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才能

感想ありがとうございます。

だんだんペースが落ちてきたので、更新は1日置きで定着させようと思います。

「「お兄ちゃんをいじめるなっ!」」

 そういえば、以前にもその言葉を聞いたことがあったな。




 俺は小学校四年の時に、合気道の道場に通い始めた。

 俺が道場に通うのを見て妹達は自分達も通いたいと言い出し、俺は特に反対するでも無く、親も護身術としてやらせることにした。


 自分で言うのも何だが、俺は合気道の才能がある方だった。

 合気――相手の動きを先読みしてこちらの動きを合わせて投げる。

 そんな闘い方が妙に性に合った。

 道場に通い始めて一年後には、県大会小学生の部で優勝、全国大会では準々決勝まで勝ち進んだほどだ。

 当時は神童と呼ばれていた。

 妹達も俺について道場に通い、徐々に上達していった。


 道場のひとつ上の先輩に、蒼井あおい 隼斗はやとという奴がいた。

 実力はそこそこだが、とにかく性格が悪い。

 試合中も見えないように反則技を使ったり、必要以上の攻撃で相手を痛めつけたりとやりたい放題。

 俺ははっきり言って嫌いだった。

 まぁ相手も、年下なのに実力がある俺の事は気にくわなかっただろう。

 だがある日、奴はとんでもないことを言い出した。

「お前の妹を紹介してくれ」

――絶句し、思考停止した。

 何を言っているのだろう、このロリコン野郎は?

 小学校三年の妹達と何をするつもりだ?

 兄の贔屓目かもしれんが、確かにうちの妹達は可愛い。

 毎日男が群がっているので、護身術を習わせたうちの親達の気持ちも分かる。

 まぁ、群がってるといっても同級生の子供達が一緒に遊ぼうとしている程度。

 だが、このアホの言っていることは理解出来なかった。

 いや、こういう輩がいるからこその護身術か。

「断る!」

 俺の言葉に顔を歪めた隼斗は苛立たしそうにその場は去ったが、一抹の不安を覚えた俺は、それからなるべく妹達の側を離れないようにしていた。


 それから一週間後。

 隼斗は俺を公園に呼び出した。

「俺と闘って、俺が勝ったら妹を紹介しろ!」

 まだ諦めて無かったのかと、俺は隼斗に対する嫌悪感を更に募らせる。

「断ると言っただろ!いいかげんにしろよ!」

 俺は怒気を含んだ声で威嚇したが、隼斗はまだ余裕を見せていた。

 いつもの小狡い感じのする隼斗なら、これで退散するはずなのに今日の奴は何かがおかしい。

 そう思った矢先、隼斗の後ろに二人の少年が出てきた。

 見覚えは無かったが、背丈や雰囲気から隼斗の友人であろう事が予想出来た。

 一人は丸坊主でガッシリとした体格。格闘技をやっていそうな奴だ。

 もう一人は長髪でわりとイケメン。細身だが、体裁きでこいつも油断ならない気がした。

「俺は紅林くればやし 雄人ゆうと。で、こっちは土門どもん たける

 イケメンの方が、聞いてもいないのに自己紹介した。

 正直どうでもいいんだが。

「隼斗の要望に応えて、と闘ってくれよ。」

 下卑た笑いを浮かべて無茶苦茶な要求をするイケメン。

 これは逃げるが勝ちと思った時、さらに下衆な言葉が吐かれる。

「妹さん達、学校の帰り道とか気を付けた方がいいんじゃない?」

 頭に血が上る。

 挑発と分かっていても、俺の中でぶち切れた何かが俺に闘えと命じていた。


 俺が構えるやいなや、丸坊主が襲いかかってきた。

 相手の構えから柔道をやっていると悟った俺は、服を捕まれないように相手の腕をとって投げる。

 投げは綺麗に決まって相手を背中から落とし、腕を少し捻ってやった。

「ぐうっ!!」

 呻き声に、「まず一人」と安心した隙を突かれた。

 背中に激痛が走る!

「っ!?」

 イケメンに背中を蹴られたようだが、信じられなかった。

 背後にも気を配って距離を開けておいたはずなのに、一瞬で間合いを詰められた。

 こいつも何か格闘技をやっているのかもしれない。

 イケメンに気を取られて、今度は隼人に服を捕まれる。

 やばいっ!

 思った瞬間に身体が少し浮く。

 投げられないように身をよじって半回転させようとするが、そこにイケメンの拳が突き出された。

 躱しきれずに拳をもろに脇腹に食らって、呼吸が一瞬止まる。

「ちくしょう……っ!」

 片膝をついた俺に、隼斗が容赦無く蹴りを入れる。

 そして、何度も何度も蹴り続けた。

「はははっ!俺に生意気な態度をとった事後悔しろよ!」

 俺は蹴られながらも隙を伺っていたが、そんな暇を与えまいとイケメンが横から殴る。

 このイケメン、やたらと死角をつくような闘いをしやがる。

 紅林 雄人だったか?何者だ?

 格闘技というより喧嘩慣れしてる奴だった。

 丸坊主も起き上がってきて万事休すと思った時、後ろから声が聞こえて振り返る。

「「お兄ちゃんっ!!」」

 美紅と美緒が何故かそこにいた。

「おまえら、来るなっ……!!」

 俺は声を張り上げようとしたが、叫びにならなく掠れてしまう。

 そして、美紅と美緒がこちらに駆け寄ってきてしまった。

 なんとか妹達を守らないとと思った時に、美紅と美緒が叫んだ。


「「お兄ちゃんをいじめるなっ!」」


 二人は、自分よりも年上の男達に向かって突っ込んでいった。

 俺は自分の無力さを嘆いたが、妹達への心配はその直後に完全に消え去った。

 美紅と美緒はそれぞれ、自分よりも頭2つほど大きい男達――隼斗と雄人を目にも止まらぬ早さで投げ、関節を決めて腕を折る。

 最後に残った丸坊主は、天地が逆になって頭から地面に落ちて気を失った。

 美紅と美緒が丸坊主の横で腕を捻った気がしたが、早すぎて見えなかった。

 その間1.5秒。

 俺の妹達は、既に俺よりはるかに強くなっていた。 

 唖然として開いた口が塞がらなくなった俺に、妹達が駆け寄ってきた。

「お兄ちゃん大丈夫?」

「早く帰って治療しよ」

 頭の中が混乱したまま、妹達に引きずられて家に帰った。


 妹達との才能の差を感じた俺は、翌日から道場へ通うのを止めた。




 あの時から、自分に自信を持てなくなったような気もするな。

「「お兄ちゃん、妄想長いよ」」

 妹達よ、妄想じゃなくて回想だっ!

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