また召喚
確かに俺は、容姿がよろしくはない。
はっきり言えばモテない方だろう。
……でも、ブサイクはひでえよな。
ふとんに包まって、しばらくふて寝していると、双子の妹達が俺の部屋の扉を開けた。
「あれ?お兄ちゃんいつの間に帰ってきてたの?」
「あたしリビングに居たけど、玄関開けた音しなかったよ」
あ、やべぇ。
『空間転移』で玄関の内側に転移してそのまま自分の部屋に行ったから、玄関の扉開ける音がしなかったか。
「は?ちゃんと玄関から入ったぞ。何かに夢中になって気付かなかったんじゃないのか?」
ってな感じでとぼけておく。
妹達に俺のスキルのことを知られたら、便利に使われるのがオチだからな。
絶対に教えない!
「ふ~ん、まぁなんでもいいよ。晩ご飯出来たってお母さんが言ってたから、呼びに来た」
「わかった、すぐ行くよ」
時計を見ると、さっきの召喚からもう1時間半が経っていた。
妹達が立ち去り、俺がふとんから出ようとしたところで、再び目の前が真っ白になった。
「は?また召喚!?次の召喚は一年後だってさっき言ってなかったか?」
しばらくすると、また神殿らしき風景が見えてきた。
やっぱりこれ、召喚だわ。
でも、何で?
いや、さっきと違うところがあった。
俺の目の前に現れた美少女が、さっきの娘と違う!
さっきの娘は髪も目も赤かったが、今度の美少女は栗色のショートカットでにっこりと微笑んでいる。
今度の娘は好意的なようだ。
なんか、クラスにいる元気美少女って感じの娘だな。
さっきの美少女よりは俺の好みから離れているが、すごくかわいいのでいいと思います!
よし、第一印象が大事だ。
俺は、美少女に向けてにっこりと微笑んだ。
瞬間……美少女の笑顔が凍り付いた。
ああ……。
スマイルフリーのファーストフードで笑顔の店員のお姉さんに、こっちもスマイルしてみたらこの表情になったのを思い出した。
なんて考えてたら、
「彼の者を返還したまえ!『クーリング・オフ』!」
また、元の世界に戻ってきました。
……さて、腹減ったし飯食うか。
飯を食い終わって自分の部屋に戻ってくると、ステータスアイコンが点滅していることに気が付いた。
ステータスを見てみると、
【名前】橘 八雲
【レベル】1
【HP】50/50
【MP】20/30
【腕力】25
【敏捷】34
【魔力】35
【職業】返還者×2
【スキル】他言語理解 空間転移 ★空間収納
なんかスキルが増えてるし、その他パラメータも上がってる。
これって、召喚される度に増えていくのか?
めっちゃチートやんけ!
でも、スキルが増えるごとに俺の心の傷も増えていくのがなぁ……。
ちょっとMP減ってるのは、空間転移したからか?
『空間収納』のヘルプを見ると、
【空間収納】魔法で作った空間に何でも収納できる。収納したものは、止まった時の中で維持される。
これラノベでよく見るやつだな。
そういえば、さっきの赤髪の美少女が持っていた杖を俺が持ってきちゃったんだった。
部屋に置いとくわけにもいかないし、収納してみよう。
杖を手にとって収納してみると、瞬時に消える。
「これめっちゃ便利」
調子に乗って、部屋にあったラノベとかマンガも全部収納してみる。
部屋の棚が殺風景になったが、いつでもどこでも本を取り出せるからいいなこれ。
さてそろそろ、さっきの栗色髪の美少女のとこに行ってみるかな。
また何かアイテム落ちてるかもしれんし。
べ、別に何でクーリングオフされたか気になってる訳じゃないんだからねっ!
日本の法律じゃ生物はクーリングオフ出来ないんだけど、異世界は違うのかな?
「『空間転移』っ」
さっきの神殿らしき場所に転移したが、やはり誰もいない。
召喚が終わると放置されるのか?
神殿内を色々探してみたが、今回は収穫無し。
しばらくしても誰も戻って来ないので、元の世界に戻った。
一日に二度も召喚された(そして二度返還された)なんて、どのラノベにも無かったわ。
前代未聞じゃね?
しかも、異世界で冒険してねーし。
まぁ、自力で異世界いけるから、明日にでも探索してみるか。
この時の俺は、さらに三度も召喚されて、しかも返還されることになるとは思ってもみなかった……。