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返還

「母さんがいると話しづらいなぁ」

「あら、私だけ除け者?ず~る~い~」

 何若ぶってんのこのBBAは?

 痛い痛い。母さん、俺の腕つままないで!


 さて、何から話したもんかと考えてたら、あらぬ方向に思考が行ってしまったな。

 しかも考えが纏まっていない。

 よし、

「ルル、説明してくれ」

 丸投げしました。

「あ、はい……」

 大きな目を丸くして、きょとんとしたルルはとっても可愛いな。

「私はルル・サンク・ヴァイスといいます。スィフル王国第一王女です。ヤクモ様に攫われてきました」

「うおい!」

「冗談です。ヤクモ様にお願いして連れてきてもらったんです」

 クスクスと笑うルルを見て、そう言えば言葉通じるのか?と疑問に思ったが、

「「王女様!?」」

 と驚いた妹達を見て杞憂だと悟った。

 どうやら空間転移や召喚で異世界間航行すると、スキル『他言語理解』が自動的に付与されるようだ。便利だな。

「ヤクモ様は、私が召喚した勇者様なのです。ヤクモ様は元の世界への返還を希望されていましたが、私はヤクモ様と友達になりたかったのでお断りしました。しかし、自由に戻ってこれるから友達になろうと言ってくださいましたので、異世界を行き来できることを確かめたくて連れてきてもらいました」

 妹達は、俺の言うことはちゃんと聞かないくせにルルの言葉には真摯に耳を傾けている。

 兄の話もちゃんと聞こうね。

 そして何故か美紅が微妙な顔で俺の方を向いた。

「お兄ちゃん、まさかホントに異世界に召喚されちゃうなんて」

「うるさいよ」

 お前が「お兄ちゃんに彼女できるのは異世界に召喚されるよりありえない」と言った通りでしたよ。

「あたしも召喚したよ~!」

 と、ミーシャが元気に手を上げて言った。

「え、どういうこと?ミーシャちゃん」

 美緒が不審がってる。

 ミーシャが余計なこと言った御陰でややこしいことになってきた。

「でもね、あたしは返還したの~。ヤクモお兄ちゃんがオクルスに斬られそうになったから」

 騎士風のおっさんはオクルスって言うのか。

「「返還……」」

 妹達にジト目で見られ、そして何故か母さんも『返還』という言葉にピクリと反応していた。何故?

 そういえば、まだルルに返還してもらってなかった。

 妹達のせいでバタバタしてたからな。

「ルル、とりあえず俺を返還してくれ。あっちの世界に戻る必要あるかな?」

「いえ、おそらく大丈夫だと思います。召喚者が返還の呪文を唱えるだけで返還できるように召喚用魔法陣が組まれていましたので」

「そうか、じゃあたのむ」

 俺がルルと向かい合って座ると、美紅と美緒が両脇に座って俺達を物珍しそうにジロジロと見る。

 中学二年だから、魔法とかが好きになる病気にかかりやすいもんな。

 ルルの魔力が俺に向けて流れてくるのが、魔眼を通して分かった。

「では、いきます。彼の者を返還したまえ!『クーリング・オフ』!」

「「クーリング・オフ!?」」

 妹達の叫びを聞いたと思った瞬間、俺の体は一瞬消えて、またすぐに元の場所に戻った。

 一応亜空間みたいなとこを通ってるのかな?一瞬目の前が真っ白になるのはそういう訳か。

 そして戻ってきた俺に、両脇の妹達が憐憫の目を向ける。

「お兄ちゃん……生物なまものなのにクーリング・オフされるなんて」

「お兄ちゃん……ううん、なんでもない」

「言いたいことあったら言えよ!」

 日本とは法律違うんだから、生物でもクーリング・オフできちゃうんだよ!

「くーりんぐ・おふって何~?」

 ミーシャは意味も分からずに返還の呪文使ってたのか。

 可愛いから許す!

 そして何故か、美紅が俺の右手を、美緒が俺の左手を握ってこちらをじっと見つめる。

「な、なんだ?どうした?」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん。たった2回クーリング・オフされたぐらい」

「そうだよ、お兄ちゃん。たった2回のクーリング・オフなんて気にすることないよ」

 クーリング・オフ連呼すんな!

 それに……

「……5回」

「「え?」」

「クーリング・オフ5回されたんだよ」

 妹達は絶句して白目になってた。

 恐ろしい子でしょ、俺。

 フリーズしてる妹達は放っておいて、ルルとミーシャを異世界に帰してこないとな。

「じゃあ、ルル、ミーシャ。元の世界に送っていくぞ」

「嫌です」

「あたしも嫌~」

「うおい!」

 なんでこの子達は駄々こねてんの?

「もうお昼だから、みんなでご飯にしましょ。ね、ルルちゃんとミーシャちゃん」

 母さんがルルとミーシャを撫でて提案した。

 そういえば腹減って来てたな。もう昼か。

「そうだな、まずは飯食ってからにしよう」

「はい!」

「わーい!」

 ルルとミーシャの笑顔は癒やされるな~。

 美紅と美緒が再起動しないけど、腹が減れば戻ってくるだろう。


 昼ご飯は、オムライスだった。

 母さんがミーシャとルルに合わせたメニューにしたんだろう。

 二人とも一口目を食べた時に目を丸くして「おいしい!」と言い、ものすごく喜んで食べていた。

 やっぱり日本の料理は異世界と比べても美味いんだな。

 臭いにつられて、美紅と美緒がダイニングに来たところでふと呟いた。

「お母さん、異世界とか聞いても全然動じなかったね」

「お母さん、魔法とか見ても全然動じなかったね」

 俺はその後の母さんの言葉に耳を疑った。


「だって私、元勇者だもの」

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