おうか」等と話している。

 しかし、よく聞いてみると捕らぬ狸の皮算用らしく、まだ仕事をこなした訳では無いらしい。

 そんなに夢いっぱいの仕事があるんなら受けてみたいな。

 周りをキョロキョロ見ているうちに、前の冒険者が終わったようで、俺の番になった。

 カウンター越しに受付のお姉さんと目が合うと、露骨に顔を顰められた。

 ええっ!?俺、何かした?

「何か御用ですか?」

 すごく嫌そうに聞いてくるお姉さん。

 めっちゃ態度悪いけど、冒険者ギルドってこんな対応なの?

 そう思って隣のカウンターを見ると、猫耳が生えてる15~16歳ぐらいの女の子が和やかに対応していた。

 俺が隣に視線をやったのに気付いたのか、お姉さんは更に不機嫌になる。

「何か!?」

「いえ……」

 まぁ、たまにそんな対応する店員さんとかもいるし、ここは我慢して話すとしよう。

「冒険者登録したいんですが、どうすればいいですか?」

 俺が質問すると、お姉さんは溜息と共に手元の資料みたいなのを整理しだした。

 そして、俺の方を見もせずに淡々と応える。

「本日は緊急招集があったため、新規の登録業務は行ってません。後日にしてください」

 あまりにも態度が悪くてちょっとムッとなりかけたが、お姉さんが手元の紙を見た瞬間に目を見開いて突然俺の方を向いた。

 そして、電話の受話器みたいな何かを取り出し、それに向かって急に話し始めた。

 事案は発生してないはず……だよな?

 俺は訳が分からないし、今日は登録出来ないという事だったのでその場を去ることにした。

 何か外が騒がしくなってきたし、妹達を連れてさっさとここを離れようとギルドの出口に向かおうとしたが、突然目の前を黒い壁が塞いだ。

 壁?にしては毛むくじゃら……と思って上を見上げると、黒い壁だと思ったのは身の丈2メートル程もある黒豹だった。

 もっとも頭こそ黒豹だがったが、体はゴリラのようにごつい人型で、肩や胸、腰を守るためのプレートアーマーを着けているし……武闘家?

 顔も豹にしてはちょっとムックリとしていて熊に近いなとか考えていたら、その顔が俺の顔近くまで近づく。

 食われるっ!?と思った瞬間、その黒豹に

「お前、逃げた方がいいぞ」

 と耳元で囁かれた。 

 そして、黒豹が目で俺に見ろと言っているような気がしたので、相手の視線の先を追ってみると、

「っ!?」

 そこには俺の似顔絵が描かれた指名手配書が貼ってあった。

 この前この町に来た時に、侯爵の息子であるヴェルデ君をぶっ飛ばしちゃったからか!?

 俺は安易に大丈夫だろうと高を括って、またヴィンター族に偽装していた。

 よくよく周りを見てみれば、白髪の冒険者なんて一人もいない。

 さっきのお姉さんは、慌てて通報してたのか!


 まずい!と思って、素早く外に出て妹達を探した。

 入口の前の冒険者達は疎らになっていて、少し離れたところに人垣ができていた。

 そこをかき分けて入っていくと、美紅と美緒に次々と投げられていく冒険者達が……。

「お前ら、何やってんの!?」

「あ、お兄ちゃん。ちょっと挑戦者達を倒してた」

 妹達がチャンピオンになってました。

 何でやねん!?

「どうでもいいけど、急いでここを離れるぞっ!」

「「うん、よく分かんないけど、分かった」」

 俺達は直ぐにこの場を離脱し、マリアさんのいる教会に向かって全速力で走った。

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