別視点からのケイドロ
さて、時は少し遡り。
斉藤さん(仮)の安否が気になりますね。
「くっ...流石に、しんどいな......」
これ程の大人数を一人で相手するのかと、気持ちが折れてしまいそうになる。
それもそのはず。
目の前には、サングラスのお兄さん×30人。
「twilight world」の時の40人からすれば少ないが、相手は金属バットを持ったホームレスではない。
拳銃を持った殺し屋(?)なのだ。
かと言って、どうすることも出来ずに負けを認めるのは男のプライドに反する。
そう思い、戦い続けていたのだが......
一体、どうする?
こちらの弾丸が切れたら、お終いだ。
作者が目覚めれば、この話も終わるだろう。
そうすれば、俺も戦わずに済む。
それまでの辛抱なのだ。
だが、少しずつ戦況が変わりつつあるのは見て取れる。
俺の額に、汗が滲んで来た。
もう、駄目なのか?
焦ることすらなく、最後の引き金を引いた──。
刹那、向こう側の敵が数人吹っ飛んだ。
......え?
何が起こった?
よく見ると、リーダー(仮)が金属バットを振りかざして暴れている。
もしかして、あれは、あのバットは......
「金属バットを持つ男」のバット!?
それを悟った瞬間、俺は勝利を確信した。
あのバットがあれば、この戦いを凌ぐどころか殲滅させることすら出来るかもしれない。
リーダー(仮)は敵をなぎ倒しながら近付くと、俺と背中合わせの体勢をとった。
「作者はどこだ?」
「上に向かわせたよ。あの男の言う通りにな」
先程の、金属バットを持つ男からの携帯メールを見せた。
"作者に、一人で最上階に来させろ"
たった一言。
だが、俺はそこに望みを託した。
「何となく、奴の考えている方法は分かったつもりだ。もし失敗したら、俺達だけでなく作者自身も危険に晒されるが......これしか、方法はないんだ」
斉藤さん(仮)は、深刻な顔で言った。
そして目の前の相手に蹴りを入れる。
武器がなくなった今、素手で応戦しているようだ。
...あれ?
斉藤さん(仮)って、こんなに戦闘能力高かったっけ?
夢の中って、本当に都合が良いんですね。
気持ち一つでパワーアップ出来るなんて。
「どう言うことだ?」
リーダー(仮)は、状況を把握出来ていないようだ。
「荒治療で目を覚まさせるらしいが......それより、何故リーダー(仮)も此処に?」
「あいつが俺に頼んだんだ。"まだ信用はしていないが、一応助けてやってくれ"って。俺の身を案じて、金属バットまで託してくれたんだぜ」
そう言って彼はバットを掲げ、振り回した。
敵が数人、なぎ倒された。
そして、それは完全勝利を示すものでもあった。
敵は誰もいなくなった時、ふと空を仰いだ二人は唖然とした。
「あれって......」×2。
そう、そこにいたのは。
金属バットを持つ男と、首を持ち上げられる作者。
「無理矢理、目を覚まさせるって......まさか!?」
事態を理解したリーダー(仮)が叫んだ瞬間、作者の身体は最上階から落ちて行き──。
ぐしゃ、と音を立てるでもなく。
地面へと激突する寸前に、光の粒子となって消えた。
「......え?」
唖然とするリーダー(仮)に、斉藤さん(仮)は言った。
「作戦は、成功したってことさ」
夢の世界が終わる。
そして三人は、元の世界へ帰るのだった。
そう、「twilight world」へと。
そのまま江角は、一体どうなったのだろう。
次号、最終回!!!
...次号って言っても、今日の午前9時ですが(笑)