家系
感想ありがとうございました。
がんばって続き書きます。
「「ふ~ん、おじいちゃん魔王なんだ~」」
「いや、なんでお前ら冷静なんだよ!?」
全然動じてない妹達に一応つっこんでおく。
まぁ、母さんが元勇者なぐらいだから祖父が魔王でも……許容できねぇよ!
今年の正月に母方の祖父・祖母には会ってるから、父さんの方の祖父か。
そういえば会ったこと無かった。
「ちょっと待って母さん。じゃあ父さんが魔王の息子?」
「そうよ」
「軽いっ!」
当たり前じゃない?みたいな顔しないで、母さん。
それがどうしたの?みたいな顔すんな、妹達。
それからルルとミーシャ、それ以上チョコ食べるとお腹痛くなるぞ。
因みにうちの父さんは貿易会社で営業をやっていて、今は単身赴任中で家には居ない。
通訳無しで世界各国を渡り歩けるので、『ロゼッタマン』とか呼ばれてるらしい。
世界の主要言語を使わずに直接現地語同士を通訳できるという人外の能力は、『他言語理解』のスキルによる恩恵を受けてたのか。
しかし、魔王の息子ってことは……、
「父さんって魔族とかなの?人間じゃないの?」
「おばあちゃんが人族だからハーフ魔族ね。人族の血が濃いから、あの見た目どおり普通に人間よ」
「じゃあ、俺達は魔族クォーターなのか。……ん?おばあちゃんって人族なの?」
また新たな人物が話題に上がったので聞いてみると、母さんが微妙な表情になる。
「そうね……」
「どしたの、母さん?」
「八雲、魔王とは闘ってもいいけど、おばあちゃんとは闘っちゃダメよ」
「人間相手に闘うつもりは無いけど、何で?」
「この世の地獄を見るわよ」
「怖ぇよ!」
うちの家系が怖すぎるっ!
あ、何かラノベのタイトルみたいになっちゃった。
「「おばあちゃん強いのか……」」
妹達よ、何わくわくしてんの?
「お前ら、危険に突っ込んでくつもりなら連れてかないぞ」
「いやだな~、お兄ちゃん。そんな訳ないじゃん」
「そうだよ~、お兄ちゃん。安全第一だもんね」
目を逸らしながら言っても全然説得力無いですけどね。
美紅と美緒の処遇は後で検討するとしよう。
俺が母さんの書いた地図に目を通そうとしたところで、妙に真剣な顔をしたミーシャに袖を引っ張られた。
「どうした、ミーシャ?」
「ヤクモお兄ちゃん、ミーシャのお家の様子も見てきて」
その言葉を聞いた時、そういえばミーシャもルルと同様に何故か帰りたがらなかったなと思い出した。
「それって、ミーシャが帰りたくないのと関係あるのか?」
「うん。ルルお姉ちゃんのお母さんみたいに、オクルスも変わっちゃったの」
オクルスって、あの騎士風のおっさんか。
突然斬り付けてくるし話は聞かないしで、確かにおかしかったけど。
「あのおっさんも勇者に会った後でおかしくなったのか?」
「わかんない。でも前はもっと優しかったのに、今はすぐ怒鳴ったりしてみんな怖がってるの」
ルルのところと状況が似てるな。
繋がりがあるかどうかは分からないけど、これは何とかしてやらないとな。
「わかった。多分賢者の石を取ってくれば、ミーシャのところのおっさんにも効くかもしれない。大丈夫、俺が何とかしてやるよ、ミーシャ」
「ほんと!?」
「ああ」
そこで、俺は母さんに向き直って頭を下げる。
「という訳だから、しばらくルルとミーシャをうちに置いてもらえないかな?」
母さんはにっこりと笑って、
「もちろん、大歓迎よ。お父さんは単身赴任でしばらく帰らないから、賑やかになっていいわ」
「ありがとう」
「あ、ありがとうございます」
「わーい!ありがと~」
俺に続いて、ルルとミーシャも母さんに御礼を言った。
そこで美紅が何かを思い付いたようにポンと手を叩く。
「お兄ちゃんの『空間転移』使えば、お父さん毎日帰ってこれるんじゃない?」
ああ、そういえばそうか。でも、
「いや、俺の『空間転移』は一度行った場所か、俺が見えてる範囲にしか行けないんだよ。俺海外は行ったことないし、父さんがどこに居るのかも分からないしな」
「そうなんだ。使えないな~」
こらこら美緒、使えないとか言っちゃダメ。
お兄ちゃん泣いちゃうよ。
俺にはまだ『空間収納』に入れてあるマンガとラノベがあるから、存在価値は守られてるはずだ。
挫けないで生きていこう。
「とりあえず今日はもう遅いから、明日魔王城に向かうことにする」
「「うん、わかった」」
それで一先ず解散して、みんなでダイニングに移動した。
その日の晩ご飯はカレーで、ルルとミーシャは2回もおかわりしていた。
あんだけチョコ食ってたのに、子どもは好きなものなら幾らでも食えるんだな。
食事を終え、俺と美紅と美緒は翌日に備えて道具等を揃えて就寝した。
―――――
岩肌が露出した道とも言えないような山道を早足で駆け下りて来た二つの影は、振り返った先に何もいないことを確認し、安堵した。
革で作られた防具が湿る程に全身から汗が噴き出しているにも関わらず、顔色は高揚するどころか真っ青に血の気が引いている。
一人の目には涙が滲んでいたが、そんな暇は無いともう一人が急かすと、袖で目を拭いまた駆け出す。
二人の遙か後方で轟いた咆哮は、それを発した生物がいかに巨躯であるかを物語っていた。
「あんな化物がいるとは……。騎士団を編成しても討伐できるかわからん」
「ええ。ですが、この道が唯一我が国から魔大陸へ通じる道です。何としてもあれを排除しなければ、犠牲になった彼らに報いることができません」
「分かっている」
遙か眼下にある都市へ向かって、気配を殺しながら急ぎ岩道を下っていく二人の瞳には、決意と悲しみが同居していた。
最後に次回からの伏線になる部分を第三者視点で書いてみました。
自分の文章力の無さが露呈しただけのような気も……。




