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一話


「…もう朝なのか?」


 瞼を通り抜けた光が眩しく朝だと思い起き上がるととんでもない光景が己の視界に入る。


「……はっ?」


 辺り一面荒野だった。


 右を見ても左を見ても最後に身体を捻り後ろ見たが三百六十度総て荒野だった…。


(何でっ…俺は会社から戻って日課だったゲームを……駄目だ。思い出せない…)


 頭を抱えながら何故このような場所にいるのか必死に思い出そうとするがゲームをしていた所までは思い出せるのだが重要なその先については全く思い出せなかった。


「考えても……はいっ?」


 本来ならその先に仕方無いと続ける予定であったが混乱しきっていた自分の視界に更なる衝撃的なものが映った。


(手が小さい…何で?)


 子供のように小さい手を開いたり閉じたりして眺めているとふ、と頭に一つの嫌な考えが浮かぶ。


(……どど、どうなってるんだ?身体が縮んだ…いや若返ってる?えっ、あっ、ちょっ、どぇぇぇぇーーーー!!!!)


 自分の身体を一通り確認してとんでもない事実に声にならない悲鳴をあげる。


 身体が幼くなっていたのだ。それも推測だが小学生なれるかなれないかくらいときてる。


 こんな荒野にぽつんと一人取り残されたように地面に座っている事、それに子供の身体。この二つの事実から考えるに嫌な未来しか想像がつかない。


 だが、おかしな事も一つある。


 自分はそこら辺にいる極一般的な日本人でことなかれ主義だった…それなのにだ、自分の事を客観的と言えば良いのか他人事と言えば良いのか、まるで第三者として見ているようだ。


 普通ならば、こんな状態に陥ったら泣き叫んだり激しく混乱したりするものだと思うのだがちょっとした混乱はしたものの落ち着いて物事を考えられるし内心とは裏腹に怖いくらいに冷静でいる自分がいるのだ。


 まるで自分が自分でないような気がしてならなかった。


「…ここにいても仕方無い。何処か人里或いは水辺を探さなくてはの垂れ死んでしまう。」


 未だに座っていた地面から砂を叩きながら立ち上がるとキョロキョロと辺りを見渡して何処に向かって歩もうかとした時に微かにだが聞きなれない音が耳に入った。


 効果があるから分からないが耳に覆い被せるように手を広げながらくっつけて出来るだけ音を拾おうと試みる。


 微かに聞こえるその音は何か重くお腹に響くような風に聞こえそれは段々と此方に近付いてきているような気がする。


 そして音の主【達】が姿を現した。


「…助かった。…でも、現代社会で山賊とかまだ存在しているのかな?」


 まだ大部離れてはいたが視力がかなり良くなっているみたいで普通だとまだ判別がつかないだろう距離で顔がはっきりと判別出来る。


 そして此方に近付いてくる人達は皆強面で何かの毛皮のベストみたいのを着ておりその手には弓を携えてる。


(ゆみっ!!今時狩猟をする人が弓で狩りなんてするのか?)


 そんな事を考えながら棒立ちしているとあっという間に取り囲まれた。


「あ、あのーー…。」


 それ以上の言葉が紡げない。彼等は口を開く事はなく威圧感を感じさせるように矢をつがえて引いてはいないが何時でも放てるようにしている。


(何で警戒している?ってかあれで射られたら不味いのは確かだよな…)


 そう考えると背にじわりと冷や汗が浮かぶ。


 お互い無言だったが向こうは埒があかないと思ったのか白髪混じりの人が俺の前まで進み馬上から見下ろす。


「漢人がこんな所で何してやがる?それに良い服だ。良い所の出か?」


 彼の瞳から感じ取れる冷たさは気のせいではないだろう。


「かんじん…?なぁなぁ聞いてっ!!!!!」


 最後まで言葉を発する事は出来なかった。矢が頬を掠め後ろへと飛翔していく。


 ヌルッ


 当たってないか無意識に手を伸ばすと血が出ていた。


(…血が、それに何でいきなり攻撃されるんだ。)


「答えろっ!!それとも何か?俺ら異民族に語る舌を持ち合わせてないと言うつもりか!!」


 浴びせられる大喝。


「…分からない。ここは何処で俺は何者なのか…。ただ一つだけ言える事がある。」


 怪訝げな目で俺を見下ろす男を睨み付けるように見上げた。


「何だ言ってみろ。」


「あんた達に敵対するつもりもないし、理由もない。ただそれだけだっ!!!」


 俺の言葉に目の前いる男や周りを取り囲んでいる奴等は唖然としている。


 それはそうだろう。憮然とした態度で言い放った内容が内容だ。


 いち早く理解した目の前の男はやや生暖かい視線を向けてきた。


「……ふ、ふはははは。そうかそうか敵対するつもりはないか!!」


 いきなり笑い出したと思ったら俺よりも二回りはデカイ手でぐりぐりと頭を撫でる。


 力加減をしてくれているのだろうが首が痛い。


「コイツは俺が面倒を見る。良いか?」


 ガシッと頭を鷲掴みされて持ち上げられた俺はぷらんぷらん身体を揺らした。


(あががが…首が…首が…取れちゃう!!!!!!)


 痛みに悶絶している俺を余所に男は仲間と思われる人等と話をつけたようでそのまま自身の前に座らせた。


「坊主、しっかり捕まってろよ?」


(えぇっ?何処にっ?)


 あたふたする俺を余所に一行は再び移動を開始するのであった。

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