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魔王石

「アランさん、なんで六花をちゃんと抑えておいてくれなかったんだよ?御陰で大変な目にあったよ」

 俺はのこのこやって来たお祖父ちゃんを責めるように問い糾した。

 一瞬たじろいだお祖父ちゃんは、オロオロしながらも言い訳する。

「いや、ノヴァちゃんが彼の洗脳を解くから盾になって欲しいって言うから」

「私は盾になって欲しいとは言ったけど、小娘を逃がして良いとは言ってないよ」

「っ……」

 言い訳をバッサリとお祖母ちゃんに切り捨てられて、お祖父ちゃんはぐうの音も出なかった。

 なんとか助かったし、ハルナとも会えたからもう細かい事はどうでも良いんだけど。

 そうか、隼人にかけられた術はお祖母ちゃんが賢者の石を使って解いたのか。

 元々賢者の石を持ち出せないから似たような魔導具作って貰おうと思ってたんだもんな。

 オリジナルの賢者の石持ってるお祖母ちゃんなら術を解けるって訳だ。

 あとは六花に掛けられた術を解けば終わりだな。

 そしたら俺はハルナと……むふふ。


 六花と隼人が見つめ合ったまま動かずに立ち尽くしていた。

 スキルは隼人が封じたし、賢者の石の力で魔力も消してるから、もう六花は何も出来ない筈だ。

 真衣に作って貰った魔導具でさっさと元に戻してやるか。

 そう思って六花に近づこうとすると、六花はキッと俺を睨みながら後ずさる。

 あんまり抵抗して欲しくないなぁ。

 何も出来ない女の子に力づくで何かするって、悪役みたいじゃないか。

「あんたのせいよ!あんたのせいよ!!あんたのせいよ!!!」

 怒りに我を忘れ叫ぶ六花。

 その瞳は暗く澱んでいた。

 全てを俺のせいにしたい気持ちは分かる。

 追い詰められたら誰だってそうなるよな。

 今の六花を見て確信する。

 勇者の瞳術ってのは負の感情を増幅させるものだ。

 六花は隼人と一緒にいる為に邪魔になる物を全て排除する気なんだろう。

 愛に狂った女は恐ろしいな。

 ふとルルの顔が頭に浮かんだのは何故だ?


「六花、今その呪縛から解放してやるよ」

 俺が空間収納から魔導具を取り出そうとした時、六花がポケットから黒い魔法石の様な物を取り出した。

 何だ、あの黒い石?

 それを握り締めて狂ったように叫ぶ。

「殺してやる!殺してやるっ!!」

 俺は六花の様子が常軌を逸していたので、思わず一歩退いてしまった。

 まだ何か抵抗するつもりなのか?

「六花、もう止めるんだ!」

 隼人が恫喝するが、六花の耳には全く入ってないらしい。

 狂気の瞳で俺を睨み続ける。

 そして、黒い魔法石を持つ六花の腕が急に震え出した。

 震えに呼応するように魔法石から黒い靄が溢れてくる。

「あ、あれは『魔王石』!?」

 お祖父ちゃんが六花の持つ黒い魔法石を見て驚愕していた。

「アランさん、『魔王石』って何だ?」

 俺が問うとお祖父ちゃんは眼を泳がせる。

 おい、絶対何かやましい事あるだろ?

「えっと……、あの魔法石は手にした者に呪いを与えて魔王にしてしまう物なんだ。僕も前の魔王を倒した時に不注意で触れてしまって呪いを受けた。一応魔王城の宝物庫の奥に封印しておいたんだけど」

