夢の終わり
最後に語られるは、作者の話。
生きてる実感を、持ちたくて。
ぴぴぴぴぴぴ......
目覚ましの音に目を開くと、そこは自室のベッドの上。
伸びをして、私は思った。
生きてる...
あぁ、私は夢から覚めたんだ......
本当は、喜ぶべきだろう。
素直に喜ぶべきだったに違いない。
だが。
だが私は。
ぎゅっと枕を抱き締め、泣いていた。
沢山の後悔が、私の胸へと突き刺さる。
斉藤さん(仮)の無事を確認出来ないまま、目を覚ましてしまったこと。
追い掛けて来た敵の正体を暴けなかったこと。
金属バットを持つ男が私を殺そうとした理由。
......まぁ最後のは、目覚めさせるのが半分、金属バットを無断で拝借したことに対する怒り半分、と言った所だろうが......
とにかく、私の後悔の涙は止まらなかった。
そして最後に、最も望んでいたこと。
斉藤さん(仮)に、感謝を伝え切れなかったことと。
「夢の中で良いから、愛されたかったよ」
私は思わず呟いていた。
「強く、強く望んでた」
決して叶わない、夢だと分かっていたけれど。
それでも、願わずにはいられなかった。
と、その時。
携帯の着信が鳴った。
"非通知着信"に眉を潜めつつ、電話に出る。
「もしもし......」
「おう、久々だな。無事に帰れたか?」
その声は、今の私が最も望んでいた相手からのものだった。
「斉藤さん(仮)......」
「元気そうで何よりだよ。こっちはリーダー(仮)が金属バットで加勢してくれたおかげで、生き延びてる」
私からは奪い返したのに、リーダー(仮)には渡しちゃうんだ......
そう思いながらも、斉藤さん(仮)が生きていることに酷く安心した。
「良かった、死亡フラグを乗り越えてくれて」
「当たり前だろ? 俺を誰だと思ってる」
「ふふふ、斉藤さん(仮)」
それだけでは、何だかつまらない。
そこで、ある提案をしてみた。
「斉藤さん(仮)。本名で呼ぼうか?」
「......止めてくれ」
しばらくの沈黙の後、彼は苦々しく、一言で答えた。
「分かってるよ。ねぇ斉藤さん(仮)?」
「どうした?」
私は後悔することのないように、答えた。
「ありがとう。大好き」
そして相手の返事も聞かず、電話を切った。
「あ、授業に遅刻しちゃう!」
時計を見た私は、急いでベッドから飛び起きた。
「......」
電話を切られた斉藤さん(仮)は、しばし携帯に表示されたままの通話終了の画面を見つめていた。
はぁ、と溜め息をつき、そして一言。
「俺も、お前と同じだよ」
ちゃんと分かっているさ。
相棒としての"好き"だってこと位。
お互いに、そう思ってるって。
夢の中できちんと、見抜いていたんだから。
「おい斉藤(仮)、電話は終わったのか?」
リーダー(仮)はニヤニヤしながら俺に問い掛けて来た。
「あぁ」
短く答えると、小走りで仲間の元へと向かった。
──で、ハッピーエンドだと思ったのだが。
「あれ?」
よく見ると、仲間達は傷だらけであった。
「俺達がいない間に、一体何が......?」
その問いに答えてくれたのが、リーダー(仮)だった。
「それが、急に変な世界に巻き込まれたんだとよ。ケイドロをしていた学生達に、代わりに友人を追い掛けてくれって頼まれたらしい。本物の銃も貸してあげるから、なんて言われて、取り敢えずケイドロで遊んでたみたいだな」
学生が、大人に銃を貸すなよ......とツッコミを入れそうになって、気がついた。
あれ、まさか...
俺達が戦っていたサングラスの男達って......
「でも全員やられて、夢から覚めちまったらしいぞ。中には俺や斉藤(仮)に殴られた奴もいるとか。なぁ、もしかして──」
「言わないでくれ、もう何も考えたくない......」
俺はリーダー(仮)の言葉を制すと、その場でうなだれた。
まさか夢の中で、仲間と戦うとはな。
皆から、恨まれないことを祈るぜ......
そう思い、空を仰いだ。
作者の住む現実世界と繋がっているかもしれない、青空を。
さぁ、作者。
「本格的なケイドロの夢」は、全ての謎を明かしたぜ?
次は俺達の住む、「twilight world」の謎を、解明してくれよな......
その祈りは届いたのかどうかは分からないが。
「よーし、今日も"トワイワ"書くぞー!!」
現実世界では、作者が張り切っていましたとさ。
全ての謎が解けた時、物語は完結する。
そして新しい謎が生まれる。
そう、次は「twilight world」だ。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました!!