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瘴気

 俺の魔力に呼応して、ドラゴンの鎧が変形を始める。

 背中から翼が生え、籠手の先端部分に鉤爪が飛び出る。

 そして股間部分が更に重厚になり、竜の頭部のような形を成す。

 やっぱりダサい……ってか、なんで股間に頭部が来てんだよ!?

 さっさと終わらせて早くこの鎧脱ごう。


「センスの欠片も無い鎧ね。醜いあんたにはお似合いだけど」

 六花が冷たい眼差しで俺を見下ろす。

 良く見ると六花の体が少し宙に浮いていた。

 お祖母ちゃんが賢者の石の力で周囲の魔力を消しているから、お祖母ちゃんが敵と見なした六花は魔法が使えない筈なのに。

 六花が右手を俺に向けると、指先から先程の黒い靄のような物が立ち上る。

 そして、それが突然黒い閃光となって俺を襲った。

「うおっ!」

 咄嗟に空間収納で空間を削って避けたが、俺のいた所の地面は腐ったようにドロドロに溶けてしまった。

「あぶねぇ。なんで魔法が使えない筈なのに攻撃出来るんだ?」

「あれは瘴気だ。ヤクモ、お前さんが使ってる気のようなもので、言わば負の気。先代魔王も使っていた」

 お祖母ちゃんが説明してくれたけど、そんなのがあるって事は周囲の魔力を消しても意味無いって事じゃん。

 あぁ、魔導兵器で魔力を消した時のハゲのおっさんの気持ちがちょっと分かった。

 あの時は美紀叔母さんが、魔力消去を無視した攻撃で圧倒したんだよな。

 それを今度は六花が行ってる訳だ。

「ノヴァさん、先代魔王が使ってたんなら攻略法はあるの?」

「いや、先代魔王は元々只の魔族だったから力づくで倒せたが、この小娘は勇者が魔王化したからその力は比べ物にならない。防ぐ方法すら分からんな」

「ええ~?アランさんが魔王化してた時はどうだったの?」

「僕は意識を悪に汚染されないようにしてたから、瘴気は使えなかったんだ」

 うん、使えない人だな。2つの意味でね。

 お祖母ちゃんもお祖父ちゃんも、勇者が魔王化した六花に対抗する術を知らない。

 あの瘴気を避けながら『魔王石』を破壊するのか。

 難しいけどやるしか無いな。


「八雲、俺が引き付ける。お前は隙を見てあの石の破壊を」

「分かった」

 隼人が剣を構えて俺の前に出た。

「隼人、貴方の顔に傷付けたく無いわ。大人しくしててよね」

 六花は左手を俺達に向けると、黒いボールのようなものを複数生成して撃って来た。

 野球ボール程の大きさの弾丸が俺と隼人を打ち抜いた――ように六花には見えただろう。

 俺は隼人を掴んで即座に空間転移して六花の後ろへ回り込んでいた。

 隼人は地面を蹴り、六花の背中目掛けて斬りかかる。

「うおおおっ!!」

 隼人の剣が袈裟懸けに六花を斬ろうと宙を走ったが、途中でその動作は停止する。

 六花の肩から黒い靄が腕のように生えて、隼人の剣を掴んでいた。

 そして靄が剣を伝って隼人の手に忍び寄ってくる。

「くっ!」

 咄嗟に剣を手放して隼人は六花から距離を取る。

 隼人の持っていた剣は黒い靄に飲み込まれるようにして消えた。

 あの黒い靄が有っては近づく事も困難か。

 俺は空間収納から、さっき六花から奪った細身の剣を出して隼人に渡す。

「隼人、あれ何とか突破出来そうか?」

「いや、全く打開策が見えない。この世界に関してはお前の方が詳しいだろ?何か手は無いのか?」

「悪ぃけど、あれに関しては全く情報が無い。というか、過去の情報が当てにならないぐらい今の六花は強い」

 六花が使っている瘴気ってのが気と同じ性質なら、あれを突破出来る可能性があるのは俺の気功だけか。

 まだ美紀叔母さんや妹達みたいに気を上手く使えないけど、強化されたドラゴンの鎧で目一杯外気功を使えばいけるかな?

 俺は下腹に力を込めて周囲の気を感じる事に努めた。

 お祖母ちゃんが味方と判断してくれてる俺には、体内に魔力も残っているのでそれをドラゴンの鎧に流しつつ外から気を取り込む。


 自分で言うのも何だが、すげー器用な事やってるよな。

 気と魔力を同時に制御するのって、右手と左手で同時に別々の事をやってる感覚だ。

 右手でグー→チョキ→パーと出しながら、左手でパー→チョキ→グーと出すみたいな。

 別々の動きだけど、頭の中で別々に処理する事は出来ない。

 一つの流れとしてイメージする事で同時に違う事が出来るんだ。

 何事もイメージって大事だよね。


 力を貯めて一気に地面を蹴り出す。

 一瞬で六花に肉薄するが、俺が突き出した右拳は瘴気で作った盾で防がれる。

 それでも気を込めた俺の拳が侵される事は無いようだ。

 俺は左手に気を集めて瘴気の盾を思い切り殴る。

「うりゃあっ!!」

 衝撃で殴った拳が弾かれるが、同時に瘴気の盾も霧散した。

「なっ!?」

 先程まで冷ややかな眼で俺達を見ていた六花が驚愕に顔を顰める。

 俺は瘴気の盾が無くなった隙を突いて、今度は六花の胸当てに埋め込まれている『魔王石』目掛けて右の拳を突き出した。

 しかし一瞬遅く、六花が体を捻った事で躱されてしまった。

 そのまま俺の攻撃を躱しながら、六花は瘴気で作った弾丸を無数に撃ち込んでくる。

 俺はたまらず後ろへ飛び退いた。


 俺一人で瘴気を吹き飛ばして、それから攻撃を入れたんじゃワンテンポ遅れてしまう。

 でも、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんにはもう魔力も殆ど残っていないだろうし、隼人の攻撃じゃあ瘴気の壁を破れない。

 しかも雨霰と弾丸が飛んでくる中、六花には近づく事すら難しい。

「さっきはヒヤリとしたけど、近づかせなければいいだけの事。この弾丸で全身を貫いてあげるわ」

 冷たい微笑を取り戻した六花は淡々と弾丸を連発する。

 瘴気って無制限で出せるもんなのか?

 いや、許容量が莫大なのかも。

 どっちにしろこのままじゃジリ貧で、既に体力や魔力を失っているこっちがやられるのは目に見えている。

 空間転移のスキルが復活している事だし、一旦引くのも手だが……。

 いや、魔王石がどんな物か分からないし、早急に六花から引き剥がすべきだろう。

 時間が経つ事で元に戻り難くなる事だって考えられる。

 ここで片を付けないと六花の命に関わるかも知れないじゃないか。


 しかし、一方的に六花に攻撃されて何も出来ない。

「これじゃ近づけないぞ」

「う~ん、どうすりゃいんだろな?」

 避けるだけなら俺も隼人も問題無いが、近づくとなると難易度が跳ね上がる。

 妹達なら感だけで軌道を読みながら突っ込んで行けるんだろうけどな。

 何か打開策を――。

「八雲、俺が突破してやる」

 さっきまで倒れていた和馬が起き上がっていた。

 良かった、ちゃんと回復魔法が効いてたな。

「和馬、スキルのクールタイムは?」

「問題無い、直ぐに使える」

 よし、和馬のスキルがあれば突破出来る!

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