 お祖父ちゃんが『魔王石』について説明してくれたけど、それってかなりヤバイ物じゃねーか。

 魔法で封印してあったら六花のスキルで簡単に解けちゃうだろが。

 最近は周囲の魔力を消す事が出来る魔導具とかもあるんだから、もうちょっと考えて欲しいな。

 って言っても封印なんてこの世界じゃ魔法でやるしかないのか。

 そう言えばさっき六花は、最初に見た時には持って無かった筈の細身の剣で俺達を攻撃して来たな。

 あの武器は宝物庫から持って来た物で、それを漁ってる時に見つけた『魔王石』も一緒に持って来ていたってとこか。


 俺は直ぐに六花の手から魔王石を奪う為に近づこうとしたが、突然魔王石から出る黒い靄が増大して弾き返されてしまった。

 隼人も止めようと駆け寄るが、俺と同様に弾かれて吹き飛ばされる。

 そしてその黒い靄は六花の体を包みこんだ。

「くっそ、どうすれば!」

 叫んだ処でどうにもならない。

 六花の方に注視していたら、俺の胸の辺りからも黒い靄が出始めていた。

「何だこれ?」

 俺から出た靄は六花の方へ飛んでいく。

 まさか俺の呪いも吸い込んだのか?

 ってことは……。

 お祖父ちゃんの方を見ると、俺の体から出た靄の数十倍の大きさの靄が抜き出されて六花に吸い込まれるように流れて行った。

 付近にある呪いを吸収して魔王化するのか?

 止めようにも、黒い靄が邪魔して六花には近づけない。

 あれに近づけるとしたら和馬の『絶対無敵』ぐらいだろうけど、クールタイムでまだ使えないだろうし、そもそも意識を取り戻していない。

 空間収納で六花の周りの空間を削ろうとしても何故か出来ない。

 あの黒い靄は生物の扱いなのか?

 あるいは呪いだから物質として認められないのか?

 六花を包んだ靄が黒い鎧の形を成していく。

 禍々しい紫のラインの入った全身を覆う黒い鎧。

 胸当ての中央には魔王石が脈打つように怪しい光を放っている。

 背中には黒いマントを羽織り、頭部には角のようなものが生えていて、ファンタジーの物語にあるような正に魔王といった姿。

 六花の魔王化が完了してしまったようだ。


「ふっ……ふふふふ。何これ、凄く気分がいいわ。体中を力が駆け巡ってるみたい。これならあんた達を羽虫の如く潰してあげられる」

 美しい双眸を細め、冷たい微笑を浮かべる六花。

 さっきまでの狂ったという感じとも違う、堕天した事を受け入れた天使のような純粋な悪意に満ちていた。

 お祖父ちゃんの魔王化とは全く違う。

 お祖父ちゃんは仮にも元勇者だから、完全な魔王化を拒んでいた。

 しかし六花は自ら望んで魔王化した。

 力や心の在り方が違って当然だろう。

「アランさん、あの魔王石を破壊すれば六花の魔王化は解けるのか?」

「分からない。僕自らは壊す事が出来なかったし、ノヴァちゃんや四天王が力を結集しても傷一つ付ける事が出来なかった。魔王化の元になっているのは確かだけど、壊しただけで解けるのか、魔王化した人間が元に戻るのかは誰にも分からないんだ」

 お祖父ちゃんも知らないとは……って、当然か。

 知ってれば魔王石を何とかして元に戻ろうとする筈だもんな。

 というか呪いを六花が吸い込んだから、お祖父ちゃんは元の人間に戻れたのかな?

 まぁ、どうでもいいけど。

 今はそれどころじゃないし。

 何か碌でもない事は全部お祖父ちゃんが起因になってる気がする。


 取りあえず壊せるものなら壊した方がいいだろうな、『魔王石』。

 俺の力だけで出来るか分からないけど。

「隼人、あの胸の部分の石を攻撃する。手伝ってくれ」

「六花を攻撃するのか!?」

「やらなきゃ、こっちがやられるだけだぞ」

「……くっ。分かった」

 渋々ながらも了承した隼人を右に、俺は左に構えて六花を見据える。

「ああ、隼人。そこの邪魔者を直ぐに消すから。そしたら貴方を永遠に私の側に……」

 六花がゾッとする笑顔で隼人に語りかけるが、覚悟を決めた隼人はもう耳を貸さない。

 本来の隼人に戻っているな。

 冷静沈着で常に戦況の把握に努める司令塔タイプ。

 隼人の眼は今、六花の隙を探っている。

 そして俺は、ドラゴンの鎧にありったけの魔力を込めた。

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