コタツ花魁
官能小説でわないです(汗)
今日は寒い!
めちゃくちゃ寒い!
俺は城島剣騎。
ごく普通の、いわゆるごく普通の会社員である。
「ひゃーっ、今日は雪が降ってたなぁ!
さむさむ!」
俺は家に帰るなり、こたつのスイッチを入れて籠に山盛りに詰まれた有田みかんをこたつの座卓の上に置いた。
「やっぱ今の時期、こたみかは基本だよなっ!」
しかしストーブと違って、こたつはすぐに暖かくなるものでもないので、俺はその間に晩御飯を済ませてしまおうと、キッチンに向かった。
そして食事が済み、一切の暖房器具のないキッチンから、俺はこたつ目指して体を震わせながら向かった。
その時である!
「ん?
どっかから声がするぞ?」
俺はか細い声を聞き、よく耳を傾けると、なんとこたつが自分に向かって声をかけているではないか!
「寒いのでありんすか?
今日は特に冷え込んでるでありんすから。」
「だ、誰なんだぁ!
ま、まさかこたつが俺に向かって話し掛けてるというのか?」
するとこたつは軽くため息をついた。
「あちしが喋ってはダメでありんすか?」
「いやそうじゃないけどぉ、あまりにも非常識やん(汗)。」
俺は夢でも見ているのかと顔を抓ってみたが、痛みがあるので夢ではないと再認識せざるを得なかった。
「お前さん、世の中の常識が全てだとは思わない事でありんすよ?」
「ま、話が出来るんなら1人でTV見てるよりましかな。」
俺は順応力が豊かなので、すぐさまそんな非常識を受け入れてしまった。
「今宵は寒ぅありんすね。」
「ああ、ほんまにめっちゃ寒い。」
すると、こたつは自ら裾をめくり、そんな俺を招き入れた。
「寒いならあちしの中へお入りなんせ。
心地よく暖めてあげるでありんすよ?」
俺は渡りに船と、いそいそとこたつに足を突っ込んだ。
「やっぱこたつは暖かいよなぁ…。」
俺はそのままこたつに潜り込んで、寝転んだ。
「あちしの中は暖かいかえ?
ほら、しっとりと暖めてあげるでありんすよ。」
「あぁ、心地良いよぉ。」
俺はそのまま目をつむり、心地良い暖かさに身を任せていた。
あわや寝そうになった俺であったが、こたつはそんな俺をたしなめた。
「こたつは一時の暖かさ。
寒い体を暖めるので存分に味わいなんせ。
疲れたその体を休ませなんし。
でも寝てはダメでありんすよ?
寝れば次の朝には風邪をひくでありんすから。
いくら暖かくても、それはひとときの夢。
うたかたの幻。
あちしは貴方にひとときの安らぎを与えるだけでありんす。
それが花魁……。
かりそめの安らぎとかりそめの享楽。
だから眠っては……。」
しかし俺にはもう聞こえていなかった。
何故なら、すでに眠ってしまっていたからである。
「やれやれ。
ほんに困った御仁でありんすね。」
こたつ花魁は剣騎が風邪をひかぬよう、そっと裾を剣騎の首までかけて見守っていた。
FIN……




