流石に泣き止んだケイドロ
今回は江角 稚の誕生日記念の一環として、予約投稿にしております。
(6/23、12:00)
本編の内容には関係ありませんが、この場をお借りしてお伝えさせて戴きました。
「...作者」
しばらくして、斉藤さん(仮)は言った。
「そろそろ、運転して良いか...?」
その言葉に、私ははっとした。
そうだ、私達は逃げているのだ。
こんな所で泣いている訳にはいかない。
「平気よ」
私は涙を拭うと、笑ってみせた。
「了解」
彼はエンジンを急発進させた。
「ところで......さ」
斉藤さん(仮)が問う。
「いつになったら、この夢は終わるんだ?」
「そうですね。もうじき、目が覚めても良い頃なのに...」
私は呟く。
「でも、もし目覚めなかったら......ずっと斉藤さん(仮)と一緒ですね」
茶化したつもりだが、彼は怒った。
「そんな結末で、良い訳ないだろ? 現実世界では、作者を待っている読者の皆様がいるだろう! それだけじゃない...お前自身を待っていてくれる人もいるだろう!?」
彼の思うことは分かった。
ついでに、小さな呟きも聞こえた。
「お前は現実世界で"あの人"を、待ち続けているんだろ」と。
「あ...ごめんなさい。まさかこんなに、真剣に怒ってくれるなんて」
私は慌てて言った。
少し意外だった。
まさか斉藤さん(仮)が、私の待ち人の存在を知っているなんて。
「すまない。少し感情的になった」
彼は後から冷静になって、言った。
私が謝ったので、はっとしたのだろう。
「良いんです。ありがとう。それに、嬉しかった」
「嬉しかった?」
私の言葉に意表を突かれ、彼は驚いた。
「うん、斉藤さん(仮)が、私のこと...ちゃんと心配してくれたから」
えへへ、と小さく笑った。
「べ、別に...作者を大切にするのは、登場人物の義務だからな」
そう言って、彼はそっぽを向いてしまった。
何と嬉しいお言葉でしょう。
それを金属バットを持つ男にも聞かせてあげたい。
まぁ、彼は冷たいのが取り柄みたいなものだから......仕方ないのかもしれないけれど。
「じゃあ」
斉藤さん(仮)はニヤリと笑う。
「そろそろ、フィナーレを飾らせて戴くとするか」
そう言って、車を派手に乗り回した。
「そうだね。早く目覚めて、学校に行かなくちゃ」
私も笑った。
別名、「江角クオリティ祭り」とも呼べるこの予約投稿イベント(笑)
皆様に楽しんで戴けたのなら、幸いです。